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バザウ、君は賢すぎる  作者: 下山 辰季
第八部

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106/115

ゴブリンと二柱の知識

 イ=リド=アアルは己の仕事を続けていた。

 ルネとチリルが争った時も、ニジュがエヴェトラを二人きりの眠りの世界にいざなった時も。

 そしてもちろん空に妖星の輝き増す時も。


 イの神域は大河の河口に広がるアシの群生地だ。

 神殿のような建造物は周囲には見当たらず、書庫や石板の保管庫のようなものもない。

 バザウは神々からの知識を得るためにこの地におもむいたのだが、何もしらなければ到底こんな場所に深淵なる記録が蓄えられているとは思わないだろう。

 

「イさ~ん、遊びにきました! 私です! こちらの方にあなたの記録を見せていただきたいのです」


 子供が親しい友達でも呼び出すような気安さで、エヴェトラは湿地を渡る風に声を乗せた。

 ゆったりと流れていた大河の水面がさざめきだつ。泥の臭いが濃くなり、水はつぱつぱと奇妙な音を立てて震える。

 バザウたちの目の前に、渦巻く水の柱に乗ったアシの小島が出現した。


「……偉大なるアシ原は、懐かしき友の傍らに招かれざる闖入者がいることに気が付いた。厚顔無恥な愚か者の正体、それは妖精の末裔である」


 頭の奥に直接響く神の言葉は明らかにバザウを歓迎してはいないようだった。

 自分の種族はかつてイの不興を大きく買うような悪事をしでかしたらしい、と理解してもバザウは特に驚かなかった。ゴブリン族はあらゆるところで狼藉を働いている。評判が悪いのは当然というもの。

 だがイに対するエヴェトラの説得は、ゴブリン族の悪事を水に流そうとしているようには聞こえなかった。


「エヴェトラ=ネメス=フォイゾンの記憶からは、かつて起きた忌まわしい事実が抜け落ちてしまったのかとイ=リド=アアルは疑った。記録の改ざんは二度と起きてはならない」


「現在の彼らはこの大地に根を下ろし他の命と同様に摂食、消化、排泄し、また己の血肉を循環させています。もうあんなデタラメな力も失っています」


「世界中に記録者を遣わしているイ=リド=アアルはそのことも承知していた。しかし多くをしる聡明なアシ原ですら、ただの命に重大な記録を見せることでどんな利があるのかわからない」


 二柱の神の間に数秒の沈黙が訪れた後、エヴェトラが小さく息をもらす。うっかり何かを失念していた時の気の抜けたつぶやきで、あっ、と。

 地面を手繰り寄せる動作をするとその手の平に物品の塔が積み重なった。豪華な箔押しの背表紙、古めかしい革装丁、俗っぽい派手な雑誌、フィッシュアンドチップスの残り香ただようシミだらけの英字新聞。

 それをへらっとしたいつもの笑顔で、イへと差し出して。


「これどうぞ~。ア-36界で買ったお土産です」


 大丈夫なのか、とバザウは冷や汗をかいた。

 こんな至近距離で神々のケンカに巻き込まれでもしたら、小さなゴブリンの命なんてタンポポの綿毛よりも儚く消し飛んでしまう。


(特にあの、喰いものの油がしみ込んだ紙束とか!)


 記録の守護者は土産の数々を自身である小島の上に直接乗せて受け取ると、ゆっくりと回転しながらそれを埋め込んだ。泥と水とアシの根が自在にうごめいてせっせと取り込んでいる。


