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第百七話


「さて、それじゃ始めようか」

 両手に武器を構えたヤマトは上空を飛び回るワイバーンたちに視線を向ける。


 ワイバーンのレベルは170。レベル差でいえば、ヤマトが圧倒的に優位。

 しかし、ワイバーンは空を飛んでいるため、その点だけでヤマトよりも優位な状況にある。


「それじゃ、まずはこれから」

 左手にある銃剣を前にだし、魔力を込めていく。剣の先端に魔力が集中し、光が収束し始める。

「――“シュート”!」

 そして、十分にたまったと判断した瞬間、引き金を引くとその魔力が弾丸となって勢いよく発射される。


 込められた属性は炎と風。赤と緑の光が絡んで混ざり合うように飛んでいく。


 弾丸は上空に舞う一体のワイバーンに向かって行くが、一直線に突き進んでいったためにあっさりと避けられてしまう。

「っ、外れた!?」

 固唾をのんで戦いを見守るルクスが思わず声をあげてしまうが、ヤマトはにやりと笑う。


「“バースト”!」

 ヤマトのかけ声に合わせてワイバーンの群れの中心に到達した弾丸が弾けるように爆発し、周囲のワイバーンを次々と飲み込んでいく。爆発は大規模であり、半分ほどがその爆発で倒され、力を失って地上に落ちていった。


「すごい……」

「まだだよ」

 その光景をぼんやりと眺めてぽつりとつぶやくルクス。

 しかしヤマトの次の動きを注視しているユイナは、彼が既に次の動きに移っていることに気づいている。


「ご主人、様?」

 ユイナの声に首を傾げながらルクスは視線を地上に戻すが、そこにはヤマトの姿はなかった。


 ヤマトは弾丸を放つと同時に、移動していたのだ。


「ど、どこに?」

 焦ったようにきょろきょろと周囲を見渡すが、ルクスの目にヤマトは映らない。

「ルクス、上だよー」

 ちょいちょいとユイナが指差した方向にルクスが視線を向けると、言葉通りヤマトは上空にいた。


 翼を持たぬヤマトは一度跳躍したあと、すぐさま新たな弾丸を放ち、その弾丸を空中に固定する。

 そしてそれを足場にして空中を移動していた。


「飛ぶことはできないけど、移動くらいはできるさ」

 なんでもないように相手の土俵にあっさりとあがるヤマト。

 ワイバーンの独壇場と思われた空中に彼が現れたこと、そして仲間の半分ほどがやられたことでワイバーンたちは混乱の中にあった。ぎゃあぎゃあと騒ぎながら統率を失ったように飛び回るだけだ。


「今のうちにちゃっちゃとやっちゃおうか」

 待っている大切な仲間がいるため、ヤマトは気合を入れてワイバーンの群れへと突っ込んでいく。

 踏み台の弾丸を蹴ってワイバーンの横を通り過ぎる瞬間、右手の剣でワイバーンを真っ二つにした。


「ギャッギャ!」

 次々に落ちていく仲間を見てワイバーンは動揺し、どうすればいいのかわからず、ただ声だけを上げ続ける。

 その間にもヤマトの手によってどんどんワイバーンは倒されていく。


「それじゃ、さようなら」

「――ギャッ!?」

 慌てている内にいつの間にか最後の一体となっていたワイバーンは、ヤマトの言葉が耳に入ると同時に真っ二つにされて地上へと落下していった。

 あれだけいたワイバーンは、数をもってしてもヤマト一人に傷一つ着けること叶わず、全て倒された。






「あ、あっというまに……」

 ゆっくりと地上へ降り立つヤマトを見ながらルクスは驚愕の表情になっている。二十ものワイバーンが現れてから数分も立たないうちにヤマトがあっさりと撃破してしまったからだ。


「――と、いうわけでとりあえず役目は果たせたかな?」

 優しい笑みを浮かべたヤマトは武器をおさめて、みんなのもとへと戻ってくる。


「す、すごいですね」

「おっかえり、ヤマト―! やっぱりヤマトは強いよね! 能力の使い方がすごく上手だと思う!」

 いまだ驚愕しているルクスと両手を広げて飛びつくように立ち上がったユイナはヤマトのことを称賛する。

 それほどにヤマトの戦いは圧倒的なものであった。


「聖銃剣士はなかなか面白い職業だね。大魔導士と合わせればかなり強力な弾丸を撃つことができるし、さっきみたいに移動にも使えるからね」

 褒められて嬉しそうにはにかみながらも、ヤマトは職業に対する考察を忘れない。

 もし、同じ職業につくことができるものがいたとしても、移動に弾丸を使うことができる者は恐らくヤマトだけであるだろうとユイナとルクスは思っていた。


「さて、またモンスターが集まってきても困るから先に進もうか」

 その言葉で、皆が先へ進むために支度する。


「うん! 行こー!」

「はい!」

「ヒヒーン!」

 そして、広場を抜けて一行は更に奥へと進んでいく。





 ヤマトとワイバーンの戦いがあったことは、この山に生息する他の竜にも伝わっていた。

 いわばワイバーンは斥候役。この山に入った侵入者に対する竜たちからの最初の試練でもあった。


 ドラゴンズランス――その名のとおりこの山にはワイバーン以外にも多くの竜が生息している。

 そのドラゴンたちがヤマトたちの存在に気づき、ある竜は警戒し、ある竜は興味深く観察し、ある竜は無関心を貫いていた。




「さあ、今の戦いが何に繋がっていくか……楽しみだね」

 どんどん山の奥へと進んでいく道を進みながら、ヤマトはこれから先で待ち構えている戦いに思いをはせている。

「できれば、穏便にことが進むといいのですが……」

 精霊のウルを呼び出しつつ、その後ろをついていくルクスは不安に思っているようだった。


「ゴーゴーすっすめー!」

 楽しそうに腕を突き上げて先を歩くユイナは深く考えておらず、先に進むことだけ考えているようだった。それもこれも仲間がいるからこその安心感から生まれるものだろう。


「――ルクス、先に言っておくけど、多分戦いになると思うよ。だいたいの場合、力を認めてもらうために戦闘になるからさ。でも、大丈夫。俺たちも一緒だからね」

 少し振り返って励ますようにルクスに声をかけるヤマト。そのおかげでルクスの気持ちも幾分か楽になる。


「竜種は経験値が高いから、ここの戦いでも結構レベルが上がるのもいいとこだね」

 正面に視線を戻したヤマトは嬉しそうに呟く。先ほどのワイバーンとの戦いでも、地味に全員レベルが上がっていた。


「うんうん、結構美味しいよね。大きなモンスターと戦える機会もめったにないし、ここでの戦いはいい経験になると思うよー!」

 にぱっと笑ったユイナがヤマトの言葉に同調する。


 サイズの大きなモンスターは、これまた大きなダンジョンのボス戦で戦うことがほとんどであるため、このドラゴンズランスのように、竜種のような大きなモンスターと普通に戦える場所は少なかった。

 レベルが上がってきた彼らからすれば、そういったモンスターと戦う方がワクワク感が強い。


「さあ、山頂目指して出発だ」



ヤマト:剣聖LV225、大魔導士LV221、聖銃剣士LV105

ユイナ:弓聖LV221、聖女LV214、聖強化士LV146、銃士LV91、森の巫女LV122

エクリプス:聖馬LV171

ルクス:聖槍士LV148、サモナーLV181


お読みいただきありがとうございます。

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