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第百四十四話


「これはこれは、なかなか強いようだな。まさか、聖獣が本来の力を取り戻すとは……レベルが1000を超えていることもそうだが、いやいや驚かされっぱなしだな」

 終わりを告げる者は、手下がやられたにも関わらず、動揺する様子はなかった。能面のような表情からは分からないが、声のトーンからは感心したような、嬉しそうな印象が伺える。


「レベルに関してはメッセージが違いましたから。ゲーム時代のように《上限が1000になりました》――じゃなく、《上限が解放されました》だったかな? つまり、上限がないってことだと思ったんですよ」

 上限解放された時のことを思い出しながら、ヤマトはレベルに関しての回答を口にする。


「はっ、はははっ……なんとそんなに単純なことだったのか。それで魔導船強化のために、という口実を作って、自らの強化をしていたのか――ふ、ふふっ、やはりお前たちはおもしろいな! だが、最後に勝つのが私だから、より一層面白いのだ!」

 呆然としたように笑った終わりを告げる者は、ヤマトたちのことを新たに知るたびに自分の中でワクワクとこみ上げてくる高揚感を感じ取っていた。

 自身の勝利を疑うことなく大きく腕を振った終わりを告げる者は、それまで巨大化していたが、前の身体とほぼ同じサイズに変化する。


 小さくなった体はその内側に濃厚な力を秘めているような雰囲気を放っている。


「……小さくなった?」

 戸惑うようなユイナの呟きに、終わりを告げる者は口元だけでニヤリと笑う。

「あのサイズだと、どうしても細かな機動性に欠けるからな。――だが、このサイズなら」

 そう言った瞬間に、終わりを告げる者はユイナの目の前まで一瞬で移動していた。


 ハッとしたような表情のユイナに気分を良くした終わりを告げる者は、手に力を込める。


「死ね」

 口元はニタニタと笑ってはいたが、終わりを告げる者は思うように戦えないことで、内心とてもイライラしており、まずはユイナの命を奪うことから始める。

 彼は右手をユイナに向けて魔法を放とうとした。


「――お前がな」

 それはヤマトの言葉。愛する妻であるユイナを殺そうと狙ったことに対し、こちらも相当に苛立ちを感じており、即座に銃剣を構え、終わりを告げる者と触れた瞬間に引き金を引く。


 爆発するが、そこには終わりを告げる者は既にいなかった。


「もうっ、もう少しでダメージ与えられたのにー!」

 ダメージを与えた感覚がなかったことに悔しそうにユイナは唇を尖らせる。

 さきほど、ただ守られるだけの存在ではないと、彼女もその手に銃を持っており、ヤマトと同時に引き金を引いていた。


「くっくっく、さすがに一筋縄ではいかないな?」

 終わりを告げる者の両の手には、それぞれ剣が現れていた。それは魔力でできた強力な剣。

 それをブンッと横に振るうと、魔力の波動がヤマトとユイナに向かって行く。


「――っ!」

「危ない!」

 逃げることなくその場に踏ん張ったヤマトは盾で攻撃を防ぎ、防御力は高くないが身のこなしの軽いユイナはジャンプして攻撃を避ける。


 軽く薙いだように見えた終わりを告げる者の魔力の波動は、かなりの魔力を込められているせいで見た目以上の威力を持つ。

 盾で防いだヤマトは後方に押し込まれ、ユイナは空中に飛んだことで大きな隙を見せることとなる。


「ふん!」

 終わりを告げる者はその機会を逃さず、二人に追撃となる攻撃が飛ばす。


「危ないですにゃ!」

 二人を守ろうとルクスが聖獣の子どもたちに命令する。

 空中移動速度の高い黒鳳凰が黒い筋となる程早く飛び、ユイナの襟首をくちばしでつまんで攻撃から身を逸らす。ヤマトへの攻撃は防御力の高い朱亀が飛び出すと、甲羅の中に身を隠してガードする。


 そして攻撃力の高い黄龍と青虎が終わりを告げる者へと襲いかかる。

 ガアッと口を大きく開けて勇ましく飛びかかる黄龍と青虎は、どちらも鋭い爪を持っている。


 終わりを告げる者が剣を振るったその瞬間を狙った二人の攻撃は、完全に命中するタイミングだった。


「――獣風情がうるさいぞ!」 

 だが、苛立ちから唾を吐き捨てるように叫んだ終わりを告げる者の背中から新たな二本の手が生まれ、そちらにも同様に剣が手にされていた。


「「っ!?」」

 まさか手が生えてくるとは思っておらず、目の前に迫る剣をわかっていても、黄龍と青虎は既に攻撃態勢に入っており、動きを止められない。


「失せろ!」

『うがあああああ!』

『があああああ!』

 苛立ち交じりの終わりを告げる者の容赦ない三本目と四本目の剣による攻撃が、黄龍と青虎を吹き飛ばす。


「にゃにゃ! 許さないにゃ!」

 ただ見ているしかできなかったルクスは、自分の相棒と言っていい大切な聖獣二人が吹き飛ばされたことに驚き、怒り、槍を持つ手にギリッと力を込め、終わりを告げる者へと向かって行く。


