序章「世界の終焉」
「これが、世界の終わりか。」
そう、つぶやいた彼の周りには燃え盛る炎と音の衝撃だけで物を破壊させてしまうほどの咆哮が飛び交っている。
もうすぐ、世界が終わるのだ。
たった、一体の竜によって。
「一体、何でこんなことになったんだろうな。少し前までは世界は平和だと思っていたのにな。」
この竜は、いずれ「クロノスフィア」と呼ばれ、世界に災厄をもたらした竜として語り継がれることになる。
「ミーウォリアヘクター」
水の魔法が、竜に向かって飛んでいく。
だが、竜に当たるは当たるものの全く効果なし。まさに魔法が消失してしまったような感じだ。
「フレイムレンドス、ロッキリアンファイザー」
他にも、炎の魔法や土の魔法などが放たれ、竜に当たるが効果なし。
しかも格属性の魔法はそれぞれランクS・最高魔法である。
精霊の加護を受けている戦士の防御力でも、その竜の一発で吹き飛ばされてしまう。
天使と契約を交わしている魔術師の人知を超えた極大魔法でさえもその竜には一切効かない。
人では到底叶わない存在なのだ。
この世界に生きる九割の人間がもう生きるのをやめ絶望に陥り、その場でただただ硬直している。
「さて、では俺もそろそろ終えるかな。」
そう彼は口にして、今まで書いていた書物を書き終え、竜を見つめる。
「エクシエデール・シンフィアインセ・オルクール・トラム・フォネット・ドルガインヘル」
彼は、竜に向かって言い放った。
その瞬間、竜の周りに無数の岩盤が現れ、更にその外側には無数の鉄鋼が現れ壁になり六重壁になった。
その六重壁が竜を囲むように近づき、竜の動きを封じることに成功した。
そして、彼はその竜に向かい自ら作った六重壁の中に突っ込んでいきその竜を封印した。
こうして、その竜が封印されたことによって災厄はひとまずは終わりを告げた。
彼の名は、アルリフイン・フェラーノ。世界の英雄として歴史上に名を残した。
後にこの災厄は、「終焉」と呼ばれる。