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ダスト  作者: るりはる
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部活動記録003 〈オーラの秘密〉

 相談室だが、この学校のルールの部活動日数を越えなければ廃部になってしまうから土日でも部活はある。

 でも、基本相談なんて来ない。

 光はラクロス部が忙しいらしく今日は二人だ。

「そういえばさ」

「どうした充?サークルのことで何かあったか?」

「いやそうじゃなくて」

 充はこっち向きながら何か考え事をしているようだ。

「影のオーラが見えることにまだ突っ込んでないなーって思って。」

 きいてみたら今更なことだった。

 だが、言われればそうだ。この機会に話してもいいか。

「なら教えてやるよ。」

「サンキュー影。それでこそ影だね。」

 なんかイラっときたがそれをこらえて説明することにした。

「まず、いつからオーラが見え始めたかって知ってるか?」

 それに対し充は

「確か小さい頃の記憶の代わりに的な感じだよね。」

「まぁそうだな。詳しく言うと五歳の冬あたりだな。その頃はまだこっちに来てなくて確か引っ越しのちょっと前だったはずだ。」

「その時の記憶って全くないの?」

「全くではない。オーラにつながりそうな記憶だけがないと思うんだ。家の形、当時好きだったものとかはおぼえてるから」

 だが、肝心な住んでた場所は覚えていない。

 母親は交通事故で亡くなって、父親は離婚で別居、妹がいたが父親に引き取られ今、頼れる人はいない。

「オーラってどんな感じで見えるの?」

「翼が生えてるみたいな感じだな。心がボロボロだったら翼もボロボロ。悲しい気持ちだったら色は紫色、怒ってたら朱色って感じだ。」

 聞いていた充はイマイチわかってない様子だった。

 どうしたもんかと考えていたところに扉が開いた。

「よう偽騰。ん?青柳もいたのか・・・・まぁいいか。今って依頼とか仕事ってないだろ?ちょっときてほしいとことがある。何にも聞かずについて来い。」

 急いでる様子で強引に僕の腕を強引に引っ張ってどこかに連れてった。

 後ろから充もついてきた。

 三人はバスに乗り隣町まで来てしまった。

「これっていいんですか?教師が生徒を部活中に校区外に連れてきても。うちの教頭ってそういうのにめちゃめちゃ厳しいじゃないですか。」

 そういうと不気味に先生は笑い出した。

 毒入りのキノコスープとか、いろいろな死体が入ったドリンクが出てきそうだ。

「生徒会の力、もとい援助があってな。」

「生徒会の力を借りてまで何を?」

 僕に言ってきたから多分恋愛関係と思われるがわざわざ生徒に聞くはずがない。

「偽騰ってさーなんかオーラとかいうものが見えるんだっけ?」

「はい。視覚的にとらえることができるんです。」

「それって具体的には?」

 それについて妙に熱心な先生。ここまで熱心な姿は見たことがない。

「恋愛関係です。嫉妬とか恨みとかです。」

 先生の顔つきががらりと変わった。

 ナンパ前の女子高生から格ゲーの最強キャラみたいになった。

「それだけか?」 

「えっ?」

 怖かった。恐怖にかられた。充も関係ないがおびえていた。

「ほんとうにそれだけか?恋愛関係だけか?」

 そこまでして問いただす理由が分からなかった。

 だが、絶対に嘘を言ってはいけない。

 言える状況ではないことがすぐわかる。

「緊迫した中だったらどんな気持ちも見えてしまいます。」

 先生は顔を緩めてくれた。

 それと同時に目的地に着いたようだ。

 少し歩いたところの古民家のような場所に着いた。

 ためらいもなく入った先生に続いた。

「元気やってた、優太?」

「ヤッホー宮野。元気元気だよ。」

「こっちは偽騰影と青柳充、私の教え子だ。」

 軽い会釈をした後優太さんが口を開いた。

「どっちが【ダスト】の持ち主?」

「偽騰だ。こいつを少し見てくれないか?」

 疑問が二つ三つ出てきた。

「先生に優太さんも、その【ダスト】ってなんですか?」

「【ダスト】ってのは君の能力の総称かな?

 名前の由来は今から四十年前からあったみたいだ。そしてその実態は謎のことが八割ほどある。人からオーラが見えるその色、形、大きさから相手の感情が読めてしまうことが一番わかりやすく、一番早く解明されたもの、それが君の能力だよ。」

「この能力はそんな前からあったんだ。」

「あぁ、それらの能力の発症者は全員口をそろえてあってよかったと言っているが、それと裏腹に必ず心を壊しているのと記憶を一部失っているという共通点がある。思い当たる節があるんじゃないか?」