「聞いていなかったのか、獣風情が近寄るな!」

 まだ立ち向かってくるのかと終わりを告げる者は怒りをあらわにして、四本の剣でルクスへと攻撃する。彼が戦いたいのは自身を一度倒したヤマトたちだけのようで、それ以外は構いたくないようだった。


「“クアドラブルスラスト”!」

 迫りくる四本の剣による攻撃に対して、ルクスは素早い四発の突きで対抗する。

 一撃一撃が必殺の威力を持っている終わりを告げる者の攻撃。それと一つの必殺のスキルでは抗することはできず、ルクスが吹き飛ばされる――。


 そう思われたが、ヤマトとユイナが攻撃に移っており、終わりを告げる者の側方から攻撃を放つ。

「“スーパーノヴァブレイブ”!」

「“クリムゾンアロー”!」

 ルクスへの攻撃態勢に入っている終わりを告げる者は、気づいた時には目前に迫っていたそれを避けることはできず、直撃を受けることになる。


「ぐあああああ!」

 ヤマトの身を焦がすような攻撃とユイナの身体を射貫かんばかりの鋭い攻撃で、身体に強い衝撃を受けた終わりを告げる者は、苦しげな声を上げてしまう。


「“ディカプルスラスト”!」

 そして、そこへエクリプスの助けを借りたルクスの攻撃が放たれる。


 エクリプスの脚力を活かしたスピードで勢いよく迫り、ルクスの渾身の力を込めた十連の突きが終わりを告げる者の身体へと向かっていく。

 これはルクスが使える最大の攻撃スキルであり、全ての攻撃がヒットし、終わりを告げる者へと深い傷を負わせる。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 防御態勢をとることすら考えられないほどの痛みに、叫び声をあげた終わりを告げる者。

 それは断末魔の声のようで、周囲に大きく響き渡った。


「もういっちょ! “スーパーノヴァブレイブ”!」

「“クリムゾンアロー”!」

 ここで油断することない彼らは、スキル発動後の硬直時間を終えた二人が再度、先ほどと同じスキルを発動する。


「…………!」

 既に声すら出なくなっている終わりを告げる者。

 再度発動したヤマトたちのスキルを一身に受けて動かないその様子は、誰が見ても死を迎える寸前であった。


 しかし、ドクンという大きな音がする。まるで心臓が鳴動しているような音が響き渡る。


「――っ!? みんな逃げろ!」

 ヤマトはその音に危険を感じていた。反射的に全員、その声に反応してすぐにその場所から飛びのいた。


 それから大きく心臓が鳴動するように、ドクンという音が再度鳴ると、終わりを告げる者の内側から巨大な核のようなものがぬっとりと現れ、それが血にまみれている様子が見える。

 そして、三度目のドクンという音が鳴りやむと、核の外側から大きな爆発が起こる。


 それは強力な爆発であり、直撃を受ければタダでは済まない――それがわかっているため、全員が防御態勢に入る。

 ユイナとルクス、エクリプスは彼女が強化した朱亀の身体の影に隠れ、同じくバリアを付与された黒鳳凰は素早く飛び出して遠くに飛んで逃げている。


 ヤマトは一歩も動かずに、しかしその爆発を神話の盾で受け止める。

 吹き飛ばされないように、足場を土魔法と氷魔法で固めており、更にユイナが逃げる前に筋力の強化魔法を付与していた。


 終わりを告げる者から出た核を中心に発生した爆発は、ヤマトたちがいる広大なエリアのかなりの範囲にまで届いていた。


 

ヤマト:剣聖LV1345、大魔導士LV1200、聖銃剣士LV1089

ユイナ:弓聖LV1345、聖女LV1245、聖強化士LV1177、銃士LV1156、森の巫女LV1097

エクリプス:聖馬LV1345

ルクス:聖槍士LV1104、サモナーLV1345

ガルプ:黄竜LV1085

エグレ:黒鳳凰LV1059

トルト:朱亀LV1049

ティグ:青虎LV1046


お読みいただきありがとうございます。

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