部活動記録009〈ハートドロップの休日〉
「光。依頼って届いてる?」
ノートを確認して、
「えーっと・・・四件来ますよ。」
渡しながら言った。
「そんなに溜まってたんだね。でも影っち、休日に入る前に確認してけど一件だったよ。」
「人気あるから土日関係なく依頼が殺到してるんですよ。ね、先輩❤」
コロンが隣に座って来た。
「ぶーー。」
ジト目で光がこっちを見ている。
「ん?どうした、光?」
コーヒーをこぼれそうなくらいかき混ぜて、
「別にずるいなんて思ってませんよ。」
一気に飲み干してしまった。
「そこまでいってないが・・・・」
「・・・・・おいしい」
うつりがほっこりした顔を見せたが、すぐにいつもの無表情になってしまった。
「マイペースですね。で、どれから行きますか?」
「んー、四件もあるから、俺と充。光、鹿島、コロンに分かれて解決していこう。」
コロンがプラカードを出しながら、
「ちょっと待った!」
「そんなのどこから出したんですか?」
「・・・このかばん」
大きいボストンバックを出した。
中には、たくさんのプラカードがあった。
「なになに?『おなか減ったよ!』『しずカニ!』とか色々あるね。なんで?」
「面白くないですか?」
「まあまあ面白いけど・・・」
珍しく充がうなっていた。
「何が不満なんだ?」
「私とうつりはみんなと関わりがあんまりないから、みんなと一緒に動きたいなって思います。」
「・・・・同意」
肩を組んでピースしてきた。
「でも、あまり時間がないんだよなー」
「影君、まだ四件なんですし大丈夫ですよ。私たちだけのころなんて、最大十六件だったじゃないですか。」
「十六!?」
「はい。私が六件で影君が十件に分けて三日間で片づけました。」
「先輩すごい❤」
右腕に飛んできた。
「やめろよコロン。」
ほっぺを押すものの中々離れない。
「えへへ~」
すりすりしてきた。かわいい。
「もう、離れなさい!」
間に無理やり腕を入れて離れた。
「ありがと。光。」
「別にこのくらい・・・」
そっぽを向きながら言った。
「影っちってなんで【フレア】があんのにわからないんだろう。」
「・・・鈍感すぎ」
「ん?なんか言ったか?」
「言ってないですよきっと。私おなか減っちゃいました。一緒に購買に行きましょ❤」
そう言って部室を出ていった。
「ちょっと、待ちなさい!」
続いて光も出ていった。
「・・・・光さん・・・いいのかな?」
「早く言わないとコロンっちに先越されるんじゃ・・・」
「・・・・コロンが本気になったらきっと負けない。」
そんなこんなで溜まっていた依頼も解決し、
大きなイベントもすべて終えようとしている十一月。
最後のイベント。
紅蘭学園の学園祭『紅学祭』が幕を開ける。
♢♢♢
「『紅学祭』何出すの?」
プリントを見ながら充が話を切り出した。
「去年は先着一名、計三名限定で『最高相談室』をやった。」
「今年は休憩室にでもしましょう。人数も多いので。」
「そうだなー。そうするか。」
「ダメーー!」
テーブルをたたくと同時に言った。
「なんで休憩室なんですか?せっかく五人もいるんですよ!?」
「うちの場合、できることは相談室か休憩室あたりだな。」
「なんで~~!」
泣きながらじたばたしている。
「せっかくの『紅学祭』なんですよ?何かやらなくちゃ。」
「まだ結束力が足りないし、二年連続はいけないよ。」
「みんなだったら何でもできるよ!」
「まず、瀬川さんは紅学祭が何かわかってるんですか?」
「大規模の学祭なんじゃないんですか?」
「はっずれー。紅学祭は市の手厚い援助のもと行われる一種のマーケティングの場でもある。多くの企業が見込んだ部活のスポンサーとなって、本来の学祭とともに企業の試作品を試している場なんだよ。ここから売れていった大手企業も多くて、影では登竜門とも呼ばれててそれから、」
