①出会い
この作品は、ルルドの風の原点になった話です。
ショートショートの一分で読み切れてしまう内容のものだったのですが、手を加えて、少しだけ長くして見ました。
ポツリポツリ呟くような物語です。
良かったら読んでみてください。
「あの」
震える声でそう言われた俺は、下から突き上げるようにそいつを睨む。
エプロンをぎゅっと握り、足をぶるぶるふるわせたコンビニ店員だった。
タバコを吹かし、俺はいたぶるようにそいつを見上げ、
「何じゃこら」
どすを利かせた声。誰も寄せ付けないように身に付けた、俺なりの防衛策だった。
「そこでタバコを吸われると、他のお客様にご迷惑です。お止め下さい」
「何だこりゃ。何ならこの店、燃やしたろうか」
どうしようもない俺は、さらに凄みを入れる。
大概の奴はこれで怯む。
遠巻きで見ている奴らは、汚いものでも見るように俺を見ていた。
店長らしき人物が、
「江夏さん、危険だからそのくらいで」
か細い声で止めを入れる。
いつだって俺は黴菌扱い。だったら徹底的に黴菌、勤めさせて貰おうじゃないか。親の金をむしり取り、弱そうな奴らから金を巻き上げる。気が済むまでバイクを飛ばし、気に入らない奴はぶっ飛ばす。
次の瞬間、俺はぽかーんとその店員を見上げていた。
銜えていたタバコを取り上げ、足で揉み消していた。
「何をするんじゃい」
「タバコなんてやめた方が良いですよ。体に百害あって一利なしです。それよりこれあげます」
その店員はエプロンのポケットから飴玉を出し、俺に差し出した。
ふざけやがって。
殴ってやろうかと見上げた俺を、その店員は微笑んで言ったんだ。
「美味しいですよ。食べてみてください」
いまだに足を震わせているくせして、包み紙を開き、「はい」なんて笑いやがって。
その内サイレンが聞こえて来て、遠くにいた店長が急に大きな態度に変わる。
「まったく、何時間かかっているんだ」
なかなか手を出さない俺の口に飴玉を放り込んだその店員は、早く逃げてと叫んだ。
「江夏君、何を言っているんだ」
そんな咎める声を背に、俺はバイクのエンジンを入れ、その場を走り去った。
いちごミルクの味が口いっぱいに広がり、俺は泣きそうになっていた。
何なんだ。
理解不能の笑顔。
女を知らないわけではない。
欲望のまま、いろんな女を相手にしてきたけど、こんな感情は初めてだ。
どうにかなってしまった気がする。
それが倫子との出会いだった。




