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アタシがジャスティンっ!!

「いっえーーーいっ!!愛しのジャスティン様の抱き枕GETっ!!」


ジャスティン様は、アタシの大好きな乙女ゲーム『らぶぱら!!』の攻略キャラクター。

赤毛短髪でガッチリした体格に、硬派無口。

騎士団長の父親を敬愛していて、父のような騎士に成れるようにとストイックに訓練をしている姿に、きゅんきゅんさせられちゃうー♡

騎士団服もキッチリ、カッチリ、バッチリ着こなしていて、本当に男前♡

アタシは、そのジャスティン様のグッズを集めていて、この抱き枕で現行販売の商品は全て網羅。

公式ポスター以外にも、二次創作のポスターやイラストを印刷したものを部屋中に貼って、アタシの部屋はまさにジャスティンルームっ!! 最高っ!!


「さっ、今夜はこのジャスティン様の抱き枕と添い寝シーツでグッスリ快眠よっ!!夢の中で待っててジャスティン様ー♡きゃーっ♡」


抱き枕を抱えてベットへ向かっていると、抱き枕が入っていたビニール袋をウッカリ踏ん付けた。


「あら?」


抱き枕を抱えていたのでバランスが取れず、そのままビニールで足を滑らせ、後ろに転ぶ。

と、同時に、机の角で頭を打ち付けた。


「いったぁ・・・・」


あ・・・れ。何か目の前・・・・くら・・・く。




ジャスティン様の抱き枕を抱えたまま、アタシは死んだ。

まぢ、ウケルw  


── 完 ──




って言う前世の記憶を思い出したのよねぇ・・・・

さっきまで、父親に剣の稽古をつけて貰っていたんだけど、父親の木剣が脳天にクリティカル☆ヒット。

そのまま後ろに倒れKO。

勝者はドートル国の騎士団長をしている我が父。


そして、半泣きで私を屋敷に運び込む父親の腕の中で、朦朧としながら上記の前世を思い出していたアタシこそ・・・


乙女ゲーム『らぶぱら!!』の攻略対象。


騎士団長子息、 ジャスティン・ルイス(5)





ちょっとぉぉーーーーっ!!

嬉しいんだけど、嬉しくないぃぃっ!!

こーゆー場合って、普通は悪役令嬢かヒロインに転生するもんでしょ?もしくはモブ令嬢っ!!

なのに、アタシ自身がジャスティン様に成ってどうすんのよぉ!

これじゃ、どうあがいてもジャスティン様と恋愛できないじゃない!

だって、アタシ自身がジャスティン様なんだから!


ちょっと、神様チェーーーンジっ!!



脳内で神様に絶叫した直後、頭の痛みで気絶してしまったアタシは、2~3日の安静を言い渡された。


この安静期間の3日間、アタシは一日のほとんどを鏡の前で過ごしているわ。

だってジャスティン様よ?

生きたジャスティン様なのよ、アタシ。

いや、今はジャスティンきゅんかしら?

ショタジャスティンきゅん・・・ハァハァ。

だから今はジャスティンきゅんが一番素敵に見えるポーズや、ファッションを研究しているの。


「燃えるような赤毛だから、黒でダークパンクな感じも良いけど、5歳でそれは背伸びし過ぎかしらねぇ~。ダークパンクは15~18が一番旬かしら。それ以上の年代になると、ファッションじゃなくて実際に無法者アウトローっぽくなるし。特にこの世界だとねー。まぁ、そのまま”いぶし銀”的なハードロッカーなおじ様を目指すのも良いけどぉ。でも、やっぱりジャスティン様と言えば騎士団服よねぇ~。やっぱり、ベーシックに行くべき?」


だからといって、今のこの格好はNGだわ。

オフホワイトのシャツに、茶色のサスペンダー。焦げ茶色のハーフパンツ。


いや、少年っぽさが出てて良いのよ?

でもなんか芋臭いっていうか、田舎者っぽいというか。

それに、赤毛だから茶色系で固めると、なんかぼやっとするのよ。メリハリが無いって言うか?

とにかくジャスティンの良さを殺してるの。

ショタとはいえ、凛々しい系の顔立ちなのよ?私のジャスティンは。


「何より駄目なのが、この白のハイソックス。長すぎてハーフパンツの裾と重なっちゃってるわよっ!

まるで白いタイツ履いてるみたいじゃない!白いタイツが許されるのは、ピーターパンまでよっ!!ジャスティン様に白タイツは個人的に無理。むーりー」


ジャスティン様は、将来身長190cm前後の細マッチョ系で硬派なキャラなのよ?

白タイツ履かせるなんて、罪深いっ!!有罪ギルティよっ!有罪ギルティっ!!


