表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/149

第百九話


 ヤマトは銃剣の力を存分に使い、確実に竜へダメージを与えていく。

 トリガーを引いて発動される全ての魔力が大魔導士由来であるため、全てが大ダメージだ。


「ヤマトに負けていられないんだから」

 彼の戦い振りに触発されたユイナは戦いを楽しむようにうっそりとほほ笑んで弦を引きながら、力を溜めていく。

 上限はあるが、溜めれば溜めるほどに威力を増していくスキルの準備をしていた。


 これは溜めの長い分、隙の大きい技ではあるが、ヤマトが全ての注意を惹きつけてくれている今だからこそ、効果的に使うことができる。


 そうしてユイナが攻撃の準備をしている間に、エクリプスとその背にのったルクスも攻撃に参加している。


「ヒヒーン!」

 エクリプスの強力な蹄による攻撃。それは、竜の強固な鱗を踏み抜くほどの威力を持っていた。

 効果範囲が狭く、そしてこれ以外の攻撃方法を持たないが、それゆえに威力に特化している。


 ヤマトの攻撃によって声をあげている竜は、踏み抜かれた鱗のダメージが追加されたことで、声にならない痛みにもだえつつ、ぎろりと恨めしそうに睨み付けるために首をそちらに向ける。


「“アクセルワン”!」


 竜の注意がエクリプスに移ると思われたが、その背中に潜むように構えていたルクスが飛び上がる。

 彼は大きな槍を手に竜の腕を勢いよく駆け上がっていき、顔面に攻撃を加えた。


「“クアドラブルスラスト”!」

 気合の入った四連の突きが竜の顔面に繰り出される。

 瞼二つと口と鼻を狙った四撃は竜を怯ませて、顔をのけぞらせる。先ほどのヤマトの攻撃も、人だからと舐めていたら相当痛いものだったため、警戒の方が勝ったのだろう。


 そしてこの攻撃はダメージを与えることよりも、竜の意識をルクスに集中させることに意味があった。


「まだ、終わりませんよ!」

 ここでルクスは一撃を入れて怯ませるだけでなく、長い槍の柄の部分をうまくつかって、顔だけでなく竜の体勢を崩すことも忘れない。これは、より大きな隙を作るための彼の布石だった。


「ナイスルクス! “アローレイン……」

 ルクスの考えを褒めながらテンション高くユイナが発動したアローレイン。

 空に向かって矢を放ち、上空より竜へと無数に降り注ぐ矢。

 ただの矢であれば、その強固な鱗に弾かれて終わりだったが、力を溜めていた彼女の攻撃はそれだけではなかった。


「“タイプエクスプロージョン”!」

 力強く技名を口にするユイナ。

 その冠する名のとおり、矢は竜の背中に触れると同時に爆発していく。無数に降り注いだ矢の分だけ爆発が起きていた。


『GUAAAAAAAAAAAAAA!』

 爆発に包まれながらのたうちまわる竜に対して、それを静観しているヤマトではなく、既に次の攻撃に移っていた。


「“スーパーノヴァブレイブ”!」

 ユイナが巻き起こした爆発の合間を縫って突き進んだヤマトは、先ほどダメージを与えた足に対して強力な攻撃スキルを放つ。

 このスキルを銃剣を使って放つことで、スキルと同時に先端から魔力の弾丸を放ち、威力を高めていく。弾丸と言うには大きすぎるほどの白く輝く光の玉が強い魔力のこもっている証だった。


「“シュウウウウウウウトオオオオ”!」

 そして込められる最大限の魔力とともに放ったこの一撃は、竜の足を思い切りぶっ飛ばした。たたらを踏みながらよろけた竜の足は強固な黄色い鱗を突き破ってぐちゃりと歪んでおり、攻撃の威力を物語っている。


『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 かすり傷程度でも骨が折れたのかと思うほど叫んだ竜がこれほどのダメージを負えばその苦しさは饒舌しがたいものとなる。

