国王
「貴殿が勇者殿だな、儂はグランデ王国国王、ルガ・グランデじゃ」
まさに王が座るのにふさわしい絢爛豪華、というか金ぴか悪趣味ともいえるような椅子に座ったおっさんがこの国の王様であった。
王女様に連れられ引き合わされたこの国王、どう贔屓目に見ても何か企んでいる悪そうなやつにしか俺には見えない。
そんな気持ちが表情に出ていたのか、国王の表情もどこかこちらを訝しんでいた。
「いきなりのことで戸惑って居るようであるが、娘から簡単に話を聞いたと思うが、貴殿にはこの国を救ってもらいたい。
そして、そのことで条件があるとのことじゃが、どのような条件か申してみよ」
そういわれ口を開こうとするよりも前に急に頭痛が襲い、ともに頭に声が響いてきた。
”国王に従え、国王に従え、国王に従え、国王にした…”
声の収束とともに頭痛も収まったが、右側、貴族たちが集まっている中で人が倒れる音がした。
途端に国王の声のみが響く静寂な空間が貴族たちの喧騒に包まれる。
倒れた人物、こちらからはよく見えないがローブを着ておりいかにも魔術師といった感じの人物が痙攣しつつ騎士たちによって運び出されていた。
国王が洗脳の魔術でもかけさせようとしたのか国王に目をやると、忌々し気に去りゆくローブの男を見ており、こちらの視線に気づくと慌てたように、
「静まれ、静まるのじゃ、久々の勇者召喚という貴重かつ重要な場にベルノ卿も緊張が張り過ぎたのであろう、さぁ、勇者殿よ、申してみよ」
するとまた頭の中に言葉が響いてきた。
”しくじりおって、こやつの目は侮れぬ、周りの国々をつぶさせるはずが”
シルフィアの時もそうであった、相手を知りたいと思った時に相手の心の声が聴くことができる、
あの時は王女様が凝視する理由を知りたくて心の声を聴いた、ということは王女様は俺がバキバキとカップを割るというさまを楽しみにしていたらしい。
見た目は13、14なのに大人びていると思っていたが実は年相応にいたずらっ子であったようだ。
ちょっとかわいいじゃないか、この野郎。
「勇者殿よ、さぁ申してみよ、もしや、貴殿も緊張に押されておるのか?、異世界人の多くはこのような場は不慣れと聞く、であるなら少し時間を置くが…」
ついつい熟考してしまい、返答しない俺に国王が声をかけてきたが、心の声を聴かなくても魂胆は丸見えである。
企みが失敗したので仕切り直しをしたいのでろう。しかし、
「いえ、いきなりの事態に驚いてしまい、申し訳ありません。条件といいましても、私はこの世界のことをよく知らずそれを教えてもらうこと、と私のいた世界では戦いなど知りませんでしたなので戦い方を教えていただくとある程度の自由を保障してもらいたい」
国王はこの要求に驚くまでもなくゆっくり自分の豊かな口ひげをさすりながら少し考え、
「教えることと戦いの指導はあい分かった、じゃが、ある程度の自由とはどういうことだ」
”自由で幅を持たしてきおったかこやつどういうつもりじゃ”
鋭い眼光で強く観察される。
「例えば今のベルノ卿でしたか?のように私に敵対行為を取ったものの即時排除の容認などです」
いきなり核心を突かれ指すもの国王も動揺の色を隠せないようであった。
「ベルノ卿が貴殿に敵対行為とな、それはどういうことじゃな」
”洗脳魔法がばれたか、いやこやつはランクC、そこまでの能力は持ち合わせておらぬ”
ランクC、人生評価のランクを知っているのか国王の心の声はそういっていた。
「そうです、私に何かしらの魔法を唱えたようでその魔法をスキルで反射した結果倒れられたようです。
勇者の私を害しようとしたということは魔王の手先やもしれません、即刻処分を」
「それは真か、勇者を害そうとはそれはゆゆしき事態、確かに魔王の手先やもしれん。とすると城に魔王の手先が紛れ込んだのやもしれん、背後関係を洗う必要がある。今後も色々と確認を行わなければならない、よし教育のこともある当分の護衛、教育係、判断ができるものをつけよう」
”ランクCのくせに忌々しい、じゃがこれでお目付をつける口実ができた。シルフィアをつけておけばそうそう誰かを手にかけたりはせぬだろう、あとは適当な女騎士をあてがえば…”
自分の言葉が名案とほほ笑む顔は俺にだけ聞こえる心の声のおかげでひどく悪い顔にしか見えなかった。
そろそろ主人公には苦労してもらいたいなぁ
登場スキル
’魔術(闇)’洗脳魔法
相手の深層意識に魔法を込めた言葉を送ることにより相手を洗脳します。
全状態異常無効
全状態以上を無効化
魔法反射
敵対意図のある魔法を自動反射
2016/3/15
洗脳魔法を魔術(闇)の一部ということに変更