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第百三十一話


 邪竜一体一体の力はかなり強かった。

 しかし、運が良かったのか同時に複数体出てくることはなく、一体ずつであれば短期決戦で一気に倒すことができるため、ヤマトたちはレベルを上げるという目的を着々と達成していた。

 最初は全力で戦っていたのも、一体倒すごとにレベルが上がったおかげで次第に余裕を持って戦えるようになっている。


「さすがにレベルが上がってくると、少しは楽になってくるね」

「うん、これなら頂上まで一気にいけそうだねっ!」

 また一体倒した戦闘終わりに、ヤマトとユイナは笑顔で顔を見合わせる。

 彼らはレベルアップによってステータスが上がっていることを実感しており、徐々に事実、戦闘時間が短くなっていることがその証明だった。


「はあ、なんでお二人がそんな風に楽観できるのかがわかりませんにゃあ……。私は一戦一戦が全力なので、気が休まりませんにゃ……」

 元気なヤマトたちに対して、槍を抱きしめるようにぐったりとしているルクスの顔には疲労がありありと浮かんでいた。


「あー、まあ確かに疲れはある、かな?」

「そうだねえ、お腹は空いたかもー?」

 きょとんとした表情の二人はまだまだやれると思ってはいたが、ルクスの疲労度からパフォーマンスが落ちることは戦闘中に危険を伴うと判断し、休憩をそれとなく提案する。


「なんか……わざとらしいですにゃ」

 疲れから心がささくれだっているルクスは不満そうに目を細めて二人のことを見ている。気を遣われるのが嫌なようだ。


「まぁまぁ、いいじゃないか。ユイナもお腹空いてるって言ってるし、あの木の陰で休憩しようよ、ね」

 ニコニコ笑いながらヤマトは先行して移動し、有無を言わせずその場所に座り込んでいく。

「うん、何か美味しいものだしてー!」

 楽しそうに笑うユイナも駆け足でヤマトについていき、隣りに座ると、既に休憩モードに入っていた。


「それじゃあ、これならどうかな――宿屋のお弁当!」

 ヤマトが取り出したそれは、以前利用した宿屋で多めに作ってもらった弁当の一つだった。

 時間停止機能をいかして、今でも温かいまま食べることができる。


「うん、いいね! 宿のシェフの手作りお弁当……いいね!」

 ふわりと立ち込めるいい匂いを感じたユイナは二度いいねということで、期待していることを強く表現していた。


「ふう、お二人にはかないませんにゃ。お言葉に甘えて休ませてもらいますにゃ」

 ヤマトの優しさに嬉しくなりながらようやくルクスも腰を下ろして、休憩する。

 彼に出してもらった飲み物を飲むと、徐々に身体の力が抜けていき、木にもたれかかってそのまま眠ってしまう。


 ルクス自身、ここまで疲労していたことに気づいていなかったようだ。すやすやと深い眠りに入っていた。

 そんな彼を、穏やかな優しい目でヤマトとユイナは見ていた。


「ルクスは一気にレベルが上がったから、自分の強さを把握しきれてない。なおかつ相手の力もわからないから、どこまで通じるのかっていう不安が、心の負担になるんだろうね」

 ヤマトとユイナに比べてルクスの疲労が強い理由をヤマトが推測する。


「あー、あるかも。あとねー、ちょっと考えたのが、成長痛的なものがあったりもするのかな? って。私たちは半分ゲーム、半分現実みたいなところがあるけど、ルクスはそのへん違うのかも……なーんておもったり」

 ゆっくりとルクスの頭を優しく撫でているユイナは、別の視点でルクスが眠り込んでしまった理由を考えていた。


「なるほどね、確かにそういうのもあるかもしれない。――やっぱり、この世界はまだまだわからないことだらけだなあ」

 ルクスから視線を遠くに移したヤマトは、ぼんやりとそんなことを呟いていた。





 その後、ルクスが目覚めたのは、休憩を始めてから二時間ほど経過したころだった。


「う、ううーん……にゃ! また寝てしまいましたにゃ!」

 飛び起きるようにルクスは目覚める。

 ここ最近、いつの間にか眠ってしまうことが多いなあと彼自身、強く感じていた。


「おはようルクス」

「おっはー!」

 ふわりとほほ笑んだヤマトとユイナがルクスに目覚めの挨拶をする。

 あのあと、彼らは食事を終えると、各自の装備の点検をしていた。ちょうど点検が終わった時にルクスが目覚めたため、タイミングが良いなと思っていた。


「も、申し訳ありませんにゃ!」

 ひれ伏さんばかりにルクスが深々と頭を下げるが、対する二人はそれを笑顔で見ていた。


「ルクス、いいんだよ。一気にレベルが上がることで、かなり身体に負担がかかっているんだろ?」

 最初は疲れから深い眠りについていたルクスは次第に寝ながらうなされていたのだ。

 そんなルクスを見ていた二人は、眠っている彼に対して回復魔法をかけていた。すると身体への負担が軽減され、再び落ちついた寝息になっていた。


「た、確かに、ここ最近戦闘を終えると身体が重いような、関節が痛いようにゃ……?」

 二人に指摘されて、言われてみたら、とルクスは自分の身体への負担が大きいことに気づくこととなった。


「やっぱりそうなんだー、ユイナさん予想的中! いえいっ!」

 言った通りでしょ、と言わんばかりにユイナは満面の笑みでブイサインを作ってヤマトに見せる。


「あぁ、さすがユイナだよ。普通は一気にレベルが上がると、身体がそれに合わせるために負担をかけて身体を成長させるみたいだね……ルクス、ごめん。今まで気づかなかったよ」

「い、いえいえっ、私自身も気づかなかったくれいですにゃ。そもそも負担が大きくなったのはここ最近のことですからにゃ」

 ヤマトに謝られて慌てたようにぶんぶんと手を振って否定するルクス。

 高レベルになればなるほど、ステータスも大きく上がるために負担も大きくなっていたようだ。ユイナに気を遣うように前にも言われていたことを思い出したヤマトは少し申し訳なさそうにしていた。


「なんにせよ、回復魔法をかけると負担が軽減できることはわかったから、次の時は早めに回復魔法をかけることにするよ。ユイナ、頼むね」

 自身の力を頼ってくれているヤマトの言葉に、ユイナはにっこりと笑顔で頷いて返す。


「本当にもうしわけ――いえ、ありがとうございます。今後もご迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いしますにゃ」

 謙遜することよりも、謝ることよりも、しっかりと礼の言葉を告げるのが先決だと考えたルクスは途中で首を振って言葉を遮ると、願い出るようにぺこりと頭を下げた。


「こっちこそよろしく。迷惑はお互い様だから頑張っていこう。まだまだ山頂まではあるから、邪竜との戦いもたくさんあるはずだよ。それを全て突破すれば……」

 そう語るヤマトの視線は、邪竜たちを倒した先にいるものへと向いていた。

ヤマト:剣聖LV895、大魔導士LV792、聖銃剣士LV721

ユイナ:弓聖LV873、聖女LV777、聖強化士LV742、銃士LV692、森の巫女LV657

エクリプス:聖馬LV792

ルクス:聖槍士LV776、サモナーLV871

ガルプ:黄竜LV786

エグレ:黒鳳凰LV697

トルト:朱亀LV693

ティグ:青虎LV695


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

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