多分、そんなの絶対に許せないっていう、ジャスティンクラスタは異世界に沢山いると思うわ。


「と、言う事で。とにかく白のハイソックスは、アタシのジャスティンには履かせたくないの。分かる?」


私の主張に、お父様は頭を抱えながら反応を返す。


「いや・・・『アタシのジャスティン』って、お前がジャスティンだろうが」


この3日間お父様は、『自分が木剣を頭に当ててしまったせいで、息子がおかしくなってしまった』と、時間の許す限りアタシの側に付き添うようになった。

はじめは何かが取り憑いているんじゃないかと心配され、神官が担がれて連れて来られてたけど、結果は何も憑いてないと。

と、いう事は憑依系じゃなくて、本当に転生っていうことね。


まぁ、そんな事どうでも良いわ。

今一番悩むべきなのは、このハーフパンツと異常に長いソックスという、間抜けなファッションについてよ。


「ねぇパパぁ。ジャスティン、短いソックスが良いなぁ~」


その言葉に、父さんは苦虫を噛み潰した様な顔で、唸る。


「その、パパぁって言うのはやめてくれ・・・。それとその長い靴下は、剣の稽古で転んだりした時に、怪我をしないようにと、履かせているんだ」


・・・・そう。

ジャスティンの足に傷が残るのは、アタシとしても嫌だから、しょうがないかしら?


「だったら、このパンツの方はどうにかなら無いのぉ? ハーフパンツに白タイツって間抜けにも程があるわよっ!!」


正しくは白タイツじゃないんだけど、パット見タイツだから、もうタイツで良いわね。

これ、アレなら許せるかも。

ハーフパンツじゃなくて、野球のユニフォームみたいなシュッとしたスリムな感じの膝下で裾がつまっている形のパンツ。正式名称知らないけど。

それが稽古着なら、貴族の令息っぽくて良いんじゃない?


「そうねぇ・・・。色は、アタシが赤毛だから反対色の緑とかどうかしら? 赤毛を引き立てるのはやっぱり緑よねぇ」


アタシの大きな独り言に、お父様は首をひねる。


「反対色って何だ?」


「相反する反対に位置する色の事よ。赤の反対は緑なの」


「赤の反対が緑? なんでだ? 青じゃないのか? 属性魔法でも火属性には水属性が強いだろう?」


キョトンとした顔でお父様は首をかしげる。

いい年した髭面マッチョのオッサンがそんな仕草しても可愛くな・・・いや、可愛いわ。

でも今はそんな表情にほだされている場合じゃ無いの。

反対色の話しているのに、属性魔法の話を持ち出して来るお父様に、アタシの伝えたい事を理解してもらわないと。


「誰が属性魔法の話をしているのよっ!! そもそも火だって高温になれば青くなるでしょっ?! アタシは今、色の話をしているのっ!!」


するとお父様は、驚いた表情を浮かべる。


「なんだとっ!! 火は高温になれば青くなるのかっ?!」


なんでよ・・・何で知らないのよ・・・この程度の知識。

コレだから若い頃から剣しか握っていない脳筋はっ!!

魔法で火を使うのを見る機会だって、騎士団には有るんだから知っていなさいよねっ!!


「誰かっ!! 今すぐ蝋燭に火を付けてお父様に渡してちょうだいっ!!」


「はいっ!! ただいまっ!!」


従者が慌てて蝋燭を用意し、お父様に渡す。


「さぁお父様、今、火を灯したばかりで、そこまで温度が上がっていないから違いが出て無いけど、しばらくその火を見つめてて。そのうち温度の高い火の中心、もしくは根元の方が青くなってくると思うから。」


本当はガスコンロの火とかを見せられれば良いんだけどね。

ガスの噴き出している、より温度の高い所の火が青くなっているから。

詳しい原理や理由までは専門家じゃないから知らないけど、火の温度が高くなると、赤から青に、更に白くなるのは小学校の理科で習う知識よ。

いくら脳筋とはいえ、一国の騎士団長が、その位の知識が無いとヤバいわよ・・・。


あれ? もしかして、この剣と魔法のファンタジー世界の教育レベルが、日本の小学校レベル以下なんて事、無いわよね? まさかね・・・・


そんな可能性に怯えていると、お父様から声が上がる。


「おっ!! おぉっ!! 火の根元が青くなって来たぞっ!!」


子供の様に目をキラキラさせながら、アタシに向かってニコニコとした顔を向けて来るお父様に、ため息をついた。


「ねぇ・・・そろそろパンツの話しても良いかしら?」


この調子だと、反対色の説明もしないといけなさそうだけど。


「ん? おぉ。 赤毛の反対が緑って話だったな。」


赤毛じゃ無くて、赤色の反対が緑色って話なんだけど、まぁ良いわ。


「反対色の話だけど、何色を混ぜても作れない、三原色である赤と黄色と青で三角形を作るの。赤と黄色の間がオレンジ、赤と青の間が紫。そうして見ると、三角形の一点である赤の向かい側に在るのが、黄色と青の間に在る緑よ。だから、赤の反対は緑なの。」


それを聞いたお父様は、顎髭を撫でながら首をかしげる。


「なんで、黄色と青の間が緑なんだ?」


え? いや・・・黄色と青を混ぜたら緑に成るじゃない? 


