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ダスト  作者: るりはる
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 部活動記録002〈黒き愛〉

 紅蘭高校から噂の幽霊トンネルは結構な距離があり、勢いよく飛び出した僕はほかの二人に抜かされていった。

「影君大丈夫ですか?」

 ひかりが心配そうに声をかけてくれる。

「飛び出した奴が最初にへばるなよ。」

 笑いながら言ってくる。

「当たり前だろ!」

 充はサッカー部、光はラクロス部の得点頭と聞いたことがある。

 そんな二人に比べて僕は無所属のインドアな人間だ。

「影!もうすぐだよ。」

「着いたら物陰に隠れてろ。絶対見つ駆らないようにしろ。」

「わかりました。」

 そう言った後、草影に隠れ息をひそめた。

 しばらくするとトンネルの中から二人組が出てきた。

「あれが彼女さんと浮気相手ですか?」

「きっとそうだ。もうちょっと近づいてみよう。」

 近づいたら二人のオーラと話し声が聞こえてくる。

「・・・・・と、いうことなんだ。ほんとむかつくよね。あいつの絶望していく顔を見てみたいわ。」

「そうだな香織。自分の行動で愛しの彼女を失っちまったんだから笑いもんだよ。」

 彼はB組の川岸というらしい。

 彼は成績が良く、人望も厚いクラスの中心の人物だ。

 なぜか彼女の香織からは悲しみと切なさのオーラが見える。

 これが何を意味しているのか分からなかった。

「ところで影君。なぜここに現れるって分かったの?」

「それは、光が情報集めでのことを話していた内容にヒントがあったんだ。」

 光はなんのことだかわかんないようだった。

「光は景子って人と話したときに『話すつもりもない』って言ったんだろ?このトンネルはこの町で一番人通りがなく、香織はここを集まり場所にしてると思ったのと、香織に関わりたくない女子が大半だって聞いたことがあってな。」

 推理を聞いている二人は目を輝かせながら聞いているが、

「そんな人だったら男子も関わりたくないと思うんですがそこらへんはどうなんでしょうか?」

「男子の評判はこの学校一、二番を争うくらいの人気なんだ。」

「そこまで頭の回転が速いとさすが影って感じだね。」

「ありがとな。じゃあ、そろそろ行くぞ。」

 そういって全員のオーラが濃く、はっきりとなった。

 草陰から出て、二人に向かって走った。

「だ、誰!?」

「お前が佐藤の彼女だな。」

「そうだけど、あんたたちは?」

「恋愛解決サークル〈ハートドロップ〉だ。詳しいことは佐藤から聞いた。もうすぐ佐藤も来るはずだ。」

 そういうと彼女は下を向き舌打ちをした。「あいつ、面倒なことにして。で、私に何の用?