 全くそうだ。記憶喪失はもちろん、光に初めて声をかけたときは引きこもり直前だったからだ。

「嫌なほどありますね。」

 話してるのがつらくなっていた。

 笑いながら話しているのがとても不思議だった。

 優太さんも気を使って笑ってくれた。

 なんだ気分が悪いな、そんなことを思っていると急に視界が揺れ、真っ暗になった。

 バタン。

 なんだろう、頭が痛い。

 とても寒い。

 みんなの声が聞こえる。

 顔が近いはずなのに、声を出しているのに全然はっきり聞こえない。

 充の顔が見たことないくらい不安な顔になってる。

 宮野先生も心配してくれてる。

「・・・ぁぁ、ぅぅ・・・」

 あれ、声が出ない。

 うまくしゃべれない。

「おい、偽騰?返事しろって、悪い冗談だぞ。もう驚いたからいいだろ!起きろ!」

 先生の涙が頬に当たる。柄でもないですよ先生、調子狂いますよ。

「影!さっさと起きろ!何寝てんのさ。」

 ゆすっているところを止められていた。

 そこから僕は気を失って何も覚えてない。

「・・・・っ。あぁ、痛。あれ?ここは?」

「ここは医務室だよ。影君♪」

 そう言ってくれたのはここの医務担当及び副代表の高野彩絵さん。

 優太さんが一番信頼のおける人だそうだ。

「体調はどう?変な感じある?」

「いいえ、問題ないです。」

 ここに運ばれてきたことからその後の様子まで全部話してくれた。

「影君はここに運ばれてから体温が急激に下がり、時々痙攣をおこしていたわ。」

「これも能力者の共通の症状ですか?」

 そう聞くと高野さんは表情を曇らせた。

「まぁそうなんだが、症状が重すぎるんだ。基本この症状は長くても三十分くらいなんだが影君は二時間も続いていたんだ。なんか重い持病でもあるの?」

 そんなものはない。

 じゃあなぜこんなことがあるのかできる限り考えたが一つしかなかった。

 それは死だ。

 優太さんは能力者の末路について少し話してくれたが、若いうちにみんななくなっているといっていた。

「死ぬとか考えていないよね?まだ死にはしないよ。死んでしまうときは体温は下がらずに上がっていくんだ。これは能力を持ってしまい、脳の負担が大きすぎるため異常を起こしてしまうんだ。だから大丈夫だよ。」

 その言葉を聞いて安心したのと同時に眠りについてしまった。

 この日は高野さんが起こしてくれて大きな情報をつかんで家に帰った。

 ♢ ♢ ♢

 その頃光は

「すみません。遅くなりました。ってあれ?いない。」

 部室には影の代わりに置手紙が2枚あった。

 1枚は影から、もう1枚は充からだった。

「光へ

 宮野先生に呼ばれたから一緒に行ってる。

 きっと遅くなるから先に帰っててくれて

 構わない。詳しいことは明日話す。

 影より」

 影君の文章からはいつものように業務連絡

 感があった。

「光っちへ

 ごめんごめん。影が行っちゃったから一

 緒に行くことにしたよ。

 充より♪」

 光は軽い。

「~~!影君も影君だけど青柳君も!どうして連絡の一つもくれないのよ!」

 この時、光の中で何かが変わった、これがスイッチが変わった瞬間だった。

「いつもいつも影は芯が太そうなのに周りに流されやすい性格なんだから!あ~これじゃあ・・・・!!」

 顔を赤くし、だれもいないはずの部屋で周りを見渡す。

 だが、扉には充がいた。

「ヤッホー!どんな顔してるのさ。お猿さんのお尻みたい。」

「青柳さん!いるならなんか言ってください!それで影君は!?」

「先に帰ったよ。旅先で体調悪くして休んでるはず。」

 先ほどまで真っ赤だった顔が真っ青になっている。

「今すぐ行かないと。」

「光っち?何言ってるの?無理に決まってるじゃん。」

 そう言ってる間に、

「お父様。今日は遅くなります。ええ、はい。そうです。影君のお見舞いです。」

 電話が終わったようだ。

 相手はお父さんらしい。

「では行きましょう!」

 そう言って全力で走っていった。

 そして、

「影君!大丈夫ですか?青柳さんから聞いて走ってきましたよ。リンゴでも食べます?それともおかゆ作りましょうか?」

「ありがとう。でも大丈夫だよ。すっかり良くなったよ。

「あら、光ちゃん元気してた?いつも悪いね~影が風邪の時いっつも来てもらって。何か食べる?おばさん頑張っちゃうわよ。あら?充君もいらっしゃい。よかったねー影。今回は二人よ♪」

「母さんやめてよ。」

 微笑ましい光景だ。

 小一時間ほど喋って解散した。

 次の日の登校に影は光と仲良く歩いていた。

 高校生の情報伝達力は恐ろしく、瞬く間に広まっていった。

 教室に入った途端、二人はおびえるウサギのようだった。

 見たことのない表情で止めようと思わずに笑いながら僕は見ていた。

「充!見てないで助けろ!」

 揉みくちゃになっている影の表情はまんざらでもなかった。

 そんな珍しい風景はもう見れないだろう。

 そう、影が初めてクラスに認識され、クラスの中心の輪に入れた瞬間だった。

 孤独、不安、嫌悪感に包まれ周りに拒絶されてしまい、自らも独立を選んでしまう。

 その彼が、その影だからこそ何気ない普通の時間の使い方が大きなイベント同然だ。

 こんなことを言っているが、俺と影は中学からの付き合い。たったの五年、大きく見えてしまうが影が味わってきた地獄は今までの十一年間。

 僕が付き合ってきた倍の時間、人との関わり方を知らない状態で放されてしまった。

 愛、その大切な感情を身につけてない中で生きてきた。だからこそ影は周りから救いの手を伸ばしてやるべき存在。

 最も尊い存在だ。

 そんなことを考え、涙をこらえながらスマホのシャッターを押した。

 高校生には重い話だ。

 部外者の俺には何もできないかもしれない。

 でも、何かしてやりたい。

 そう思っているのが俺と光っちなんだよ。

 だから俺があの空間に邪魔をするべきではなかった。

 やめろって言われても俺は影におせっかいを焼き、一緒に戦うと決めた。

 光っちに詳しいことを聞いて、あの部活に入ってそう誓った。

【ダスト】がなくなるまで。


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