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第百二十二話


「ともあれ一気に戦力増強ができたし、また召喚獣のレベル上げをして、そうしたらミノスのところから精霊王のところへ行こうか」

 嫌な予感を振り払うように笑いながら、ヤマトがルクスの肩にポンと手を置いたが、いつもならすぐ返ってくるはずの返事がなかった。


「……ルクス?」

「ルクス、どうしたのー?」

「ヒヒーン」

 身動き一つしないルクスを心配するように三人が声をかけても、彼から返事はない。

 戸惑う三人がもう一度声をかけようとした次の瞬間、崩れ落ちるように力が抜けたルクスはその場にばたりと倒れてしまった。


「っ、ルクス!?」

「ルクス、大丈夫!?」

 大きく目を見開いて驚くヤマトが抱きかかえるようにして焦ったように声をかけるが、それでも反応はなかった。

 おろおろとするユイナは魔法で回復しようにも、何が起こったのかわからず、声をかけるのみで、手を出して良いのか悩んでいる様子だ。


『待て待て、慌てていてはわかるものもわからんだろう。我が見よう……といわずともわかったな』

 どれどれと顔を覗き込んだ黒鳳凰は、なにか思い至ったようで、視線を周囲に巡らす。


「……あれ、ガルプがいない?」

 つられるように周囲を見たヤマトはガルプの姿がないことに気づくが、他に召喚されていたはずのエグレ、トルト、ティグの三名の姿も見えなくなっていた。


『単純な話だ。レベルが上がった身体に慣れていない状況で、元々の黄龍の息子に加えて三名と新たに契約を結んだとあっては、負担が大きくてこうもなるであろう』

 一気にレベルが上がり、一気に契約数が増え、一気に魔力が消費されたことで、ルクス自身が耐えきれなくなったというのが、この結果に繋がっていた。

 しかも契約したのが四聖獣の子どもたちとあっては、その魔力消費も並大抵のものではない。


「な、なるほど……ということは休憩すれば大丈夫でしょうか?」

 念のためヤマトが確認すると、黒鳳凰が大きく頷く。

『うむ、今後はガルプのような常時召喚ではなく、必要な時にだけ呼び出すと良いだろう。まだまだ成長の余地を持っているだから、今後が楽しみだな?』


 今は倒れてしまったルクスだったが、黒鳳凰はそのルクスのことを認めているような口調だった。

 ちょいちょいと鼻先でルクスの身体をつついて遊んでいる。


『……不思議な顔をしているようだが、本来であればこの数の聖獣と契約できるということ自体が普通ではありえないことだ』

 それは黄龍の言葉だった。ヤマトたちの表情を見て、その疑問に答えてくれる形となった。


「なるほど、じゃあルクスはそれだけセンスがあったということですか。――よかった、さすが俺の使い魔だ」

 自身の使い魔であるルクスのことを認められたヤマトはほっとしつつ自慢げな表情で、疲労から深く眠る彼を見ていた。


「うんうんっ、やっぱりルクスも最強パーティの一員だね! もちろん、エクリプスもだよ!」

「ヒヒーン!」

 嬉しそうににぱっと笑うユイナも、仲間が認められたことが嬉しいようだった。高らかにエクリプスが鳴き、同意するように返事をする。



『ふむ、これでお前たちの戦力が強化されたわけだが……このあとはどこにむかうつもりだ?』

 ヤマトは黒鳳凰の問いを受けてしばらく考え込む。

 元々は青虎のもとへと向かう予定だったが、それは黒鳳凰の取り計らいによって解決している。

 ならば、次にやることは何かを考える。


「――もういっそ、ミノスの元へと向かって精霊界へと移動しようか」

 それがヤマトが出した結論だった。


「レベル上げはどうするのー?」

 顔を覗き込むように聞いてくるユイナに、笑顔でヤマトが頷く。

「うん、それもいろいろと考えたんだけど、精霊界にも確かレベル上げポイントがあったはずだからそこでやればいいかなって。まずはミノスに頼んであっちの世界に飛ばしてもらうことが先決かな」

 その説明を聞いてユイナも笑顔で頷いた。元々反対をするつもりもなく、ただ確認をしただけのようだった。


「――と、いうことに決めました」

 ルクスを抱いて立ち上がったヤマトの選択を、黒鳳凰たちも悪くないと考えているようで、それぞれが頷いていた。


『ふむ……ならばもう二つ、サービスをしてやろう。一つ目はお主たちの船へ我々四者の加護を付与しようではないか。そうすれば我がとりついたようなことをモンスターにやられたとしても難なく防ぐことができるであろう』

 ヤマトたちはそれを聞いて黒鳳凰が魔導船にとりついた時のことを思い出していた。

 もしあれが敵意のあるモンスターの仕業であったら、船が破壊されていた可能性も高い。


「それは助かります」

『うむ、もう一つはこれだ』

 すると、黒鳳凰の身体から羽が一枚ヤマトの前にふわりと落ちてくる。取り落とさないようにルクスをユイナに預けて、それをキャッチした。

 ついで黄龍からは鱗が一枚、青虎からは毛の束が一つ、朱亀は甲羅の欠片が渡される。


「……これは?」

 このようなアイテムはゲーム時代にはなかったものであるため、ヤマトが質問する。


『ふっふっふ、聞いて驚け。それは我々の力の一部が込められたものだ。いざという時に使うことで、我々の力を使用することができる。具体的には……使った時にわかるであろう』

 自慢げに少しもったいぶった言い方の黒鳳凰だったが、ヤマトはこれらのアイテムにはそれだけの力があることを理解していたため、その時がくるまでしっかりと持っておこうと考えていた。


「色々とありがとうございます。おかげで色々と強化することができたので、これで一歩魔王打倒に近づきました。これなら……」

 礼を言いながら真摯に頭を下げるヤマト。

 まだ力が足りないと思ってはいたが、必要なピースが少しずつ埋まっているのを感じ取っていた。


『お主たちの行く先に黒き加護があらんことを』

『朱き加護が守っている』

『黄なり加護の守りあれ』

『青い加護が降りそそげ』

 四者のそれぞれの色に合わせた言葉を背に受けて、ヤマトたちは魔導船に乗り込んでいく。


 四聖獣の加護を受けた魔導船の色は力強い生命力を放つように輝いて見えた。


「ミノスのところに到着する頃にはルクスも目覚めているだろうから、今はゆっくりと休ませてあげよう」

「りょーかいっ」

 笑顔で見合った二人。ヤマトは操縦室に向かい、ユイナはルクスを優しく抱きなおし、休憩室へと向かって行った。





 休憩室には柔らかなソファが設置されており、ルクスをそこにそっと横たえる。

 いまだ、ルクスは疲れた身体を癒やすように深い眠りについていた。


「――ルクス、君がいないと私たちはきっと魔王に勝てないから、待ってるよ」

 静かな寝息をたてるルクスの頭を優しい手つきで軽くなでると、近くにあった毛布を彼に掛けたユイナは離れた席に腰かけ、彼が目覚めるのを待つことにした。


ヤマト:剣聖LV745、大魔導士LV622、聖銃剣士LV541

ユイナ:弓聖LV723、聖女LV627、聖強化士LV582、銃士LV492、森の巫女LV487

エクリプス:聖馬LV672

ルクス:聖槍士LV656、サモナーLV599

ガルプ:黄竜LV226

エグレ:黒鳳凰LV1

トルト:朱亀LV1

ティグ:青虎LV1


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

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