「佐藤に冷たく当たってるわけを聞かせてもらいに来た。」

 そういうと充が驚きながら

「影!?さすがにダイレクトすぎだろ?」 

 それを聞いた光が

「影君はいつもこんな感じです。」 

 そんな二人のことなんか気にせずに続けた。

「いいから早く聞かせてもらうぞ!」

 指を差しながら言ったら想像してない回答が来た。

「いいわよ。答えてあげるわ。全部あいつが悪いのよ?私を思ってくれるのは嬉しいけど、束縛主義だったの。そんな相手にいつも平常心で相手できると思う?私には無理。」

 そんな事情だったこととは思わなかった。

 どうして依頼は面倒なものが多いのか。

 その謎を一度解決してみたいものだ。無理だと思うが。

 そう思ったところに佐藤が来た。

「全員そろった。これから俺たちと当人たちのこじれを直すとともに、想いの内を明かしてもらう。佐藤から、香織さんとこれからどうしたい?」

「元の関係、恋人になりたい。そんな男じゃなく僕のとこらに来てほしい。」

 その言葉に川岸が反応した。

「あん?今なんつった?てめぇよりいい男だ。彼女を束縛してる奴が。」

「束縛?どういうことだ!そんなのデタラメに決まってる。」

「あんた自覚なかったの?だったらなおさら付き合えない。」

 疑問に思っていたところに光が聞いた。

「いったいどんなことを佐藤さんはしたんですか?」

 香織さんは冷静に話してくれた。

「登校時は連絡なしで家の前にいるし、学校でも休み時間には欠かさず教室に来るし、ご飯だって何にも言わずに食べにくるとかいろいろよ。」

 僕たちは全員引いたと思う。

 ここまでとは思はなかった。

「それが何で悪いんだ?ずっといたい気持ちはしょうがないだろ。」

「それが嫌なんだよ!なんでわかってくれないの?もうやだ、付き合え切れない。さよなら。」

 そう言い彼女はこの場を去っていった。

 今回の依頼結果は、佐藤は彼女と別れ彼女は川岸と付き合っている。一応依頼完了だ。

 そして部室の戻り反省会をした。

「今回は変な雰囲気だったな。終わりも後味悪いし。」

「しょうがないよ。影も光っちも良かったしょ。」 

「そうですよ。それじゃあいつものことをやりましょう影君。」

「そうだな。」

 いつものこととは継続観察のことだ。

「光と充は香織を、俺は佐藤をやる。」

「いいけど、継続観察って何やるの?」

「それは私が教えますので安心してください青柳さん。」

「ありがと光っち。だけどもう青柳さんってやめてくれない?なんだか落ち着かなくて。」

 そういう充に僕は言った。

「諦めろ充。決めたら徹底して変えないのが光だ。じゃあそっちは任せた。」

「お互い頑張りましょうね。」

「影、ファイトー」

「応援ならもう少し気持ちを入れろ。」

 そんなやり取りをした後、僕は報告をしに第二音楽室と生徒会室に、光と充は香織のもとに分かれていった。

 なぜ第二音楽室かというとこのサークルの顧問の宮野先生が基本的にいるからだ。

 その音楽室は二階校舎の一番奥にあり、オーラからは気味が悪く居心地が最悪な場所だから一分一秒でも早く消え去りたい場所だ。

「そんなオーラが感じられるときは必ず先生がいると決まっているがなぜか先生からは感じることがないのだ。

「失礼します。宮野先生はいらっしゃいますか?」

 そこには宮野先生と生徒会長の國木田先輩がいた。この二人のコラボは絶対に朗報ではなく悲報が届くに違いない。

「きたか偽騰。依頼完了の報告か?わざわざ顧問にまで大変だな、お疲れさん。先生の体で休むか?」

 この人はバツイチの女性で離婚理由が『性欲モンスターだったから』らしい。

 うちの学校でもこの様に爆発させている。

「冗談はよしてください。依頼完了の報告だけです。あとその性格だから新入生に三か月は相手にされずにおびえられるんですよ?自覚を持ってください。それとどうしてここに國木田先輩がいるのですか?」

