10 ニンジンだけがおやつじゃない
読んでくださってありがとうございます。今回は餌とおやつについてです。
さて、馬のおやつといえば、やはりニンジンでしょう。え、ニンジンは主食じゃないの? って・・・・・・まぁ上げれば食べるけど、甘いでしょう? 糖分の取り過ぎになっちゃうんですよ。
クラブでは、主食はチモシー、アルファという乾草、ペレットという高栄養の(ドックフードの大きいやつみたいなの)、ヘイキューブという乾草をキューブ状にしたものなんかをその馬によって上げています。栄養価としてはチモシーが一番低いです。怪我なんかをして運動量の減った仔なんかはチモシーしかもらえません。元気が余ってくると馬房の中で暴れたりして、余計怪我をするからなんですが。寂しそうです。
喉を詰まらせたりしたことがある仔や年寄で歯の弱い仔なんかは、ヘイキューブを砕いて、水でふやかしたダボ飼いというものをもらっています。私のよく触っている仔は、乾草をわざわざ水が出てくるウォーターカップというところに浸して、自身でダボもどきを作って食べています。頭がいいなぁと思います。
選手しか乗らないような競技馬は、身体パフォーマンスを上げるために、なんチャラマックスとか(よくわらかないです)食べているようですが、私が触る馬は基本安全第一に皆を乗せてポテポテ走るくらいなので、そんな高栄養のものは与えられません。
どういう基準かはわかりませんが、ご飯の量も馬によって違います。疝痛などをよく起こす仔は(下手すると命に関わるお腹痛)、スムーズにボロを出すために油が入っていたり、活性炭なんかが入っていたり、獣医さんと話しあって厩務が決めているようです。
この辺も、クラブのスタッフでないので、推察とか昔聞いたことなんかを書いています。
馬のおやつといえば、ニンジン。これらは馬を迎えに行くときに「よろしくね~」と上げたり、気分よく乗せてくれたりした時のお礼だったり、ご褒美だったりします。
『ニンジンがないなら襲ってやる!』
と威嚇したり後ろを向いてしまう仔もいるので、私のような怖がりはニンジンは必須です。できれば、どちらも気分よく練習したいじゃないですか。
じゃあニンジン以外は上げないの?
いえいえ、夏場なんかだとスイカ。定番のリンゴや黒糖。大根やキャベツなんかもあげたりします。好き嫌いがある仔もいるので、気に入らないと『こんなもの食えるか』とペッと出されたりします。
ただ夏場に、
「あ、レッスンにいってるのね、じゃあ飼い桶に入れておこう」
と親切のつもりで入れていったら暑くて腐ってた・・・・・・。なんて事件があったりしたので、今はおやつを上げるならニンジンで、と張り紙がしてありました。
馬は、野生だったら『これは毒があるな』とわかるらしいんですが、残念ながら野生とは遠いので、いつもくれている人があげれば口にします。美味しくなければ、出しますが、馬の信頼を裏切りたくないものですね。
春や夏の最初なんかは、クローバーや若草が生えていて、摘んでもっていくととても喜んでくれるので、お金をかけない方法もあります。
もう最近では見ないですが、昔はパンを上げていた人もいます。メジャーではないですが、パンを作る材料に小麦ふすまというものがあります。これは馬が喜びます。クラブでも夏場に水を飲まない馬でも水に混ぜると飲むので、酷暑の盛りには上げています。まぁ、小麦ふすまを食べるなら、パンも食べるよねということです。今は上げている人はみませんけどね。
おやつに関しては、ショックで忘れられない出来事があります。
多分、二年目か三年目の頃です。
私のクラブには、新馬調教というシステムがあります。競馬を引退した仔だったり、他所から来た仔を調教しようというものです。これは乗馬のオプションのようなもので、お金もかかりますが、半年一期をメンバー七人か八人と担当の指導員でクラブに慣れさせようというものなんです。やはり来たばっかりの仔はちいちゃくて、やんちゃで可愛いです。
半年一期ですが、仕上がり具合で更新されます。その頃は大体三期で卒業という感じでした。
私は計三頭の仔に関わりましたが、忘れられないのが二頭目の仔です。
ある日、クラブに行くと、若い指導員が笑いながら聞いてくるのです。
「なすび上げたの、東雲(仮名)さん?」
「は? なすび? え、そんなもの上げるわけないじゃないですか!」
どうも馬の飼い桶に茄子が一本丸ごと入ってたらしいのです。勿論馬は食べませんよ。
「なんてものをあげるの!!」
と私は怒り心頭でしたが、落ち着いてから違う怒りが・・・・・・。
私、馬に茄子をあげるような人間に見えるんだ・・・・・・。かなりショックで、もう七年か八年くらい立つのに、忘れることができません。
おやつに茄子は含まれますか?
いいえ、茄子はおやつではありません・・・・・・。
ちなみにバナナは大好きです。昔聞いた話では、栄養価が高すぎるので、妊娠している馬と病気の馬以外にあげちゃ駄目ということです。
どこまで本当かわかりませんが、それ以来、病気の馬にしか上げないことにしています。妊娠している馬には会ったことがありませんから。
ではこれくらいで、『バイバイヒヒーン』。
もう10話目ですね。なんだか嬉しい☆