「蛇行列車」
お題【電車】のワンドロで書いた作品です。
線路は、砂漠をまっすぐに伸びている。が、列車はそんなことお構い無しに、砂の海を思うままに走っている。
走っているのは、もう随分と古い列車だ。踏みつけた岩石のせいで、車輪はガタガタになっていて、深い緑色の塗装が残る車体は錆や砂で赤茶け、おそらく真鍮色だった車輪も、今ではすっかりくすんでしまっている。
それでも、列車は走り続ける。
噂には聞いたことがあった。砂漠を走る無人列車がある、と。だれが、いつ、なぜ造ったものなのか。そして、なぜ今も動いているのか。それらは一切わからない。ただ、列車は今も走り続けている。
揺れる車体に身を委ね、遠い過去に思いを馳せる。この列車も、それがいつかはわからないが、かつて、誰かに造られたものなのだろう。きっとそのときには、何かの目的があって造られたはずだ。それは、どこかに誰かを乗せて行くためか、あるいは、何かを運ぶためだったのかもしれない。
列車が、ガタゴトと揺れる。
なぜ、無人となった今でも、列車は動き続けているのか。それは、列車が無人制御だとか、エネルギーを生み出す機関が備わっているとか、きっとそんな理由だろう。そこを疑問には思わない。
だが……列車はなぜ、線路の上を走っていないのだろう。列車が自動操縦であるならば、たとえレールから外れることがあったとしても、起動修正を図るはずだ。だというのにこの列車は、道無き道をでたらめに突き進んでいる。少なくとも、そんなふうに見える。そう、まるで……何かを失くしてしまったかのように。
列車の窓を、景色が流れていく。
もしかしたら。
もう、意味なんてないのかもしれない。利用者がいなくなって、独りになった列車は……壊れて、線路を踏み外してしまった列車は、今もなお、あてもなく彷徨っているだけなのかもしれない。
それは、なんだかとてもしっくりきて、同時に、酷く悲しく感じた。
この列車は、どこへ行くのだろうか。
きっと、誰も答えは知らない。
お題【電車】
…………電車?
気付いたら、列車になってました。