第5話 新しい町
「大丈夫か?」
「はい…」
蓮夜の側までやってきたのは、30代ぐらいの男2人だった。
「怪我をしているじゃないか。」
「すぐに町へ連れて行こう。」
蓮夜は安堵のためか、一気に力が抜けた。
そのまま男におんぶしてもらい、されるがままに連れていかれた。
連れていかれたところは都会とまではいかないが、ある程度栄えていた町だった。
そして、少し大きな建物の中に入り、二階の部屋で布団の中に入った。
ー家だ。
感動した。
今まで当たり前のように使っていたものが、急になくなるのはとても辛いことだった。
そして、しばらくすると1人の若い女性が部屋の中に入ってきた。
「ご飯ここに置いて置きますね。」
「ありがとうございます。」
木ノ実だけしか食べていないので、腹はとても空いていた。
蓮夜は起き上がり、近くにあった暖かいスープを飲む。
ーおいしい…
暖かさとおいしさが全身に染み渡る。
そのまま、ご飯を口にする。
丁寧に前菜とシチューのようなものがが別々に置いてあり、中心にコッペパンのようなものが置いてあった。
「どうだ?休めたか?」
先ほど助けてくれた男が部屋に入ってきた。
「はい。ありがとうございます。」
「おまえさん、どこからきたんだ?見たことない顔だが?」
「…ものすごい遠いところからです。多分言ってもわかりません。」
日本から来ました。などと言えるわけはなかった。
「これから行くあてはあるのか?」
蓮夜は黙る。
行くあてなどない。
だからと言って、ここに置いてくださいとお願いするのは都合が良すぎるのではないかと思った。
「行くあてがねぇんだったら、ここにいるといい。」
「本当ですか?」
希望の光が見えた。
「ここにいさせてください。」
「そこまで畏まらなくてもいい。そもそも、ここは行くあてがない人や捨てられた子供を保護する施設なんだ。ただし、ここにいるからにはきちんと働いてもらう。」
「ありがとうございます。」
「自己紹介が遅れたな。俺の名前はゴーダン。ゴーダン・ボルフェスナ。よろしくな。」
「桐生蓮夜です。桐生が姓で蓮夜が名前です。よろしくお願いします。」
蓮夜は頭を下げた。
「体力が回復したら、下に来な。」
「わかりました。」
ゴーダンは部屋から出ていった。
蓮夜は辺りを見渡す。
本が並べてあることに気付き、立ち上がった。
右側にあった戸棚から適当に本を取り出した。
ー魔法基本書?
見たことのない字が、自然と頭の中に入ってくる。
蓮夜は本を開いた。
魔法の基本
空気中には大きくわけて、窒素、酸素、二酸化炭素、魔素、水蒸気がある。
窒素は空気中に6割を占めているが、あまり魔法では使われない。
魔法で使うのは、酸素、二酸化炭素、魔素、水蒸気である。
ー魔素?聞いたことないなぁ。
ーというか魔法書難しくないか?普通アニメだったら呪文を言うだけで魔法が使えるんだけど。
魔素は中性素1 合素2 離素2からできている。
合素とは原子をくっつけ分子にさせる物質である。
離素とは分子を原子に分解させる物質である。
中性素は合素と離素と結合し無力化する。そして、物質と物質をくっつけることができるが、中性素は合素と離素と相性が良く、力を与えない限り、他の物質とは結合しない。
ー難しいことは飛ばそう。
蓮夜は後ろのページを開く。
火属性魔法
基本
空気中の二酸化炭素を取り出し、魔素から取り出した離素で炭素と酸素に分ける。そこから出た酸素と空気中の酸素を使い、取り出した炭素を急激に酸化させる。
その後、望む方向に大量の酸素を送る。
発展
空気中の水蒸気を使い、離素で酸素と水素に分離させる。そこから基本で発動させた火をあて巨大な爆発を生じさせる。
ーやばい、難い。
理解は一応できる。
だが、思っていたのと違かった。
水属性魔法
基本
空気中から水蒸気を、魔素から中性素を取り出す。中性素が合素と離素と結合しないようにして、中性素に大量の水蒸気とホコリ等を集める。その後、大量の水の粒を出す。
合素と離素は一時的に有力化されるが、一定期間は互いに反発し合い、人体に影響はない。
その後、魔法終了とともに、中性素は合素と離素と結合し魔素となる。
発展
基本で構成した水に既存の水を合わせ、大量の水を操る。
ーオッケー、よくわからん。
何がオッケーなのか不明である。
本を閉じ、本棚に戻した。
ー少し寝よう。
蓮夜は布団の中に潜った。
気づいたら外は朝になっていた。
蓮夜はとても疲れていた。
蓮夜は起きだし、部屋を出た。
ー広いな
たくさんの部屋が二階にあった。
蓮夜は階段を使い一階に降りていく。
一階に大きな部屋があり、近づいてみると話し声が聞こえた。
蓮夜が扉を開けると、一斉に人々の視線が蓮夜に集中した。
「ああ、もう大丈夫なのかい?」
「ええありがとうございます。」
「こっちに来な。」
ゴーダンに話しかけられ、言われた通りに側に駆け寄る。
「みんなに紹介しよう。新しい仲間だ。」
「桐生蓮夜です。よろしくお願いします。」
拍手が湧く。
蓮夜はこの施設にはいろんな人がいることに気づいた。
髪が赤い白人、角が生えていて全身小豆色の人など、様々な人々がそこにはいた。
「じゃあみんな仲良くしてやってくれ。」
そう言って、ゴーダンは出ていった。
1人残される。
なにをしていいかわからなかった。
「よろしく。蓮夜っていうだ。私はシャーナ。」
シャーナが手を差し伸べる。
肌は黄色人種のようだが、髪が金髪と茶髪の間ぐらいの色だった。
「よろしく。」
2人で握手をし、いろんなことを話し始めた。
「ここはそもそもどこなの?」
「ここはね、ブルメン王国のヨーリーという町よ。花や草木が溢れる綺麗な国だよ。」
「いい国だね。」
「うん。その通りだよ。」
シャーナは和かにはにかむ。
「蓮夜って私とちょっと似ているよね。どこ生まれなの?」
「ものすごく遠いところかな。言ってもわからないと思う。」
「そっか。じゃあ、そうだ。ブルメン王国を案内しようか?」
「いいの?ありがとう。」
「大丈夫だよ。今は自由な時間だから。」
そう言ってシャーナは立ち上がり、部屋の扉に向かう。
「おっ、デートか?」
「違うわよ、案内するだけ。」
ーこういう野次馬がいるのは日本と一緒か。
蓮夜はシャーナについていった。
そして、部屋を出て、玄関に向かう。
ーこの写真は….
蓮夜は廊下にある一枚の写真に気付く。
「ほら早くいくよ。」
「ああ、わかった。」
2人は扉を開き、外の光を浴びた。