「……過去の遺恨により多少の不満はぬぐえぬものの、アシ原は旧友の頼みを引き受けることにした」


 あれで満足したらしい。神々の感性や価値観は本当に不可解だ。




 神々の記録が記されているのは書物でもなければ石板でもない。枯れて腐り朽ち果てたアシ草だ。実体を持たない植物の幽霊。

 しりたいという思念に呼応して、うっすらと透けたアシが水面からすっと突き出てくる。儚げな光の粒がゆったりと舞っていた。


「緑のもあもあで触れれば頭の中に直接ぎゅーんときますから!」


 大ざっぱかつ適当な説明だがバザウはだいたい理解できた。

 生き物の体の外側には、不可視の層がいくつか重なり取り巻いているらしい。

 最も体に近いのは生命力を示す朱の層。その次に感情と連動し様々な色合いをおびる層。三番目は精神と理性を司る緑の層。そして輪廻転生の因果を記録した青い層。

 さらに外側に位置する層もあるがそれらは特殊で希少だ。通常は存在しないものと考えてもさしつかえがないほど稀有である。


「これでバザウさんの望みはかなえられたでしょうか? 恩返し完了ということで、私はそろそろニジュさんのところに帰ろうかと思います」


「ああ、今までありがとう。俺の願いだけ手間のかかるものですまなかったな」


「いえいえ~。なかなか楽しい時間でした」


 長らくバザウの旅に連れ立っていたエヴェトラは、笑って手を振るとその姿を大地に溶け込ませてふっと消え去った。


(……一人でいるのには慣れていても、別れの後には妙な欠落感があるな……)


 ほんのわずかな感傷をこめて静かに息を吐くと、バザウは真剣な表情で光るアシの読み込みにとりかかった。




 バザウがまず調べたのはルネとチリルに関して。

 イ=リド=アアルのアシ原に記録されているのは、イ自身の知識の他にその下位神や精霊たちが記録者として世界中をめぐって集めた無数の情報だ。

 過去から現在までの膨大で広範囲な情報が集積されているものの、絶対的な事実が自動的に記述されているわけではない。

 イもしりえないようなルネの思惑やチリルの計画を一から十まで見通すといったことは不可能だ。


(過去の記録からヤツらを出し抜く手がかりをつかめれば……)


 その思いでルネとチリルの出生からを追っていけば自然とある情報にいきつく。

 過去に彼らがニジュやエヴェトラと協力し妖精のナゾを追っていたこと。

 それまで積極的に妖精狩りを進めていたシアの不可解で急すぎる方針展開。


(……どういうことだ?)


 妖精の起源について調べようと意識を集中する。浮かんできたアシは明らかに他のものとは違っていた。

 アシはワニの骨の中に納められており、精神層で触れるのを邪魔するように無数の小魚が周囲を泳ぎ回っている。試しに魚の一匹を読んでみる。


(破損中……か)


 それだけがバザウの脳裏に流れ込んできた。アシ自体が特にボロボロには見えない。となると破損している箇所は中身、このアシが受け持っている記録そのものにありそうだ。

 イとエヴェトラのやりとりを振り返る。

 以前に記録が改ざんされたことがあり、その犯人について明言こそなかったものの妖精の末裔であるという理由でバザウに不快感を示していた。

 イ=リド=アアルが管理する記録を書き換えるというのは、本を汚したり石板を削ったりするのとはわけが違う。霊体に記された情報をどうこうするなんてバザウには方法すら見当がつかない。

 問題のアシに施されている対策を見たところ、イは未だそれを訂正できずにいるようだ。


(改ざんを起こした何かは神を超える力を持っていると……、そう考えて良いだろうな……)


 傲慢で残酷な神々に弱い自分がなんとか抗う方法を探し求めていた。それなのに。

 横暴で冷淡な神々を超える何かが存在し得ることをどういうわけか素直に喜べないでいた。


 妖精の起源に関する情報は諦めてルネとチリルの記録の続きに思念で触れる。

 自分のいうことをきかないチリルに業を煮やしたシアがルネの顔を焼いた一件。

 双子神の代理戦争に干渉してしまったエヴェトラは、チリルに右足を奪われた後、ルネに左手を差し出している。

 どんな思いでルネに左手をやったのかはわからないが、少なくともバザウがよくしるあの憎らしい鳥には黒焦げのヤケドの痕はなかった。


(仮にルネは与えられた力をシアから傷つけられた体の補修にあてたとして……、チリルが持ち去った右足は……)


