異世界で死にかけ
(ふ、ふ、ふ。あぁ楽しみだ。ん?どうした?どうして起きているのに目を瞑ってるの?だって?愚問だなぁ。俺は待っているのだよ。なにを?だって?そう焦るなよ。俺は今、異世界にいる訳だろ。つまり、この目を開けたらそこには異世界が広がっている訳だ。初めて見る異世界だ。タイミングぐらい俺が決めたい。………………今だ!異世界だぁぁぁぁあああ!!!!)
俺は力強く目を開ける。それはもう、その景色をこの目に焼き付けんばかりに。
して、その景色とは、、、
高速でせまって来る何かだった。
「グギャゴ!」
それは俺の肩に当たる。本当は顔面に向かっていたのだが、そこはシンキョウの瞬発力がギリギリ反応したようだ。しかし、威力を殺してはいないため、(殺そうとしても無理だけど)左手が在らぬ方向に曲がり、吹っ飛ぶ。
「グギ…グ?グキャァ!」
おいおいおい!どうなってんだ!声がうまく出ねぇじゃねえか!聞いてねぇぞ!いっ、痛え!あ?腕がぐにゃぐにゃじゃねえか!ん?でも人間のときより痛くないな。いや、これは神経が反応出来てないだけかもな。はっはっは。全く笑えん。
全身に血を浴び、腕など原型もはや留めていないが、自虐ネタを言い、次第に状況を把握していき、シンキョウは段々冷静になって行った。
冷静になったからか近くに誰かがいることに気づいた。その者は人型ではあることはわかるが、うすくほぼ景色と同化しており、性別などの細かいことは分からなかった。しかし、心配してくれていることは何故か感じたので、安心させてやろうと言葉を送ろうとしたが、様子がおかしい。顔は見えないが身振り手振りで何かを伝えようとしているのか?なんか危ないことをしそうだ。その者はゆっくりと俺に近づいて来る。そして俺は問う、何をしたいのだ、と。
「グギ、グググギガ」
だめだ。声がうまく出せない。しかも、血がたりなくて 意識が朦朧として来た。
あの者が何か呟いているように見える。しかし、目を開ける力も残っておらず、閉じてしまう。
あぁ、なんでいきなり死んじまうんだよ。あの化け猫次会ったらぶん殴ってやる。順序ってもんがあるだろう!
すると、
[スキル かける の使用許可をください。]
頭の中に何か聞こえる。
ああ?よく分からん、血が足りんわ。
[許可をください。]
うるさいなぁ。最後ぐらい静かにしろよ。
[許可をーーー]
「グギグギググギ!」
怒って、思わず言葉にしてしまった。
[了解]
次の瞬間、目を瞑ってても分かるぐらいの眩しい光が眼球を叩いて来る。
そしてついに気を失ってしまった。