───って!! あぁっ!!

そうだった・・・。お父様ってば、脳筋だったっ!!

剣は振るえど、絵を描くなんて事が有る筈が無いから、何色と何色を混ぜたらこの色に成るなんて、知るわけが無いんだわ・・・。

日本の小学校みたいに図工の授業が有るわけでも無いし、一応伯爵家だから家庭教師が来るけど、図工の家庭教師なんて、居るわけが無いんだし。

騎士ばかりを輩出している我が家は、字が読めて、お金の計算や備蓄品の計算が出来ればOKってな感じだから、そこまで勉強時間が無いのよ。

そんな時間が有れば剣の稽古や魔法の稽古に費やされるわ・・・


もしかして、これからのアタシの人生、こんな感じで会話が噛み合わない事が増えて来るのかしら・・・

既に、先行きが不安だわ・・・。








はぁい。あれから5年経って、アタシは今ピチピチの10歳よ♡

え? 話が飛び過ぎって?

アンタ、5~9歳児の日常生活聞いて、何が楽しいのよ。

いくらアタシの精神が成人していて、日本の知識が有るからと言って、たかだか伯爵子息で騎士団長の息子のガキンチョに何が出来るって言うのよ。

権限が無さ過ぎて、知識チートもクソも無いわ。

あらやだ、クソだなんてお下品な言葉使ってゴメンナサイね。

騎士団の大人達や冒険者の知り合い達と過ごしていたら、言葉遣いが汚くなってきたの。

乙女がクソだなんて言うべきじゃ無かったわね。今世では男だけど。


まぁ、この5年間の間に出来た事と言えば、お母様のファッションに駄目出しし続けて、ファッション改革が起こった事位かしらね?

だってお母様ったら、元女騎士で高身長で鍛えられた体しているのに、他の貴婦人たちと同じようにフワフワ、フリフリしたドレス来ているんだもの。

似合わないなんてもんじゃないわ。まさに悪夢よ。

お母様自身、自分でもなんかおかしいな? って思っていた様だけど、周りが皆そんな感じの格好だから合わせて着ていた様なのよね。

鍛えられた健康的な身体をしているお母様には、ハリウッドアクション女優がレッドカーペットで着て行くようなタイプのドレスを勧めておいたわ。

布が少なくて恥ずかしいって言っていたけど、女騎士時代のビキニアーマーの方がもっと恥ずかしいわよって言ったら、黙って着ていったの。お父様も絶賛していたしね。

この世界が、中世ヨーロッパみたいに足首出したらNGみたいな、お堅い事言わない世界で良かった。

でも、ビキニアーマーはNGにした方が良いわ。流石に。だって防御力無いし。誰得なのよアレ。


ただそのドレス。アタシの予想に反して反響がすごくて。

まぁ、着て行ったお母様と言うモデルも良かったのかしらね。

そのドレスのデザインはどこの物かって、問い合わせが殺到したんだけど、勢いに押されたお母様がポロリとアタシの名前を出したもんだから、その後が大変だったわ。

結局、お母様名義でお店が出来たみたい。

化粧品とか、ドレスとか小物を扱うお店。

アタシは前世の知識をアイディアとして出すだけで、経営にかかわって無いから詳しくは知らないけど。

それでアタシ名義の貯蓄が増えてるらしいけど、確認して無いから知らないわ。

だって、お父様の剣の稽古と、魔法の家庭教師が3人来て、魔法の授業に追われているから。


なんだか、アタシ、魔法の才能が有るらしいのよね。

でも、ゲームのジャスティン様って、魔法の才能そこまで有ったかしら?

多分、魔法を使うのにイメージ力って言うの? 想像力が必要って事なんだけど・・・

前世の化学知識や、ゲーム、アニメ、CGを駆使したアクション映画の記憶のお蔭かしら?

その辺は検証して無いから、分からないわね。検証とかって言う作業、面倒だから嫌いだし。


それよりも、今一番重要なのはっ!!

今度のお父様の休暇に、ちょっとだけダンジョンに潜れるようになったのっ!!

アタシが妖精の鱗粉が欲しいって言ったのが、切っ掛けなんだけど。


王都から一番近いダンジョンの3階には妖精が居るんですってっ!!

お父様の休暇中に何としてもダンジョン3階まで降りて、妖精の鱗粉をGETするわよっ!!


え? 妖精の鱗粉を何に使うのかって?


化粧品のラメの代用品にするのよ。


他作品の息抜きに書いているので、続きの投稿は遅いと思います。

実は他作品の騎士団長子息キャラが、この子に成る予定だったんだけど、キャラが濃すぎて没になったという。

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