 考えずとも察しがついた。

 そこにいるだけでも土地を肥やし、その血が滴り落ちればすぐさま作物が実り爆ぜる。

 豊穣神の体の一部があれば世界のすべての心を覆いつくす大樹とて生み出せるかもしれない。


 アシ原で貪欲に記録をあさったバザウだが、ついに知識欲が疲労に屈する時が訪れた。

 姿を見せないイに一応礼の言葉を告げてから神域から離れる。大河は豊かだが集まる捕食者の数も多い。ゴブリン一人が安全に眠れる場所を探す。

 水辺からほどよく離れたあたりに野生のイチジクの木が茂っていた。折り重なった葉が心地良さそうな木陰を提供している。

 実を一つもぎ取って食べる。期待していたほど甘くはない。手に白くペタッとしたイチジクの乳液がついた。

 今日のところはこの木を食堂兼宿屋にしようと決めて、バザウは昼の眠りについた。




 東西南北のすべてを水平線に囲まれながらバザウはソーセージ作りの作業に黙々といそしんでいる。

 白い磁器に金縁のティーカップに乗り込んで、金のティースプーンでかき混ぜる。海は黄金色のしぶきで応えた。辺り一面が高級コンソメスープ色の神々しい輝きになったところでバザウは海を混ぜる手を止めた。

 空を見上げる。ピンクや水色やペパーミントグリーンの星々が気ままに踊っている。夢の中のバザウはしっていた。手の届かないあの星々には、とてつもない力が秘められていると。

 用意したのは桃色のアカツメクサと青いヤグルマギクと緑の多肉のグラプトペタルム。それをどっさり海の中へと放り込んだ。あっという間に海は華やか。バザウは空の星を手招きした。


「おいで。パーティをしよう。楽しい話を聞かせよう。一晩中踊り狂おう。俺は……お前たちを歓迎する」


 乗っていたはずのティーカップの船は消え失せてバザウの体は花が漂う金色の海に浮いている。あるいはこの時バザウは海だったのかもしれない。

 いずれにせよ、色とりどりの星々がほんの少しの迷いとはにかみを見せた後、パーティ会場に次々に落下してくるのをバザウは見上げていて、星の無邪気な喜びを肌で感じた。

 くゆくゆと星動き。しゃぷしゃぷとそれは変容する。

 海の水がすべて流れていった後、地上には一人のゴブリンと彼のための食卓だけが残った。

 大皿に山盛りのソーセージ。ケチャップとマスタードも好きなだけ。パンもあれば付け合わせのキャベツや芋もある。デザート代わりにちょっと洒落たソーセージパイ。

 最高の食卓である。ソーセージ作りは悲願なのだ。ほしくてほしくてたまらないものなのに自分の力では生み出せないもの。それをこうして手に入れるのは。




 世界がかげる。幸福と充実の体現であるソーセージの湯気の向こうに、臓腑を逆なでするような無表情の笑顔が見えた。この顔とは以前にもあいまいとした夢の中で遭遇したことがある。


「チリル=チル=テッチェ」


 バザウを取り巻く景色が一変した。地平線まで見渡す限り妖精の埃石で埋め尽くされている。本来はてんで好き勝手に思い思いの変な形をしている埃石だが、この空間においてはどれも決まって正多面体をしていた。

 空中に浮いているもののチリルがあまりにも微動だにしないため、浮いているというより空間に固定されているように見える。

 いかなる大風が吹こうとも、そのふわりとした髪がなびくことはない。どれほど親しい誰かが引っ張ろうとも、その淡い色の衣が崩れることはない。そんな風にも思えてくる。


「君はチリルの予測をことごとく上回ってくれますね。ルネに台無しにされた失敗作がまさかここまでチリルを邪魔するとは思いませんでした」


 バザウはチリルの動向を警戒した。

 攻撃の予兆はなく殺意も感じ取れない。しかしそれは安堵の根拠にはならない。


(そんなものなくとも俺を容易く屠れるのだろう)


