8 虫と書いてヤツと呼ぶ
読んでくださってありがとうございます。
『あ~もう今日おれに乗ってたやつ最悪~』
『どうしたん?』
昼下がりの洗い場、疲れたように項垂れる馬が一頭と水を飲む馬が一頭。
『虫がいるのに掃わせてくれないんだよ~』
『うわ。それ最悪』
『だからさ、汗で濡れた顔をさ、ゴシゴシってしてやったの!』
『お、悪い男だね~』
『オカマだけどね・・・・・・。そしたらさ、喜ぶんだよ』
『ああ・・・・・・喜ぶよね』
夏のクラブは虫の宝庫です。暑過ぎるときは出ないのですが、『黄色いの』と呼ばれる虫が馬に集り、それが馬を刺すのです。時に人間も噛まれます。私は去年噛まれた時に、手の指がパンパンに腫れました。まさか刺されているとも思ってなかったので、朝起きて、突然腫れた指に慄き、ネットで調べて、「まさかのリュウマチ?」と内科に慌てて行きました。血液検査はしたもの医師からは違うと思うと言われて、そのままクラブに遊びに行きました。
「あ、黄色いのに刺されたん? 私もこの前なった~」
腫れたと見せた途端に知人がそう言いました。
帰りに虫刺されを買って帰りました。先にクラブに来ていれば・・・・・・。
一週間以上、腫れは収まりませんでした。
とはいえ、虫を必死に払おうとする馬を自由にしていると乗っている人間がかなり危ないです。場所によっては頭を狂ったように振りますし、お尻の上にとまると尻跳ねします。
何匹も来ると、馬を集中させるのも大変です。馬によりますが、集中すると気にしなくなりますし、走ると虫も静かに止まっているだけになるので気にしなくなります。虫よけスプレー(馬用)を振るのですが、効いている気がしません。
そして、黄色いのがいなくなると(私は乗馬クラブ以外ではオーストラリアの川でしかみたことないです)今度は『黒いの』が出てきます。こっちのほうが素早くて、痛いので、要注意です。
見た目はハエなのに、刺すんです。『刺しバエ』というようです。
乗馬をしていると、家では蚊も殺せないマダム達が、バシバシと素手で叩き殺していきます。十匹殺った! とか普通なんです。なんだろう、慣れて凄い・・・・・・。でも家でハエがいても手で叩き殺したりはしませんよ。
そして、夏の暑い時期、顔に頭絡を着けていたり面子という音を拾わないように顔に被せている馬もいるものですから、汗が痒いのでしょうか、人間にこすりつけてくるのです。
「もお~、駄目よ~」
とスリスリしてくるのが可愛いので、汗ふきタオルに甘んじるマダム。
いえ、いいのです。
それも愛~♪ これも愛♪ きっと愛♪
間違っているかもしれません。あれ、これって何かにひっかかるのかしら?
愛は細かいことはこだわらないのです。嫌な人はちゃんと避けますから、大丈夫。愛です。
では『バイバイヒヒーン』。