 これまでで最も大きな声をあげた竜は足だけでなく、後方に思い切り吹き飛ばされた。


 そして、花を巻き添えにしながら広場の端まで到達すると、散った花の中で竜はガクリと気を失った。





「ふう、こんなものかな」

「ナイスヤマトー!」

 竜が倒れたのを見定め、一息つくヤマトのもとへ、ぴょんと飛ぶようにやってきたユイナが笑顔で声をかける。


「いやいや、みんなが注意を逸らしてくれたのと、ユイナのその前の攻撃がかなりダメージを与えてくれたおかげだと思うよ」

 戦い振りを称えるユイナを否定するようにヤマトは苦笑する。これは謙遜ではなく、彼自身が心の底から思っていることだった。


「それと……やっぱりこっちのほうがレベルが上だったのは大きいね」

 竜のレベルは200、対してヤマトとユイナはそれぞれ220レベルを超える職業を持っているため、優位に戦うことができた。


「お二人ともお疲れ様です。やはり、お二人の攻撃は強力ですね!」

 エクリプスの背に乗ってルクスも戻ってきた。達成感に満ちた表情で夫婦二人の戦い振りを熱く語る。


「ルクスも頑張ってたね、レベルが上がって経験も積んだおかげか槍捌きが良くなってた。――それにしてもエクリプスも鱗をぶち抜くとか一体どういう蹄なのやら……」

 ヤマトとユイナはレベルが高く、能力を存分に発揮して攻撃。ルクスは意表をついた攻撃をした。

 そこまではヤマトも理解できていたが、エクリプスの攻撃力だけは謎だった。


「単発の攻撃であれだけの竜の鱗をあっさりとぶち抜くなんてそうそうできないよねえ。私たちはレベル差があるけど、それでも難しいかも」

 エクリプスの毛並みを整えるように撫でたユイナもエクリプスの蹄の攻撃には驚いていた。


「あっ、やっぱりエクリプス殿の攻撃はすごかったんですね。当たり前にやっていたので、あれが普通なのかと思っていました……」

 わあと驚くルクスを見て、思わずヤマトは苦笑する。

 当たり前で竜の鱗を破壊するうちの馬は一体なにものなのかと。


 みんなに褒められたと感じたエクリプスは誇らしげに鼻を鳴らして胸を張っていた。





「なんにせよ、これで俺たちの力は見せられたと思うんだけど……アレ、大丈夫かな?」

 ヤマトが危惧しているのは、吹き飛んだ竜のことだった。花や土にまみれながら深い傷を負って倒れる竜はいまだに動きを見せないからだ。

「た、多分……?」

 ピクリとも動かない竜を見て、ヤマトもユイナも次第にやりすぎたかと心配になっていた。


「あまり良くない様子だと思いますが……」

 おろおろと落ち着きなくなり始めたルクスも、あれほど大きな竜が動かないところを見て、これはまずいのではないかと焦りだした。


「――っユイナ! 回復を!」

「う、うんっ!」

 焦ったようにヤマトに言われて、弾かれるように飛び出したユイナは慌てて竜に走り寄る。


「“ヒーリング”!」

 そして、すぐに発動できる初期の回復魔法を使っていく。更に森の巫女の力でこの地に宿る自然の力を引き出して回復力を上乗せした。

 うっすらと竜の身体を温かな光が包み込み、徐々にヤマトたちが与えたダメージが修復される。彼女の癒しの力で、周囲の散ってしまった花々も一緒に再生していく。そのうちに竜は意識を取り戻す。


『ぐ、ぐおおおおお、おおおお……』

 竜は慣れない痛みが残る身体をゆっくりと起こしながら唸る。


「だ、大丈夫……?」

 回復していたユイナが一番近くにいたため、気遣いつつ声をかける。一応怪我は治したものの、滅多に負傷しない竜の治療となると、すんなり進むのかユイナ自身不安だった。

『ぐ、ぐむむむ、やられてしまったのか……お前が回復してくれたのか? すまんな、助かった』

 竜は綺麗に治っている傷を見て、それを施したのがユイナであることに気づくと、素直に礼を言う。


「ふう、よかった。もしや死んだのかと心配しました」

 その間にヤマトも竜のもとへとやってくる。無事に治療できている様子にほっと息を吐いていた。


『普通にそんなことを言われれば怒ってもよさそうなものだが。治してもらったとはいえ、死んでいてもおかしくなかった可能性も十分にあったのだからな』

 竜も自分の身体がどんな状況であったか理解しているため、口調も柔らかくなっていた。



『ふむ、力は確認できた。そして、我も話せる程度には回復した……なれば本題に戻ろうか』


ヤマト:剣聖LV235、大魔導士LV232、聖銃剣士LV141

ユイナ:弓聖LV233、聖女LV225、聖強化士LV170、銃士LV107、森の巫女LV154

エクリプス:聖馬LV191

ルクス:聖槍士LV174、サモナーLV198


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ・評価ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