 目の前を飛ぶ羽虫を何気なく払い殺すのに、わざわざ殺気をたぎらせる必要がないように。


「……君はケレイブ=サイドの意志までくじいてしまったです。残っている創世樹はどれも貧弱なものばかり……。もうチリルにはあまり時間がないのです」


「ほほう、そういう時は何もかも忘れてふて寝する、というのはどうだ?」


 神はゴブリンの軽口に乗る気はないらしい。

 バザウの言葉は無視しバザウ本人に視線を定めながら、チリルは独り言にも似た話を続ける。


「残された期限の中でチリルの創世樹計画を遂行できるとしたら」


 チリルの周囲にカチャカチャとガラスの管や球体が出現する。

 光る水色の液体が入ったもの。コケが詰まっているもの。そして、黒い土に根を張った小さな苗木を大事に収めたもの。

 バザウは目を見張る。


「君に創世樹の苗木を託すしかないのです」


「……お前の目的は何だ? 世界中のすべての精神を一つにすることで、お前は何をなそうとしている?」


「教える必要がありそうです。チリルがそれを明かすことで君が理知と正しさに目覚めるのなら」


 同意なく創世樹を押し付けることはチリルにも不可能なようだ。仮にできたとしても、そんな強引な手段で与えた創世樹が巨大に育つことはほぼないだろう。


(何が理知と正しさだ)


 傲慢さが癪に障る。

 それでもチリルの話に耳を傾けるのはゴブリンの貪欲さゆえだ。知識を広げたい、事実をしりたい。バザウの持つ強い欲だ。




「世界はたった一つのゆるぎない真理を必要としています。創世樹は真理を確立するための手段でしかないのです。チリルの目的は、真理の創造によりこの世界を救うことなのです」


 世界を救うときた。

 恥ずかしげもなく突きつけられた大義名分にバザウは失笑しそうになるが、チリルが次に口にした言葉で引っこんだ。


「千匹獣座が本当は妖星からの影響を封印するものであることはしっていますか。今その効力が消えかかっています」


 神々の知識に触れたことでバザウも千匹獣座がただの禍星でないことは理解している。


「かつて多くの神々が一つの目的のために手を結び千匹獣座を作りました。しかし再度あれだけの封印を作り上げることは不可能です。なぜなら、もはや妖星を……妖精を脅威だと正しく認識している神はたったの五柱しかいないのです」


 妖精。


(……イ=リド=アアルの記録のアシ原で、何者かによって一部の記録が改ざんされていた……)


 妖精の起源を示す情報が。


(破損していない記録で、ニジュが今の姿になったのは千匹獣座の儀式で起きた事故が原因だと……)


