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第百二十三話


 加護のおかげか、魔導船の航行はモンスターに一度も遭遇することなく、順調に進んでいき、あっという間にミノスたちのいる迷宮近くまで到着する。相変わらず雪が降り積もっているが、今日は晴天で雪がちらついている様子はない。


 少し離れた場所に魔導船を下ろし、全員が降りたのを確認するとヤマトは魔導船を帰還させるように魔導船の腕輪に命じる。するとぴっと空間が切り開かれ、そこへぬるりと魔導船が収納されていった。


「わー、便利だねえ」

 防寒具を改めて身につけつつ、ルクスを腕に抱きながら感動したようにその光景に見入っていたユイナ。


「ね、アイテムボックスに入れようかと思ったけど、現れた時と同じようにできないかなってさ。ゲーム時代はそうやって好きに呼び出したりしまったりできたし、できてよかったよ」

「ふふっ、なんでもやってみるものだね!」

 ヤマトは試しにやってみただけのことができてしまったために少し驚き、苦笑していた。そんな彼をからかうように笑うユイナ。彼らはミノスたちがいる迷宮を目指す。




 ルクスをずっと抱いているのも疲れるかもしれないと気を遣ったエクリプスの行動により、ルクスは今エクリプスの背中に乗せられていた。エクリプスの大きな身体の上で猫本来の丸まるような姿勢のルクスはすやすやと眠っている。

「……う、うーん」

 エクリプスの大きな身体の上で猫本来の丸まるような姿勢ですやすやと眠っていたルクスがここにきて目覚める。


「ここは……――んにゃ? エクリプス殿の上? 確か黄龍殿たちと会っていたような気が……寒い!?」

 色々な変化が急に襲い掛かってきたため、飛び起きたルクスは混乱し、最終的に身体の寒さが最も強い感覚になっていた。プルプルと震えている。


「お、ルクスも目が覚めたか。よかったよ……って、さすがにそのままじゃ寒いか。これを身に着けるといいよ」

 猫であるルクスは寒さに弱いらしく、軽く毛布を掛けた程度でエクリプスの背中に丸まっていたため、穏やかに微笑んだヤマトが防寒用のマントを手渡す。

 これには耐寒と加温の効果が付与されているため、身に着けた瞬間からぽかぽかと温かくルクスの身体を包み込んだ。


「あ、ありがとうございます! あぁ……温い、ぬくぬくですにゃあ!」

 とろけるような表情でマントに包まるルクスは、深い眠りから覚めたためか普段より気の抜けた雰囲気だ。時々語尾に『にゃ』がついており、一層猫であることを感じさせた。


「――ルクス……」

 それを聞いたユイナがゆらりゆらりとルクスに近づいていく。


「おぉ、ユイナ様。ここは一体……」

 どこなのか? と聞こうとしたところで、ユイナにギューッと勢いよく抱きしめられた。


「ルクスの猫言葉可愛いよおおおおおおっ!」

「にゃにゃにゃっ、これは一体どういうことですかにゃ!?」

 やっと落ち着いたかというところで、更に驚きにさらされたルクスは未だ『にゃ』が抜けずにいるようだった。ごりごりとルクスに頬ずりするユイナの腕の中でじたばたと暴れながら助けを求めるように鳴いている。


「もうユイナ。一旦落ち着かせてあげよう。状況説明を何もしていないんだからさ」

 呆れたような表情でヤマトがユイナの襟首をつかみ、なんとかルクスとユイナを引きはがしていく。エクリプスも器用にルクスのマントを口で食んで手助けしている。


「ふう、助かりましたにゃ……――それで、ここは一体?」

 ようやく自由になったルクスは自分の足で立ち、周囲を確認する。

「じゃあ説明をするね。まず、ルクスがどんな状況にあったかから順番にいくよ?」

 それからヤマトはルクスが倒れたこと、そして倒れた理由から説明をする。

 そして、その後四聖獣に与えてもらったものと、ここに来るまで疲れたルクスはずっと寝ていたこと。


 これから精霊界に向かうため、神であるミノスに会いに移動し、いまは迷宮の近くにいることを話す。


「――なるほど、そういうことでしたか。いやはや、醜態をさらしまして申し訳ありませんでした」

 ヤマトが順追って説明をしてくれたことで、なんとか冷静さをとり戻すルクス。せっかく契約できたのだが、その力をうまく使えていなかったことを反省していた。

「いや、それは気にしなくていいよ。強くなった証だしね。それよりも……ルクス、いつも敬語で丁寧な口調にしてるみたいだけどさ、もっと砕けていいんだよ?」

 先ほどの慌てた反応のルクスが素であると思ったヤマトが困ったように笑いながらそう提言する。


「……えっ!? いえ、その、えっと、そんにゃことは別に……はっ!」

 自分で言葉の中に『にゃ』がついてしまっていることに気づいたルクスは、顔を赤くして口を押さえていた。


「最初から敬語だったから気にしなかったんだけど、多分ゲームの時も猫語使ってたよね? いいんだよ、別に遠慮しなくてさ」

「す、すいませんにゃ。できるだけ丁寧に喋ろうと心掛けていたのですが……そうですね、そんな風に装う意味もないので、素の話し方にしますにゃ!」

 主人であるヤマトの言葉を受けて、ルクスは本来の話し方でいくことを選択する。

 だが、それはユイナの猫可愛い欲を刺激するに十分なものだった。


 ユイナは先ほどの時点でルクスを可愛がり、気の済むまで存分に愛でたいと思っていたが、それを無理やり引き離されたため、そのフラストレーションがたまりにたまっていた。

 そこへきて、ルクスが自らの言葉を今後は猫族のものへと変えていくと聞いては、彼女を止められるものはいなかった。


「ルクスううううううう! もう素直になっちゃってええええええ! 可愛いんだからああああ!」

 手をワキワキさせながら興奮そのままにルクスに飛びついたユイナ。彼女の猫可愛がりは強烈だったが、ルクスは致し方ないと諦め、ヤマトも今回は我慢してくれと彼に念を送っていた。




「――さて、それはさておき迷宮に向かおうか。ミノスに会って、精霊界に行こう!」

 ルクスはつやつやでとろけた笑顔のユイナが抱えたまま移動しているので、ヤマトはそちらには触れず迷宮に入っていく。


「む、むぐぐ……ユ、ユイナ様、もう少しお手柔らかにお願いしますにゃあ……」

 ぐいぐいと頬を擦りよせられて苦しそうに言うルクスに対して、逃げられたくないユイナはしょうがないと少し力を緩めると、再び頬ずりをしていく。

「うんうん、ごめんね。……はあ、可愛いにゃあ」

 とろけた表情でルクスの毛並みを堪能するユイナにもいつしか猫の言葉が移っていた。


「……(かわいいなあ)」

 にゃあにゃあ言い出したユイナを見て、内心そんなことを思ってにやけそうになるヤマトだったが、表情には出さずに真剣な表情で進んでいた。


ヤマト:剣聖LV745、大魔導士LV622、聖銃剣士LV541

ユイナ:弓聖LV723、聖女LV627、聖強化士LV582、銃士LV492、森の巫女LV487

エクリプス:聖馬LV672

ルクス:聖槍士LV656、サモナーLV599

ガルプ:黄竜LV226

エグレ:黒鳳凰LV1

トルト:朱亀LV1

ティグ:青虎LV1


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

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