十四人の子
それは六百年ほど前のこと。紙と筆はすでにあった時代の話じゃ、信用性は十分じゃろう。
この世界特有の神様はいない。皆、別の世界から来たものだとされておるのは知っておるな。この世界で羽を休めるのだという。
そして、このアンダンサに降臨した小さな女神様がおったそうじゃ。
浜辺に降り立った女神様は、悲しみに暮れていた。話を聞けば、たくさんいた子供を全員殺されたらしい。
放っておくことなどできず、村人は女神様を丁重にもてなした。
料理や舞踊、そして談笑。アンダンサに神様が降臨したのはその時が初めてだったんじゃと。きっと手探りであたふたしながらだったんじゃろうなぁ…。
して女神様じゃが、親切で親しみやすかったのじゃろう。人間に対し非常に友好的だったそうじゃ。
美しい自然を見て、女神様はだんだん落ち着きを取り戻してきた。そして、恩義を感じ、報いたいと考えられた。
女神様は村に恩恵を与えてくださった。
周辺の賊などの侵攻のみならず、災害を遠ざけてくださったそうじゃ。なんとも有り難いことじゃ。
今日までこの村が在り続いているのも、女神様のお陰じゃな。
そしてある日、もう一人、女神様が降臨した。
大変強力な女神様であったそうで、村人は警戒した。
しかし、その女神様は娘を探しに来たのだと言う。
その娘こそ、小さな女神様。二人はしばらくアンダンサに滞在した。
これは正しいかどうかわからないが、母親の女神様はアンダンサに繁栄の加護を授けたそうじゃ。その時から村が賑わい続けているという。
そしてある日、二人は海に出たまま帰らなかった。
恐らく静かに元の世界へ帰ったとされておる。
しかし今も村が繁栄しているということは、まだきっとわしらを見守っておられるのじゃな。
ここら辺では、教訓話として取り上げられているぞ。
しかし人の手によりかかれた日記じゃ。どこまでが真実かはわからない。
話を終えると、宿主はこほんと咳払いをし、
「…ということじゃ、あくまで有名な部分じゃが。図書館なんかにはもっと詳しい資料があるじゃろう、気になるなら見てみなされ」
「いっやー素晴らしいです、たぎります」
「…今回の件と関係あるとは思えないけどね」
「うぐ」
「ふぉふぉ、知識は多いに越したことはありませんぞ」
宿主にお礼を言い、二人は図書館へ行くことにした。
今回のことについても何かわかるかもしれないし、知識はいっぱいあっても損ではないだろう。
人が寄り付かないような木々の隙間をすり抜け、シータスは走っていた。
(多分、こっちの方に…)
感覚だけを便りに、目的の場所を目指す。
「…あった」
草も映えていない場所があった。
(なんでこんなところに…)
炭素を操ってスコップにし、土を掘り返してみると、そこにあったのは宝石。
しかも、大量にある。
天然…ではないだろう、形が整えられている。
「…まさか、誰かのへそくりじゃないだろうしー」
しかし、誰のものかわからない。
こんなにたくさんの…ダイヤモンドを奪ってしまうという結果になるのは避けたい。
まあ、特に問題がなければ放置でもいいだろう。
(…いやでも、こんな不自然にダイヤモンドがあること自体問題かもしれないしー)
やっぱり、誰かをつれてくればよかった。
三人よれば文殊の知恵。まさしくその通りである。
スィエルがいたりすれば、魔術的なこともわかる。オウカは知識が豊富である。チエは洞察力が鋭い。ホウコは様々な視点から物事を見れる。三人で文殊の知恵ならば、五人ではもっと良い。船頭多くして云々は知らない。
(とはいっても、なにか起こってるわけでもないしー、今回の件とも関係があるかどうかは…うーん)
そして、悩んだ末に出した結論は、
「…困ったときの保留だしー」
ダイヤモンドが無くならない限り、この場所はわかる。ならばまた今度来ればよいだろう。
シータスは月の方角だけを便りに、戻っていった。
「…」
ローブの少女は、木の裏でその様子を眺めながら、ほっと一息ついた。