 その質問に國木田先輩は微笑みながら答えてくれた。

「それは君たち『ハートドロップ』の今後について一つ二つ条件を出していたんだ。聞きたいかい?」

 嫌な予感しかしないが聞かない事にはいかない。

「ならお願いします。」 

 先輩はニヤニヤしながら口を開いた。

「君たちのサークルに最低でも二か月間は新しい仲間を増やした五人で活動をしてもらうことになった。」

 言っている意味が分からなかった。

「それは最低五人でサークルをするという校則になったから、あと二人は確保しろ。出来なかったらハートドロップをなくすと、いう事ですか?」

「いや違う。」

 そうだとは思ったがあとの二人とはどういう経緯でどのような意図があるのか皆目見当もつかず戸惑っていた。

「じゃあどこから部員が出てくるんですか?いつからサークル活動を共にするんですか?」

「そんなに焦るな。確定ではないから安心しろ。君たち全員と話したいから明日の活動の最初の十分だけもらってもいいかな?」

「それは大丈夫です。時間なら作れますから。」

「ありがとう偽騰影君。それじゃあまたね。

 先生もさようなら、お酒だけは飲みすぎない程度にしてrください。」

 そうしてさっさと消えてしまった。

 そうしたら先生が

「偽騰。新入部員のことどう思う?」

「どうって・・・・」

 何も嫌な考えしか思いつかない。不良を更生させろとか実績を見せろとか、そんなもんしか出ない。

「バッドエンドルート突入しか考えられないですよ。」

「だよな・・・よし!明日先生も部活に出ると決めた。念のため西木戸のスイッチを入れておくんだぞ。わかったか?」 

「わかりました。」

 報告と生徒会との話し合いを約束された僕は佐藤のいる教室に行った。

 佐藤は机にうなだれていた。そのまま見ていたら急に教室を飛び出した。

 後を追ったら佐藤の自宅に着いた。

 家からすぐに出てきた佐藤の右手にはカッターがあった。

 危険を感じた僕は光に連絡を入れつつ佐藤を追った。

 光はすぐに出てくれた。

「もしもし影君?どうしたんですか?」 

「充は一緒か?」

 息が上がっていた。

 冷静でいるべきなのに冷静でいられない。

「一緒ですが、代わりましょうか?」

「頼む!」

「・・・・・どったの?」

「今どこにいる?」

「今は桜坂商店街の中だよ。ちゃんと香織さんを追ってるよ。」 

「そっちに佐藤が向かっている!彼はカッターを持っている。意味わかるよな?」

 すごく焦っている。

 こんな事例は初めてだからだ。今まではここでなんもなく終了していたからだ。

 恋をしてしまった男子の行動が想像の斜め上をいっていた。

「影、それは【ヤンデレ】って言って、そいつの行動は人を殺してしまうこともある危険な状況だ。こんな時こそ深呼吸して、いつも通りやるべきことを一つ一つ迅速につぶしていって。俺はそっちに向かうから今どこにいるの?」

 尊敬できた。そんな危険な状況に立っているのに思考回路が困惑していない。

 誰もが予想していないことのはずだ。

 佐藤は模範生徒で先生からの信頼も厚い奴だったからだ。

 充のアドバイス通りにした。

 まずやることは、

「今は紅蘭駅前だ。そっからマッキュ方向に進んでいる。香織さんに接触をしてすぐ帰宅するように光に言ってくれ。俺もぎりぎりまであとを追う。」

「それでこそ影!任せて。無理だけはするんじゃねぇぞ。」

 そういうと充は電話を切った。

 その直後話し声が聞こえたようでカッターを構えて佐藤が寄ってくる。

「お前らに任せたから、お前らに依頼したから、お前らが失敗したからこうなったんだ。

 責任をもって死んでもらうぞぉーー!」

 そして接近戦となった。

 彼は格闘技をやっているようで、有段所持者だそうだ。

 僕はかわすことが精いっぱいでかすり傷をところどころ負ってしまった。

 そのとき、横からドロップキックを決めた充が目の前に現れた。

「大丈夫か?影」

 佐藤は横に飛ばされ、カッターを手放した。

 その隙にカッターを蹴った。

 そこに警察の人が駆けつけて佐藤は抑えられた。

 この騒動でけがを負ったのは僕だけで済んだが、このことはすぐさま学校に報告され、そして保護者にも知れ渡った。

 今回の反省としては、彼女側の情報が不足している中で動いてしまったことと佐藤の心がどれだけ落ち込んでいたかオーラで見えていなかったこと。

 いや、見ていなかったんだと思う。

 見るのが怖くなった自分がいたことだ。

 その後光から電話があり心配と軽い説教を受け、泣かれてしまった。

 その涙で僕の中の何かに影響を与えるのが分かった。

 今回の継続観察の結果は後日、生徒会長にいうことにして家に帰った。


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