「ああ、もういいです!頭が破裂寸前!助けてせんぱーい!」
俺の方に援助を求めてきたが、いつものお返しに、
「それから、充の親は大手企業の社長さんで、ここからてっぺんまで上り詰めた第一人者で、その人からの発信によりこの様な大賑わいが起きていて、これによって動くお金はうん千万円とも言われていて・・・」
「影君、もう瀬川さん死んじゃってるよ」
光が椅子に座って白くなりかけているコロンを指さした。
「もうまっしろです。先輩ひどすぎますよ」
泣きながらつぶやいている。
「悪かったよコロン。俺が悪かった。いつものお返しにやっただけだ。」
「なら、もっとやってくださいよ、影君」
「光は俺を最低人間に仕立て上げたいのか?」
「そうじゃないですけど」
「とにかく悪かったな、コロン。」
「なら、今度デートしてください❤」
と、言って遊園地のチケットを差し出してきた。
「ここに行きましょ❤二人っきりで」
「でも、部活あるし、明日だし。」
「あした!?」
光がチケットを凝視した。
「おー、この日って確か大きいパレードがある日じゃなかった?」
「青柳先輩よくご存じで、」
「ここのパレードはうちの主催だし」
「ほんとだ、『主催、兎桜』ってある。」
「兎桜ってあの!?」
『兎桜』は、主にゲームを中心としてて、平均五百万本売れているらしい。
「あそこの息子が、青柳先輩なんて・・・嘘ですよね?」
「ほんとだよ。社長の名前調べてみてよ。」
コロンの画面には、『青柳 浩三』とあった。
「本当だったんですね。じゃあ大金持ち?」
「お小遣いはもらってるけど、みんなと同じだよ。」
「いくらなんですか?」
「月三千円だよ。」
「うん、普通だな。」
「それじゃあ意味ないじゃないですか。」
「いや。困ったときは全力で援助が入ってくるからいいこと尽くしだよ。」
充がふんぞり返っている。
「・・・・これ買って、青柳先輩?」
「そんなにかわいくいっても買わないよ、瀬川っち」
急接近してコロンが
「・・・ダメ?」
キラキラ光線を出しながら言った。
「しょうがないな」
ほしいモノの値段を見て驚愕してた。
「七万!?さすがにダメ!」
「ぶぅー」と言って戻った。
「影っちもせっかくなんだから行ってみたら?依頼なら今日中に終わらせればいいし」
「そうですよ!青柳先輩もこう言ってるんですから」
いつも調子で言い寄ってきた。
「いけません!」
光が声を荒げた。
「文化祭のこともありますし、ダメ、絶対」
「なんで片言なんだ?」
「そこはどうでもいいんです」
「あれれ~西木戸先輩やきもちですか?」
「そ、そ、そんなんじゃないわよ!」
またいつもの口喧嘩が始まった。
「なんでいつもいつもそういう勘違いをするのですか!」
「お顔が真っ赤っかなんですもん」
即座に顔を手で覆い隠した
「いいですか影君!なにがなんでもだめですよ!」
「わかったよ」
「えぇ~せっかく買ったんですよ?」
「諦めてください」
「影っち、この依頼解決の参考に行って来たら?」
「ん?『デートスポットの選び方を教えてほしい』か、確かにいいな」
「ほんとですか!やったーー!」
「・・・おめでとう」
うつりが静かに拍手してた。
「じゃあ先輩、明日の十時に駅前集合で」
そう言ってコロンはさっそうと帰っていった。
「なんであんなにはしゃいでいたんだ?」
「影っち、本気じゃないよね?」
「・・・・何がだ?」
雰囲気が急に悪くなってしまった。
何かやらかしてしまったのか?
「ここまでくるとなんだかかわいそうになってくるわ、鹿島さん」
「・・・サイテー」
「うんうん」
「え、ちょ、待って。何がまずいんだ?」
「影っちの見えてるオーラには何にも書いてないんですか?」
みんなの目線が憐みの目線になった。
全く気付いてなかったようだ。
このときは




