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第四話


 先へ進んだヤマトを第二層で待ち構えていたモンスターはコボルトだった。二足歩行の犬のようなモンスターで目と耳の良さを生かした俊敏さが特徴である。

 平均レベルは十三とアシッドスライムより少し強く設定されていた。


「さて、ここからは剣を使って戦っていこうか」

 そう言って初期装備であるブロンズソードを抜くヤマトだったが、右手には石が握られている。


「――せい!」

 石をコボルトの顔面目がけて投げつけると同時にヤマトは素早く走り出していた。

 コボルトは野生の動物のように反応が早い。そのため、ヤマトが投げた石を視界にとらえると、難なく首を動かして避ける。


 普通ならその反応の良さを褒めるところだが、ヤマトはそれを隙としてとらえており、相手よりもさらに素早く動き、コボルトの胴を横に薙いだ。だがまだ相手よりレベルの低いヤマトの攻撃は致命傷にはいたらなかった。


「さすがに一発じゃ無理か! なら……“スラッシュ”!」

 すぐに振り返ってヤマトは次の攻撃を繰り出す。

 ただ斬るだけでなく、ヤマトは剣士のスキル【スラッシュ】を使用する。

 

 これは剣士のレベルが上がったことで使えるようになったスキルで、通常の攻撃の二倍の威力で攻撃を放つことができる。威力の増したこの一連の流れでコボルトを倒すことができた。


「ふう、こんなところか」

 一息ついたヤマトはコボルト相手でも問題なく戦えることを確認し、腕がなまっていないことに嬉しくなった。


「それじゃ、どんどんやって行こうか。――なんとしてもアレを見つけないと……」

 このフロアでは、コボルトを倒してのレベル上げは物のついでであり、ヤマトの目的は別にあった。


 一層では、探索よりもレベル上げをメインにし、目標まで上げ終えると真っすぐ階段に向かったヤマト。だがその目的を果たすため、二層ではミニマップとゲーム時代の記憶を駆使して小部屋の探索なども入念に行っていた。


 調べられる部屋も残り一つとなったところで、ついにヤマトはそれを発見した。

「――やった! 宝箱発見!」

 ダンジョンではランダムでいくつかの宝箱がフロアに設置される。そして、この二層ではなんらかの装備品が出てくるため、ヤマトは自らの強化のためにそれを狙っていた。


「さてさて、何が出るかな?」

 このレベルのダンジョンでは初心者向けということもあり、宝箱にトラップなどは仕掛けられておらず、鍵もかかっていないため、すんなりと宝箱をあけることができる。


「おーーーーーーー!! やった!」

 そのアイテムを確認した瞬間ヤマトはぱぁっと笑顔になり、ガッツポーズをとっていた。


 宝箱に入っていたのは『フレイムソード』という剣で、炎の属性を持つ強力な剣だった。

 これはダンジョンでのみ手に入る武器で、始めたばかりのプレイヤーはこれを手に入れるのを一種の目標にする者もいるほどだった。


「これがあれば蜘蛛も楽勝だね」

 フレイムソード片手にヤマトは柔らかく微笑む。

 

 ヤマトの言う蜘蛛というのはこの『ガルバの口』の最終三層にいるボスモンスター。大きな蜘蛛のモンスターで糸を吐いて攻撃をしてくるが、糸は炎に弱いという弱点を持っていた。


 フレイムソードに装備を持ち替えたヤマトは部屋を出ると、コボルト相手に武器の使い心地を試すことにする。


 あえて石を投げずに飛び出し、その勢いのままコボルトに斬りかかる。フレイムソードの追加効果で炎をまとった攻撃は、一撃でモンスターを倒すことができた。

「うん、やっぱりいいね!」

 フレイムソードの切れ味に満足したようににやりと笑ったヤマトは、次々とコボルトに斬りかかっていき、経験値をためていく。






 しばらく戦闘をして満足したヤマトは、階段を降りていよいよボスがいる三層へと足を踏み入れる。階段を降りると、いかにもな大きな扉があり、それを開ければボス部屋だった。

 ヤマトは扉を開くと躊躇することなく部屋の中へと入っていく。


 バタンと大きな音をたてて彼の背後で扉が閉まる。

 それと同時にヤマトは大きく目を見開いて、目の前の光景に驚いていた。


 三層のボスである蜘蛛タイプのボスモンスター『アレニエ』。 

 それがあるモンスターにバリバリと音をたてて食われていた。


「――な、なんで!?」

 アレニエを食べているのは、それよりも更にサイズの大きいミノタウロスだった。牛の頭を持ち、巨大な人の身体をしているモンスター。腕輪と下半身にはズボンをはいており、斧を武器にして戦う筋肉質なパワー系だ。


 本来ならこのダンジョンにミノタウロスがいることはありえない。レベルも二十八と表示されており、初登場はいくつか先のダンジョンであるはずだった。


「なんでこんな場所に……」

 なぜここにいるのかわからない。

 しかし、アレニエが倒されてしまっているということは、ここでボスとして認定されるのはミノタウロス。ボス部屋に一度足を踏み入れれば、倒すか死ぬかしか出る方法はない。


 もちろん死ぬつもりのないヤマトに選択できるのはミノタウロスを倒すことだけだった。


 ここに来るまでに十五までレベルが上がり、フレイムソードも手に入れることができた。しかし、本来ならその程度で十三もレベル差のあるミノタウロスに太刀打ちできるはずがない。


「――でもそんなのは普通のプレイヤーの考えだよね」

 不敵に微笑んで見せたヤマトはかつて最強と呼ばれたプレイヤーだった。

 

 それは、レベルが高かったからでも、多くのスキルを覚えていたからでも、ましてや装備が強力だったからでもない。


 負けない強い気持ち、そして状況を冷静に判断し最適な戦い方を選択する。それを実際に行うことができる本人のスペック――それがヤマトの強さだった。


 気合の入った表情でヤマトは右手のフレイムソードを握りしめると、未だ食事中のミノタウロスへと走っていく。


「うおおおおお!」

 ヤマトに気づいたミノタウロスは蜘蛛の残骸を乱暴に横に投げ捨てると、近くに置いていた巨大な斧を握りしめてにやりと笑いながらヤマトを迎え撃つ。


 ミノタウロスが勢いよく振り下ろした斧をさっと避け、剣で足に斬りつける。

 しかし、筋肉質で強度の高いミノタウロスの皮膚はヤマトの攻撃では多少のダメージを与えるに過ぎなかった。


「やっぱ、こいつは硬いなあ!」

 それでもヤマトはひるまずに攻撃を続けていく。むしろこの状況を楽しんでいる様子すらあった。


 攻防を繰り返すうち、ミノタウロスは大きなダメージを受けてはいないが、チクチクと攻撃を繰り出すヤマトのことを鬱陶しく思いはじめ、振り払おうとして乱雑に斧を振り回す。

 しかし、大きな斧では小回りがきかず、素早い動きのヤマトを捉えることはできなかった。

ヤマト:剣士LV15

ユイナ:弓士LV1


ブロンズソード

 剣士が使う最も基本的な武器

 切れ味よりも壊れにくさが優先されたもの


フレイムソード

 属性武器

 名前のとおり炎を司る武器であり

 切れ味は鋭く、刀身から炎を出すことができる

 ワンランク下の武器としてファイアソードというものもある


お読み頂きありがとうございます。


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