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ダスト  作者: るりはる
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部活動記録007〈消された犯罪者への対抗策〉

  〈お前は誰だ?〉

 〈俺の体を使っているのは誰だ?〉

 こんな言葉が頭の中に聞こえた。

 〈偽騰影を使っていいのは俺だけだ〉

「何を言っている?偽騰影は僕だ。使うってどういうことだ?」

 相手の姿が分からない

 〈お前は偽物。それだけのことだ。〉

「僕の何が分かるんだ!偽物はお前の方だ!」

 〈では、お前は五歳までのことを覚えているか?〉

 どういうことだ?

 〈俺は覚えている。お前が忘れている。いや、忘れた(・・・)記憶をな〉

 そう言い残し消えた。

 同時に目を覚ました。

 僕は学校の保健室にいた。

 隣には光、鹿島、コロンがいた。

 まだ目は覚めていないようです。

「・・・・はい、けがなどはしていないのでご安心してください。・・・はい、わかりました。それでは着きましたら保健室まで来てください。」

 先生が電話をしていた。

 相手は保護者だろう。

「お、起きたか偽騰。痛みはないか?今お前の保護者に電話したところなんだ。すぐに向かうとのことだ。」

「痛みはないです・・・えっ!?香也さんにですか!?」

「ああ、そうだが。なんかまずかったか?」

「まずいですよ!」

「聞こえたのが終わり頃だったからもうすぐ・・・・」

 ガラッ!

 もう来ちゃった

「影ぃ~~~!大丈夫~~~!心配で急いで来たよ~~~」

 泣きながら横になっている僕を強く抱きしめてきた

「ちょっ、ちょっと先生いるし苦しいから離してよ姉さん(・・・)!」

「私のことはいいので続けてください。最近一匹狼みたいになっているので思いっきりやってあげてください。」

 にやけながら言った。

「もちろん!何ならご一緒にしますか?」

 そう言いながらも隙間も与えない程に抱きしめた。

「隙間がないんで遠慮します。」

 隙間があったら来てるんかいあんた。

「もともとさせるつもりないですけどね。うふふ❤」

 そろそろ息がきついかも・・・・

「いい加減離してやっててください。死にますよ?」

「そうですね。死んじゃったら元もこうもないですよね。あとはお家でします。」

 潔いがまだやるんだ。

「影ちゃんは何で倒れたんですか?」

「私にもわかりません。外傷はなく、呼吸が荒くなっていたのを顧問の宮野先生とクラスメイトの充君が一緒に連れてきてくれたんです。二人に聞いても何があったか覚えていない(・・・・・・)と言ってました。」

「怪奇現象?ポルターガイスト?ですか!?」

 言い忘れたが、香也さんは超常現象を研究しており、昨年ある研究で世界的に注目を浴びた。

 研究内容は『超能力を持つ人間の思考判断及び共通している環境』。

 題材はもちろん僕たち【ダスト】を持った五人の子供たち。

 世界的に問題視されている【ダスト】、日本にしかいないと言われているが世界中の学者がいま最も解決したい問題。

 聞いた話だけど、優太さんと知り合って詳しいことを聞き自分でさらに研究した。

「どうなの影ちゃん?何か覚えてる?」

 心配そうに聞いてくる。

「いや、全く。目を覚ましたらここにいたんだ。ただ、夢で自分が話しかけてきたんだ。『お前に五歳までの記憶があるか』『俺の体を使うな』って」

 震えが止まらなかった

 止めたくても止めれなかった

 その時、いつもとは違う優しく抱きしめてくれた

「安心して。大丈夫。影ちゃんは一人だけだから。わざわざ昔のことを思い出さなくてもいいよ。」

 初めて家族の温もりを感じられた気がした。

「偽騰君、一つだけ言いたいことがある。」

「なんですか?」

 先生は僕の肩をつかんで、

「家族に愛情を注がないなんてことはないはずだ。きっと、初めて愛情を感じたかもしれんがそれは忘れているだけだ。詳しい家庭事情を知っているわけじゃない。だけど、思い出す日がきっと来るから、その時は話してくれよな。」

