表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワンドロ短編集

「蛇行列車」

作者: 新米ブラン

お題【電車】のワンドロで書いた作品です。


線路は、砂漠をまっすぐに伸びている。が、列車はそんなことお構い無しに、砂の海を思うままに走っている。

走っているのは、もう随分と古い列車だ。踏みつけた岩石のせいで、車輪はガタガタになっていて、深い緑色の塗装が残る車体は錆や砂で赤茶け、おそらく真鍮色だった車輪も、今ではすっかりくすんでしまっている。

それでも、列車は走り続ける。


噂には聞いたことがあった。砂漠を走る無人列車がある、と。だれが、いつ、なぜ造ったものなのか。そして、なぜ今も動いているのか。それらは一切わからない。ただ、列車は今も走り続けている。


揺れる車体に身を委ね、遠い過去に思いを馳せる。この列車も、それがいつかはわからないが、かつて、誰かに造られたものなのだろう。きっとそのときには、何かの目的があって造られたはずだ。それは、どこかに誰かを乗せて行くためか、あるいは、何かを運ぶためだったのかもしれない。


列車が、ガタゴトと揺れる。


なぜ、無人となった今でも、列車は動き続けているのか。それは、列車が無人制御だとか、エネルギーを生み出す機関が備わっているとか、きっとそんな理由だろう。そこを疑問には思わない。

だが……列車はなぜ、線路の上を走っていないのだろう。列車が自動操縦であるならば、たとえレールから外れることがあったとしても、起動修正を図るはずだ。だというのにこの列車は、道無き道をでたらめに突き進んでいる。少なくとも、そんなふうに見える。そう、まるで……何かを失くしてしまったかのように。


列車の窓を、景色が流れていく。


もしかしたら。

もう、意味なんてないのかもしれない。利用者がいなくなって、独りになった列車は……壊れて、線路を踏み外してしまった列車は、今もなお、あてもなく彷徨っているだけなのかもしれない。

それは、なんだかとてもしっくりきて、同時に、酷く悲しく感じた。



この列車は、どこへ行くのだろうか。


きっと、誰も答えは知らない。


お題【電車】

…………電車?

気付いたら、列車になってました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