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第三十九話

 まさにヤマトとユイナの無双状態が大平原で繰り広げられている。この辺り一帯は広く草が生い茂ってはいるが、見通しが特別悪いわけではなく、草の多くもヤマトの魔法によって燃え尽きているため、力を発揮するには絶好の場所といえる。


 近くのモンスターを剣や短剣で倒し、離れた場所にいるモンスターを魔法や弓矢で攻撃していく。二人の前にはまるで海が割れるかのごとく道ができていた。


 相手のモンスターたちも自我があり、抵抗むなしく倒されていく同族たちを前にして、圧倒的な力を持つ二人に襲いかかるものも徐々に減っていた。


「いけるね!」

「ゴーゴーゴーゴー!」

 ヤマトの言葉はフラグにはならず、二人の邪魔をするモンスターは次々に倒され……というよりもなぎ倒されていく。


「ヤマト、魔力は大丈夫?」

「うん! まだまだ余裕だよ! ユイナのほうはどうだい?」

 大魔導士になったことで元々高かった魔力量がけた違いに跳ね上がったヤマトは大魔法を何度も放っても余裕があった。だが魔力に特化した職業ではない弓聖のユイナが放つ矢は常時魔力を消費しているため、これだけ大量に打ち続けて大丈夫かとヤマトは聞き返した。


「もっちろん! これだけレベルが上がっていれば余裕だよ!」

 美しいまでの笑顔を見せながらスキルを多様しているユイナ、こみ上げる高揚感に背を押されるように大魔法を連発しているヤマト。

 そのどちらも息があがっている様子もなく、むしろ余裕を持って戦っているようにもみえる。


 自分たちの力がどの程度、このあたりのモンスターに通用するか、どれくらいの力で戦えば周囲に影響を与えすぎず戦えるか……ヤマトは既にかなりの影響を及ぼしていたが、それを把握してきたため、戦いやすくなっていた。


「まだ黒いやつは出てこないね」

「だね、でもそろそろキャティたちが言っていたエリアだから、おそらく……」

 噂をすればなんとやらで、二人が口にした途端、通常のモンスターの数が一気に減り、橋で見たような黒いオーラをまとったモンスターが増えてきていた。


「これは……多いな」

「ビックリ!」

 橋で戦った時は黒いオーラを背負ったモンスターは二桁に入ったくらいで、多くても二十程度だと記憶している。


 しかし、今二人の眼前にいる黒いオーラのモンスターは少なく見積もっても百以上はいるようにみえる。

「ひーふー……あー、もう! 動くからわかんなくなっちゃった!」

 試しにユイナが数えてみようとチャレンジするが、あまりに多いのとオーラが邪魔をして数えにくいために、結局途中で音をあげ、断念することとなる。


「とにかくいっぱいだね! んふふ、これは倒しがいがあるー!」

 すぐに数えるのをやめたユイナは明るい口調で気合十分だ。

 ここまでに倒してきたモンスターのレベルは高いもので四十レベル程度であるが、黒いオーラのモンスターの力はそれらを明らかに上回っていた。


「――同じ種類のモンスターもいるのに、こっちのやつらのほうが強そうだね」

 どうせ戦うならばやりがいのある相手が欲しいと思っていたヤマトもにやりと笑っている。


「さて、それじゃ」

 ヤマトは魔法の準備をする。

「やりますか!」

 ユイナは弓スキルの準備をする。


「巻き起これ、疾風の風雷――“ハイウインドボルト”!」

 まず先に発動したのはヤマトの魔法。いつもの魔法名だけではない詠唱込みの魔法によって強力な風の渦が巻き起こり、モンスターをその中に閉じ込めていく。まるでハリケーンが目の前にあるかのような勢いだ。


 飲み込まれたモンスターたちを次に待ち受けたのは風の渦。かまいたちを生み出して、その身体を切り刻んでいく。

 それにあらがおうとするも、中央に吸い寄せようとする強風の拘束力には勝てず抜け出せずにいた。


 しかし、それでもなんとか耐えるモンスターや、逃げだそうと力任せに動くモンスターも中にはいるようだった。


「――それで、終わりじゃないよ」

 ふっと笑って見せたヤマトが指し示す先、風の渦の上空には雷雲ができていた。地上と上空の両方から攻撃する魔法。それがクラス七の風雷魔法ハイウインドボルトだった。


 地割れかと思うほどの大きな音を出して大きな雷が何発も地上に降り注ぐ。神の怒りを買ったかのようだった。


「ふう、これでかなり数を減らせたかな?」

 ヤマトの言葉のとおり、彼が使った魔法は二種属性を組み合わせた大規模魔法であるため、相当数のモンスターを撃破し、残りの黒いオーラのモンスターは三十といったところだった。


「ヤマトやりすぎ! ――でも、残りも逃がさないんだからね!」

 自分の分のモンスターが少ないことに不満そうなユイナはヤマトを注意しながらも、スキルを放つ。


「“ホーミングスルーアロー フェスティバル”!」

 通常は一発放って、一体のモンスターを追尾して攻撃する技だったが、ユイナはそれを強引に対多数用にアレンジして一気に全てのモンスターを狙っていた。


 攻撃力の高いこのスキルは、黒いオーラのモンスターをどこまでも追いかけ、鋭く貫き一撃で倒す。残っていたモンスターたちは一匹残らず彼女の矢に貫かれた。だが次の瞬間にはまるでそこに何もいなかったかのようにするんと消えていく。


「なんか変、手応えが全然ない感じ……」

 ヤマトは魔法で一気に倒したためわからなかったが、ユイナは自分の手から放たれた矢が敵を貫くのを視認しているためその違和感を感じ取っていた。彼女はむっと訝しげな表情で消えたモンスターたちのいたはずの場所を見ている。


「……存在しない? もしかしたら、幽霊系のモンスターに変化しているとか?」

 黒いオーラをまとっているモンスターの母体となっているのは、通常のモンスターだった。それはオーガであったり、ゴブリンであったり、ウルフであったりがオーラをまとっているという形だった。ヤマトがそう問いかけるも彼女の表情はいまいち冴えない。


「それも違うかもしれない、でも似た感じはする……」

 ユイナも明確な答えは持っていなかったが、それでも何か幽霊とも違うものであることを感じ取っていた。


「それに関してもあとでいろいろ調べないとだね。まずは、あのあたりが怪しいから行ってみよう」

 見渡しが良くなった大平原でヤマトが指さしたのは、新たに黒いオーラのモンスターがわいている場所だった。

「あれは――うん、怪しいね!」

 ゆらゆらと怪しい黒いオーラを背負うモンスターたちを見たユイナも同意して、ヤマトを追いかけるように武器を構えて走り出した。



ヤマト:剣聖LV182、大魔導士LV175

ユイナ:弓聖LV178、聖女LV163

エクリプス:馬LV15


お読みいただきありがとうございます。

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