 親がいないから、先生が親みたいなところがある。

 そんな境遇だから言葉の一つ一つが心に響く。

 この学園の先生はいい人ばかり。

 生徒でなく、人間としてみているように思えてくる。

「はい、話します。」

 背中に飛びついて、

「私にも話してね❤」

 温かい人に囲まれた僕は幸せだな。

 そんな生暖かいことを考えていた。

 だから僕の境遇を忘れていた。

 __________________________

 その陰では優太が走っていた。

 森の中を息切れしながら走っていた。

 ついた先は前、影たちが来たペンションだった。

 中には三人ほどいた。

 そこには宮野先生もいた。

 おそいよ優太。」

「優君!もう少しで始まってたよ!」

「ごめんごめん。で、急にどうした?」

 北条琴音(ほうじょうことね)。あの北条家の末裔らしい。

 もう一人は僕の父、瀬川浩司。

 このチームの初期からいた人だった。

 ちなみにコロンも入っている。

「優太ご苦労。集まってもらったのはほかでもない、【撃退】がやってくる。もう少しでこの町に着くそうだ。」

 空気がピリピリし始めた。

「嘘・・・」

「本当ならきっとうちの学園に来ますよね。」

「おそらく」

 宮野の目が変わった。

「だが、一種のチャンスかもしれん。」

「どういうこと父さん?」

「きっと恐れているのは【フレア】をつぶしに来るだろう。そこを守り切れたら」

「無理に決まってるだろう!コロンもいるんだ。一人だけならまだしも、ほかにも二人もいる。」

「学園に近づけるだけでも怖いのに、守るのは不可能です。」

「そうです!宮ちゃんが言ってる通りです。」

 こんな討論が続いてる中に一人入っていった。

「お父さんもお兄ちゃんも何言ってるの?」

 そこにいたのはコロンだった。

「私の【ルート】を使えば一発よ。」 

 父さんが聞いた。

「どう使うんだ?」

「あいつが恐れる噂を流せばいいのよ。」

「あいつは恐怖心をとられたのを忘れたのか!できないに決まっている。」

 優太が大きく、そして厳しく言った。

「【消失】によって奪われたことを聞いただろう。だからあんな非人道的なことができるんだ。」

 今から十三年前、この町で『現代の本能寺の変』と呼ばれる、〈紅蘭大火災〉が起こった。

 犯人は神谷信哉と分かっているが、当時の【ルート】の持ち主によって自分がやったことになって、死刑が決まって次の日に独房内で病死した。

 原因はもちろん【ダスト】だが、世の中では急性心不全と判断された。

「奴には向かうと死が同時に迫ってくる。戦うことは避けたい。」

「いろいろ考えて、学んだ!しっかり注意して戦えるよ!」

「そういう問題じゃない!死より恐ろしいんだ。行かせるわけない。」

 優太が強く言い放った。

 その顔は今までに見せてきた優しい顔でわなかった。

「わかった。でも、私も先輩を助けたい!救いたいの!」

 涙目のコロン。

 その奥には強い思いが見えた。

 その思いにみんなが納得した。

「じゃあ、作戦を練るか。コロンも一緒に。」

 その言葉にコロンの表情が明るくなったのと同時に涙があふれた。

 嗚咽で聞き取れなかったが「ありがとう」と言ったと思う。

「いい作戦あるのいるか?」

「思いついたんだけど」

 宮野先生が言った。

「紅蘭学園の先生方は【ダスト】関係のことは私が仕切っているし、緊急時の対処も任されている。だから来る日を三日前までに予測出来たらその日を休校にできたら防げるはずよ。」

「意味がないと思う。奴なら直接家に行く可能性がある。優太、お前の家に止めてあげなさい。」

「いいけど、紅蘭から結構離れているんだ。」

 解決方法が出るものの、現実問題無理が生じてしまう。

「なら、私の家はどうですか?」

 コロンがこう言った。

「それは教師として許可できないぞ。」

 宮野先生が当たり前に口をはさんだ。

「それ以外にいい方法があるんですか?これが最善策です。」

「彼氏彼女の関係ならまだしも偽騰とはそうゆう関係でないだろう。」

「先生のお家は先輩が襲われそうで怖いです。」

「私だって人を見て襲う。生徒を絶対に襲わない。」 

 自信満々に言った。

「じゃあ、俺だったら襲うのか?」

 優太が聞いた

「かもな。」

 横目で言った。 

「こんな感じだから俺もコロンに賛成だ。あんまり乗り気になれないが。」

「優太がそう思えるほど奥手なのか偽騰君は?」

「おじさん、相当の奥手です。考えられないほどの。」

 少しいやらしい話を父さんと宮野先生がしているところをコロンがはたく。

「父親に何をしてる!」

「先生よ!叩いていいと思っているの!?」

「そんなことを話してたら叩きたくなるよ!」

 コロンが起こって言った。

「コロンは偽騰という男が好きなのか?」

 父が聞いた。

 コロンは顔を真っ赤にした。

 みんな気が付いてにやけた。俺も例外じゃない。

「それならいいわよ。西木戸より早く手に入れなさい。」

 宮野先生が肩をたたく。

 なんだか趣旨が違う気がする。

「わかりました!」

 元気に返事をした。

 ちょうどそのころ影は黒いオーラを放つ男に驚愕していた。  

 蛇ににらまれたカエルのように


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