ダリア
今、イルート達は廃鉱に向かっていた。
あの後、ミノタウロス2体をアイテムボックスに仕舞い、場所を移動する事にした。
だが、進んでいる道は街道ではなく、森の中だ。
白鉄と黒鉄はまだ属性付与していないため、歩きなのだ。
そのまま街道を歩いていて、もしも商隊や旅人にでも見られたら騒ぎになってしまう。
それに、白鉄はまだ完全に修復出来てなく、その影響か歩く速度がゆっくりだ。
「なー、アニキー」
ミノタウロスとの戦闘以来、何故か兄貴と呼ばれるようになってしまった。
「俺の名前はイルートです。」
「じゃあ、イルアニキ?いや、イルートのアニキ?やっぱしアニキだな。」
「はぁ、もういいです。それより何ですか?」
「アニキは何で廃鉱に向かってるんだ?」
「ものを取りに行くためです。」
廃鉱には、闇騎士達が持ち帰ってこれなかった鉄と、掘った後に出た大量の岩があるのだ。
強度的には鉄が大量に欲しいが、岩でも十分戦力になる。
なので、大量の岩をアイテムボックスに入れて持ち帰るつもりだ。
「もの?廃鉱にか?」
「そうですよ。それより、君は何故自分のことを『俺』なんて言うんですか?」
「や、やっぱし変か?女が俺なんて。」
そう、俺と言っているが女の子なのだ。
髪は赤でボサボサ。容姿はなかなかに可愛いのではないだろうか。活発で元気の良さそうな子だ。
「まぁ、別にいいんですが。後、名前は何て言うんですか?」
「ん?そう言えば名乗っていなかったな。ダリアって言うんだ!よろしくなアニキ!それと、敬語はなしにしようぜ。」
「あぁ。よろしく?何処まで着いて来るんだ?」
「んー。気分次第?村に帰ったって、俺は疫病神だからな。でも、帰る場所はあそこにしかないからな。行く宛もお金もないから数日したら帰るつもりだ。」
「…1人は嫌だよな。」
「アニキも1人なのか?」
「いや、違う。それより、ダリア。俺の家に来るか?」
「ん?どういうことだ?」
「まぁ、もしかしたら雇うって形になるかもしれないが、一度来てみないか?それに、1人で生活するのは大変だろう?」
「雇うって…アニキは貴族なのか?」
「そんな所だ。条件もあるけどな。」
「雇ってもらえるのは嬉しいけどよ、どんな事をするんだ?」
「一番に考えたのは住み込みの見習いメイドだな。それか、弟に弓を教えてあげてほしい。条件は、今日見たゴーレムの事などは言わない。簡単だろ?」
「んー。確かにそうだけど。何でそこまでしてくれるんだ?」
もしここで、俺も1人だったからと言えば話しが合わなくなる。それなら何故、家族がいるんだ?と。
家族がいるのに1人とは言えないだろう。
もう一つの理由は、初めて俺の能力を──
「──ゴーレムを格好いいって言ってくれたから、かな?」
「んー。何か身分を証明出来るものはあるか?」
イルートは少し考えて、あれを出すことにした。
「これでいいか?」
「短剣?何の紋章だ?」
出したのは、シバイア家の家紋の入った短剣だ。
「それはシバイアの家紋だ。」
「シバイア…?シバイアって街の…」
いくら村に住んでいたとは言え知らない訳がないだろう。
「あぁ、そうだ。父様はハイン・シバイア伯爵だ。」
「伯爵!?アニキってそんなに身分が高かったのか。アニキ…偽物じゃあないよな?」
「本物だ。偽物なら最悪の場合、処刑されるぞ。なのに偽物なんてつくる訳ないだろ。」
「確かに…じゃあ、せめてフードをとってくれよ。顔見えないし。」
「…分かった。先に言うけど、男だからな?」
イルートはそう言ってフードを取る。
「アニキって声聞かなかったら男だってわかなかったぞ。」
「…それで、どうするんだ?」
「んー。付いていってみる。ミノタウロスから助けてくれたのに、アニキが何かするとは思えないし。身分も分かったし。」
「分かった。とりあえず廃鉱に行くぞ。」




