部活動記録015《嵐の後の静けさ》
建物を出ると雨が降っていた。
「ここどこなんだろうな」
「調べてみますね・・・・って充電切れてました」
コロンのやつだけでなく、ほかのみんなのやつも切れていた。
「一日二日じゃないってことだね」
雨の音でかき消されているようだったが、ところどころでみんなの泣いている音が混じってくる。
安堵、緊張、喜び様々な感情が入り乱れていた。
しかしその中でひときわ目立っている感情があった。
・・・・だが、その感情が何なのかなぜだか見えなかった。
薄暗く、複雑な形をした霧がかかっているようだった。
なのに、とてつもなく綺麗だった。
北海道のダイヤモンドダストや、百万ドルの夜景よりも、東北の白神山地よりも、富士山よりも綺麗だった。
「先輩?どこ見てるんですか?」
「あぁ」
つい見とれてしまっていた。
「なんか・・・いつもと違う」
「そうか?別に変わらんと思うが」
そういうと里中が、
「じゃあ確かめますか」
そういうと【炸裂】を使った。
「ちょ、やめr・・・さっきのオーラは何だったんだろう?美しく、派手すぎない。かといってお淑やかすぎない。今まで見たことのないオーラだった。なんのオーラかわからなかった。なぜだ?なんなんだったんだ?もう一回見たいなー」
「なかなか具体的に教えてくれたね」
「だね、鹿島さん」
後ろでクスクス笑っている声がする。
「里中、お前使ったな?」
みんなに一斉に笑われた。なんか腹立つ。
「まだ雨は止まないですね。」
今週末に台風が日本を縦断するとかしないとか。
「・・・走ろう」
うつりが走り出すとコロンと里中も続いた。
追いかけようとした時、背後に不吉な、身に覚えがあるオーラを感じた。
「神谷か」
「お姉さんはお家に帰ってるから早く追いかけなよ。」
「姉さんに何にもしてないよな?」
神谷は鼻で笑い、
「早見教授に傷をつけるなんてそれこそ本当にやってはいけないことだよ」
「その時は本当に許さないからな」
そう言い残して走ってコロンたちを追いかけた。
「そのオーラが分かったときは、終わりが近づいてる証だね。待ってるよ、影」
♦
時が過ぎ、台風も過ぎ去ろうとしてる中、偽騰家では嵐が吹いていた。
「・・・・・何か言うことないの?このお姉ちゃんに」
「遅くなってごめんなさい」
「会いたかったでしょ!!!!」
突っ込みを入れる隙もなく抱き着いた。
「会いたかったのは姉さんでしょ?」
姉さんはふてくされながら
「じゃあ私と会いたくなかったっていうの?」
姉さんの笑顔は反則だ。
言いたくなかったことも言わせてしまう能力を持っているから。
「・・・会いたかった」
出したくない感情だったが、今だけは出してもいいだろう。
甘えてもいいだろう。
家族を感じても、許されるだろう。
そう言い聞かせて姉さんの胸の中で涙をこぼした。
「終わりなんて来させないからね・・・影」
早見の影を抱く力が強くなっていることに影本人は気づいていないようだった。
「でもごめんね、影君。私はいずれあなたの味方から身を引かなくちゃいけなくなるんだ。」
頭上は雲一つない青空だった。
だが、行く先には黒々とした雷雲があり、おどろおどろしい音を響かせている。
青い空、黒い雲、青白く輝く稲妻、逃げ惑う鳥たち、それらが何を意味するかはこの世に二人しかいない。
だが、それは知られてはいけない世界の理に近いものだった。




