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第九十二話


 気が済むまで好きなだけ太陽の宝玉を集め終えると、再度ミノスの部屋へと戻ってくる。


「――いや、本当に思った以上の成果をあげてくれた。感謝する」

「俺もだ、ありがとう」

 穏やかな表情をしたミノスに続いて、アスターも深く頭を下げてくる。これで当面太陽の宝玉の在庫を気にしなくて良くなったからだ。


「いえいえ、大したことはしてないですし、俺たちもたくさん太陽の宝玉が手に入ったのでウハウハですよ。お互いよかったということで」

 遠慮がちに微笑んで手を振り、ヤマトはそれで話をうまくおさめようと考えていたが、ミノスとしてはそうもいかないようだった。大きく首を振ってヤマトの言葉を強く否定した。


「そういうわけにはいかん。そもそも我が渡した太陽の宝玉は使わなかったのだろう? そして、ここの木を復活させるために使った。……つまり、お前たちは自分たちのために使っていない」

「いや、結果として自分たちの……」

 強く断じるミノスの言葉に焦ったようにヤマトが口を挟もうとするが、ミノスは聞いていない。


「しからば、それ相応の報酬を渡さねばなるまい! しかし……」

 こぶしを作って大きな声で宣言したミノスだったが、そこで言葉が止まる。この場にいる者たちは戸惑うようにミノスを見ている。


「――一体何を渡せば報いたことになるのだ?」

 何を渡せばいいのか、その報酬が思い浮かばなかった。きょとんとした顔で考え込んだミノスに、アスターをはじめ、全員が苦笑した。


「親父殿……ここぞという場面でその力の抜ける言葉は止めてくれ……」

 じわじわと痛む頭を押さえながら、アスターは自らの父に呆れていた。だからといって彼にもヤマトたちが何を欲しがっているのかは思いつかない。


「うーん、俺たちは別に十分な報酬をもらったつもりなんですけど……弱ったなあ」

 ここで何かをもらうイベントが発生した記憶がないため、ヤマトも困り果てていた。


「――そうだ! あれがいいかも!」

 ぱあっと顔を明るくしたユイナは一つの案が思い浮かんでいた。

「なんだ? 言ってみるとよい」

 顔を上げたミノスは助け船が来たとばかりに、ユイナに言葉の続きを促した。


「精霊王への取り次ぎ」

 彼女の発言に部屋内がざわつく。

 サモナーになってようやくつながりができる精霊という存在。その王となれば早々簡単に会えるものではない。

「ユイナ、それは……」

 そして世界に点在する神の中でもミノスだけが行える、精霊界への移動ルート作成。

 そう簡単に行ける場所ではないからこそ、ヤマトは彼女の発言に驚いた。


「……ふむ、精霊王に会って何を望む?」

 ユイナのそれはとんでもない要望であるにも関わらず、ミノスは真剣に聞き返す。彼らがしてくれたことを思えば無下に要望を切り捨てるのはどうかと思ったのだ。


「うーん、とりあえずルクスの精霊さんの強化かなあ。あとは、精霊界にある装備が手に入ると嬉しいかも。あそこのは強いだけじゃなく、便利なものが多いからねえ」

 少し考え込んだユイナはルクスをぎゅっと抱きしめてそう言う。ルクスは自分のことを気にかけてくれた彼女の発言にとてもうれしそうにしている。


 そして精霊界では、地上の街にはないステータスを特別に強化する装備や、装備そのものに精霊が宿っているものなどが売られている。


「ふむ、悪意はないようだな……良いだろう」

「親父殿!?」

 あっさりと了承したミノスにアスターは驚いていた。


「――良いのだ。彼らはそれだけのことやってくれた。ならば、それに答える必要があるだろう。ただし、我ができるのは精霊界への道を作ることと、精霊王への手紙をしたためることぐらいだ。それ以上の交渉は自分でやってもらう……構わないな?」

 まさかミノスがユイナの案を飲むと思っていなかったため、ヤマトの顔には大きな驚きが張り付いており、ユイナは了承してくれたことに喜んで弾けるような笑顔で頷いていた。ルクスを抱っこしたままだったので、嬉しさのあまり彼の頬に頬ずりしている。


