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第二十一話



 翌朝


 二人の姿は街の通りにあった。

「うーん、ゆっくり休めたね」

「うん! やっぱりヤマトと一緒だとぐっすり寝られるよ。なんていうか、すっごく安心するよね」

 屈託のない笑顔で言うユイナに、ヤマトは照れて頬を掻いていた。自分も同じことを思ってはいたが、久々の彼女のぬくもりに落ち着かなかったことも同時に思い出す。


「そ、それより今日はどうしようか? 鳥が結構高かったから、少しお金も稼いでおきたいところなんだけど……」

 ヤマトのそれを聞いて、ユイナは何がいいか腕を組んで考えていた。


「そうだ、ヤマトも冒険者ギルドに登録するのはどうだろ?」

 この世界でプレイヤーが安定して仕事を行って報酬をもらうには、冒険者ギルドで依頼をこなすのが定番だった。いきなりダンジョンに挑んだヤマトはまだ冒険者登録を済ませていなかったのだ。


「うーん、そうだね……見てみるのもいいかな。でも、ランク一番下だと大したの受けられないかもしれないよなあ……」

 ここまで一気にダンジョンを二つ攻略してきたヤマトにとって、言い方は悪いがチマチマ依頼をこなしてランクをあげるのは性に合わないと思っていた。


「ふっふーん、そう言うと思って少し考えがあるんだ!」

「……一体どんな?」

 首を傾げたヤマトが質問するが、ユイナはあえて答えずに含みのある笑顔で先に進んでいた。






「よし、ここだね。ふふっ、ギルドもおっきいなー」

 先を行くユイナは一足先に冒険者ギルドの前に辿りつく。

 街自体が大きく、人も集まるため、冒険者ギルドも必然的に大きなものへとなっていた。


 颯爽と中へ入るとそれなりの人が思い思いに過ごしていたが、元々人の出入りも多いからかヤマトたちに注目する者は特にいなかった。


「ヤマト、まずはヤマトのギルド登録をやっちゃおう! そうしたら、次のステップだからね」

「あ、うん」

 ユイナの仕切りで動き始めたため、ヤマトは抵抗することなくギルドで登録を行っていく。幸いカウンターはいくつもあり、空いているところで登録処理をしてもらえることになる。


「それでは、こちらの用紙にご記入下さい……はい、それで結構です」

 ギルドの担当職員はユイナと同じエルブン族の男性で、冷ややかな態度の彼は淡々と登録処理を行っていく。



 ヤマトはヒューマン族で、いわゆる人族と呼ばれる種族を選んでいる。能力が平均して高く、どの職業についてもそれなりの力を発揮することができるのが特徴だ。

 対するユイナはエルブン族で、いわゆるエルフ族と同じような見た目をしている。弓や魔法が得意な種族で、敏捷性や魔力に特化している。



「こちらがカードになります。カード紛失時、それとギルドのランクについての説明などはいりますか?」

 これらの説明を省こうとする冒険者が多いため、担当職員はどうせ聞かないだろうと思いつつも念のため確認をする。


「私が知っているので大丈夫です。ありがとうございますっ」

 ぴょこんとヤマトの横から顔を出したユイナが彼の質問に返答し、笑顔で頭を下げる。

「い、いえ、これが務めですので……」

 担当職員は突然現れた美人なユイナの笑顔にどぎまぎしながら、なんとかいつもの返事を返した。




 手続きを済ませた二人はカウンターから離れて、ホール内に置かれているテーブルへと移動する。そのテーブルを挟んで置かれている椅子に二人は腰かけていた。周囲にはちらほらと同じように話している冒険者たちがいる。


「さて、これでヤマトも冒険者ギルドに登録できたわけなんだけどー……」

「うん、それでユイナの案っていうのは?」

 ヤマトが確認すると、ユイナは耳打ちをするため可愛らしく手招きして彼を近くに呼ぶ。ヤマトは不思議そうな表情をしながらも素直に彼女の方に顔を寄せた。


「えっとね………で……なんだけど……」

「うんうん……えー、それでいけるの?」

 ユイナの案を聞いたヤマトだったが、一抹の不安を覚えたようだった。少し顔を離して訝しげな表情で彼女を見る。


「大丈夫だって! ユイナさんにどーんとまっかせなさい!」

 にっこりと笑顔でどんと胸をはるユイナは立ち上がると、小走りで買取専用のカウンターに移動していった。不意をつかれたため、ヤマトは慌てて彼女のあとを追いかけた。






「すいませーん、買取をお願いしたいんですけどっ」

 笑顔でユイナが声をかけると買取担当の職員も笑顔で頷く。買取担当の職員は大柄で筋肉質な身体のその姿からジャイズ族であることがうかがえた。

 ジャイズ族とはこの世界の巨人族である。巨人族といっても、身長は二メートル半程度だった。


「はい、こちらで承ります。まずはカードの提示からお願いします」

 彼は穏やかな物腰でヤマトとユイナにカードの提示を求める。

「えっと、はい」

「お願いします」

 ユイナ、ヤマトの順にカードを提示する。


「ヤマトさんがFランクで、ユイナさんがEランクですね。それでは続いて買取対象のものをこちらにお出し下さい」

 穏やかな表情の彼はゆっくりとした話し方でユイナへと商品の提示を促した。

「えっと、これとーこれでしょ、それからこれとこれとー」

 ごそごそとバックを探るふりをしてアイテムボックスを探ったユイナは次々といくつもの素材アイテムを並べていく。


 橋での戦いで倒したモンスターの素材はモンスターの消滅とともにヤマトとユイナのアイテムボックスへと自動収納されており、その中でもそれなりの値段になりそうなものをユイナは選別して提出していた。


「こ、これはかなりの量ですね……」

 少し身体を引いたジャイズ族の職員は、ユイナが出してきた素材の量に驚いていた。

 低ランクの二人であるという先入観から、薬草などのアイテム、もしくはたまたま倒したモンスターの素材の買取くらいだろうと思っていたようだ。


 ジャイズ族の職員の反応を少し後ろで見ていたヤマトはやっぱりこういう反応になるよな、と苦笑交じりだ。


「それから……これとこれもお願いします!」

「こ、これは!」

 だが一人それに気づかないユイナが最後に取り出したのは、オーガとジェネラルゴブリンの魔石だった。


 オーガもジェネラルゴブリンも、おおよそ駆け出しであるEやFランクの冒険者が倒せるようなものではないため、ジャイズ族の職員は驚愕の表情で魔石と二人の顔を何度も見比べていた。


 ちなみに買取をする職員は、鑑定スキルを持っているものが担当することになっているため、出された瞬間からこの二つの魔石がオーガとジェネラルゴブリンであると確証を持っていた。


「……こ、これらの買取をご希望ですか?」

「はい、お願いします!」

 眩しいまでの笑顔を見せながら頷いたユイナはあくまで笑顔で押し切るつもりだった。質問をするなら、上のものの指示を仰いでほしいとその笑みに含ませて。

 それを黙って見守るヤマトは本当に大丈夫かなと内心不安いっぱいだった。



ヤマト:剣士LV35、魔術士LV25

ユイナ:弓士LV30、回復士LV15

エクリプス:馬LV15


ギルドカード

 冒険者としてのランクや身分を証明するもので、冒険者ギルドを利用する際の必須アイテムになる。


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

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