 はじめて禁足の森でニジュと会った時、妖精の一族に対して見せた強い嫌悪感。


「現在の妖精族は受肉し定まった形を得たことで自由な力は失いましたが、君たちの先祖はこの世の秩序さえ塗り替える星の光だったのです」


 チリルは感情を表さない黒い瞳で、邪悪な妖精であるゴブリンのバザウを見ている。


「……神々を凌駕するほどの力が、かつての妖精にはあった。そしてその力の暴走がいずれ訪れる。お前はそれを……」


「これで妖精の危険性を正しく理解する者が六名になりました」


 チリルの地道な観察と測定と計算は一つの事実を突き止めた。まもなく千匹獣座の封印を突破して宇宙に開いた穴から膨大な光がこの地を目指して飛来すると。

 何が起きるかまったくわからない事態になる。ということがバザウにははっきりわかった。

 アルヴァ=オシラの創世樹が作り出した世界にエメリが妖精の埃石を持ちこんだ時、アルヴァの世界は不条理な幻想に支配された。


「災厄そのものを止めることはチリルにもできません。ですが世界の秩序が完全に破壊される事態を防ぐことはできるかもしれないと思っています」


「そのために、真理を必要とするんだな……」


 これまで出会ってきた創世樹の宿主たちが掲げる真理に、どれもほころびがあったことをバザウは思い返していた。ゴブリンがつけ入る隙を残した偽りの真理。

 掲げた真理が事実にもとづいているかだとか、本人や周りに苦痛をもたらすかだとか、そういったことは一切考慮に入れない。

 どれだけ間違っていようが歪んでいようが、狂気的なまでに信じぬく。チリルが求めているのはそんな姿勢で、それこそが正しいことなのだ。


「妖星の光は形と承認を求める傾向があります。強い願いに反応し、形と承認を得るために望みを叶えようとするのです」


 心は千差万別だ。そこに妖星の光が降り注いだら、バラバラな思いを反映して世界はバラバラになるだろう。

 だが地上にある自我が一つだけとなり確固たる真理を抱いていれば、妖星による改変は避けられなくとも世界は秩序と規則性をたもったものになる。

 意志と秩序を司る神のチリル=チル=テッチェは、そうすることで妖星に抗おうとしている。




「……」


「ずっと他の神に頼ることができなかったのです。大多数の神々は妖精の脅威に気づかず、そもそもチリルは有力神シア=ランソード=ジーノームに目をつけられています。ルネは何を考えているのかわからないです」


 チリルは創世樹の苗木をバザウの前に差し出す。

 みずみずしいがまだ弱くか細く、片手の力でへし折れるくらいの太さしかない。

 ガラスの蓋が開き、小さな苗木を育んでいる黒土からはバザウがしる二つの臭いがした。一つ目の材料は妖精の埃石。もう一つは豊穣神の血肉。


「これがエヴェトラの脚の使い道か……。植物の栽培にはこれ以上ないほど打ってつけの贅沢すぎる肥料だな。埃石を使っているのは?」


「埃石の形を変える性質で創世樹の宿主の心を反映しやすくしています。妖精の埃石は千匹獣座のむこう側の穴からもたらされたものです。はるか遠い古から侵食してきました。風変りな形をしているのは、本来は不完全な存在である彼らが形を求めたからです。妖星の本質に従い、こちらの世界の形ある存在を上辺だけ模倣しているのです」


 バザウは次の質問をするのに戸惑ったが、迷いの末に結局は尋ねていた。


「……妖星という存在はそもそもなんなんだ……」


 妖星からの光はこの地で受肉し凋落し、妖精と呼ばれる種族になった。この事実を突きつけられて、バザウの心は大きく乱れていた。

 ルネ=シュシュ=シャンテから明かされた出生の事情で、肉体と魂がちぐはぐな理由はしっている。

 魂が意図的に作られたものであっても、肉体はしっかりと大地に根付いた命の礎としてバザウの精神を支えていた。

 まさか、ゴブリン族というものが、妖精という種族自体が、そんなに異質で奇妙なものだとは思ってもみなかった。


「調査を続けてきたチリルにも正確なことはわかりません」


 妖精の末裔からの問いかけに神は冷淡に答える。


「それで、君はチリルに賛同してくれますか」


 バザウとチリル=チル=テッチェの間にはガラスのポッドに植えられた苗木が浮かんでいる。




 木の葉のざわめきにしばし聞き入り、バザウは夢からさめたことに気づく。

 寝入った時はまだ昼だったのに空はすでに朱色になっている。


「……」


 ノドの渇きを覚えたバザウは近くの木の実をもぎとろうとして、手が止まる。

 自分の肉体に糧を与えることを躊躇した。ひどく不気味で不自然な行為のように感じてしまう。現実の食べ物を前にして、バザウは夢の中でソーセージを食べ損ねたことを悔いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりの更新に感謝!! [気になる点] 久しぶり過ぎて、人物の把握に少し時間が掛かった。 [一言] バザウの選択が気になる……が、恐らく彼は……
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