「まさか、親父殿がかような案を飲むとはな……まあ、それだけのことをしてくれたのは事実か」

 ぼりぼりと頭の後ろを掻きながらアスターもミノスが受けたことを徐々に納得しつつあった。


「それで、出発はいつにする? 手紙を書く時間があるが、明日以降ならいつでも良いぞ」

「じゃあ、あしたっもごもご……」

 明日と大きな声で宣言しようとしたユイナの口をヤマトが慌てて止める。どうしたのかという表情で振り返ったユイナはヤマトが真っすぐミノスの方を見ているため、大人しく口を閉じた。


「いつでもいいなら、少し時間が空いても大丈夫ですか?」

「もちろんだ、我は基本的にここにいる。なればいつ来てもそのタイミングでお主らを精霊界に送り届けようではないか」

 しっかりとミノスの言質がとれたので、ヤマトはほっとしたように頷く。


「じゃあ、今日のうちは一旦街に戻ります。明日以降準備が整ったらきますので、その時はよろしくお願いします」

 ヤマトはすっと頭を下げると、ルクスを抱くユイナをかかえて慌ててダンジョンを出て行った。

 ミノスは精霊王への手紙をしたためるため、アスターと共に彼らを見送ったのち、その支度を始めていた。





「――もう! 一体なんなの?」

 何か理由があってのことだろうとユイナは移動中、ヤマトの腕の中で暴れはしなかったものの、急な展開に不満だったらしく、外に出るなり頬を膨らませてヤマトを問い詰める。


「ごめんごめん、でも明日すぐっていうのはちょっと厳しいよ。まずルクスのサモナーのレベルがまだ21だっていうこと。これじゃ精霊を強化してもらっても、21レベルにあったものしか手に入らないだろ?」

「……む、確かにそれはまずいね。でもそれだったら、レベル上げをすれば!」

 自分たちが相当レベルが高いため、すっかり忘れていたことにユイナは一度落ち着くも、すぐに反論する。

 

 その言葉をそっと遮ったヤマトが指を立てて次の問題を提示する。

「俺たちがあのまま精霊界に行ったら、すぐには帰ってこられないだろうし、確か出る先も結構離れた場所だよね。このあたりを散策しきっていないのに、いきなり飛ばされるのはまずいと思う」

「むむ、それも確かに……」

 どんどんユイナの怒りは落ち着き、準備をしなければという気持ちに変わっていた。


 更にヤマトはにっこりと笑顔で提案していく。

「それにさ、せっかく精霊王に会うなら、もっと精霊を多く仲間にしてからのほうが効果的だよね?」

 今、ルクスが使役することができるのは基本の精霊だけである。しかし、この世界には多くの精霊がおり、その力を借りることができればかなりの戦力アップになる。


 そして、精霊王に精霊の力を強化してもらうのであれば、その数が多いほうが効果的なのはいうまでもなかった。


「むむむ、そうだった。サモナー全然やってなかったから、そのへんすっかり抜け落ちてた……二人ともごめんね」

 しょぼんとしおらしく頭を下げるユイナに二人は笑顔になる。

「わかってくれればいいんだよ。とにかくクエスト発生のフラグが建てられたから、あとで行ってみよう」

 ヤマトのその言い方がゲームっぽかったため、ユイナはクスリと笑う。


「お二人とも笑顔になられたようでよかったです。まずは、色々な情報や装備、アイテムを集めていきましょう!」

 ルクスの言葉に気持ちを新たにしたヤマトたちは大きく頷く。


 とりあえず彼らの次の目標は雪の都フリージアナとなった。



ヤマト:剣聖LV207、大魔導士LV203、聖銃剣士LV10

ユイナ:弓聖LV204、聖女LV193、聖強化士LV67、銃士LV17、森の巫女LV20

エクリプス:聖馬LV133

ルクス:聖槍士LV13、サモナーLV21


お読みいただきありがとうございます。

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