表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

勝手に召しませ!<番外編>

勝手にハロウィン<ゆきの場合>

作者: ちくわ犬

ちょっとしたお遊び企画でございます。

フンフンフ~ン。


後ろで料理長が青い顔して私を窺っています。両手で何かを掴むようなポーズのままなんだけど大丈夫かな?何度も「お手伝いします!」と言われたのを断ってからは後ろから「あっ」とか「そっそれは」とか聞こえてくる。


何をしているかというとですねぇ。えへへ。今日はハロウィンな訳ですよ。ユリウスとは恋人期間無くして結婚してしまったのでこういうイベントごとは力を入れているんです、ハイ。

で、カボチャの形のカボチャクッキーを作っているところでして。もういいかな?


振り向くと料理長がぶんぶん頭を振ってかまどを指差している……。


かまどから生地を出すと……。


あれ、ちょっと焦げちゃったかな。ま、いっか。


「で~きた!」


これでクッキーは焼きあがりました!結構な量を焼いたのですよ。皆にも配るつもりですからね。これでラッピングが終わったら「逆トリック、オア、トリート」です。「お菓子を食べてくれないとイタズラしちゃうぞ」って。


「姫様、リボン持って来ましたよ?」


「あ、イモムー!人型になって!毒燐粉が落ちちゃう!」


食中毒は避けたいですからね。それだけはご勘弁を。


「すいません。姫様。」


「いいよ。ありがとう。そのまま包むの手伝ってくれる?あ、それと味見、味見。」


シュンとなったイモムーには食べ物作戦が効果的。


バリバリバリ。


「おいしいです!姫様!」


あ、それは私が味見する分だったんだけど。イモムーの食欲は底なしだからね。美味しそうに食べてもらったら何にもいえないや。


にっこり笑い合って冷めたクッキーから包んでリボンをかけていった。




~~~~~




「……なんだ?これは。」


どうして厨房からでたら銀髪クンに逢うんでしょうね?ぜったいイモムーを探して来たに違いない。


「クッキーです。いらないなら返してください。」


…あとでイタズラしておきますから。汚いものでも触るみたいににクッキーを摘ままないでください!全く失礼しちゃう!


「イモムーと作ったんですけど?」


「ええっ!?」


ウソです。でも急いで銀髪クンはクッキーを口に放り込んだ。


「……。」


しばし沈黙。


「美味しいでしょう?」


イモムーが聞くと


「……ハイ。」


銀髪クンはにっこりイモムーに笑いかけた。でも…


「今日は用事がありますのでイモムーさん、また、今度。」


青い顔して銀髪クンはそそくさとその場を退場していった。なんなんだろう?アレは。まあ、いいや。


それからリラさんのところを訪ねた。


「ひめ…あ、間違ってしまいました。申し訳ありません。王妃様。今日のご衣裳用意しておきましたよ!お着替えくださいませ!」


「いつもありがと!それと、これ。感謝の気持ちデス。」


「ありがとうございます。リラは後で頂きますね。さあ、着替えて着替えて。」


急かされてヌギヌギ。あれ?下着も作ったの?すごい懲りよう!下着は自分で着けますからちょっと後ろ向いててくださいよ。でも、ちょっとこのパンツ、サイドが紐で心もとないのですが…。なんだかブラもフリルが大きい割りに面積狭いし。まあ、ベビードールもあるからいいか。


じゃ、じゃ~ん。


テーマはカボチャそのもの。中身はどうあれ、外は完全着ぐるみです。頭は魔女の帽子を被ってそのまま出して、体はオレンジのカボチャ。そこから手足が出ている感じ。


「どうですか?気に入られましたか?ご希望どうりには頑張ったのですが。」


「バッチリですよ!天才です!」


「さ、陛下のところへ。」


「え?まだ色々配らないといけないから…。」


「後は私とイモムーが責任をもってお届けします。」


「でも…。」


「お待ちかねですよ?」


そう言われると仕方ないですけど。せっかくの着ぐるみ姿をみんなに見せたかったなぁ~。

背中を押されてユリウスの部屋へと向った。あれ~?いつもはお仕事している時間なのに?


ドアをあけると吸血鬼姿のユリウスがいた。


「な、なななにを…。」


「何をって…。似合ってないか?」


いや、似合ってますよ?似合ってますけど、まさかユリウスがこんなことに付き合ってくれるなんて思ってなかったものですから!


「トリック、オア、トリート。」


優雅な吸血鬼が魅惑の微笑みで私に問うた。


「えと。」


あ、あれ?クッキーが…。リラさんが全部持って行っちゃった!


「ご、ごめんなさい…。ない……。」


あとで、と言おうとして唇を塞がれてしまった。もちろん、ユリウスの唇で……。


「ん…。」


「このギャップも堪らんな。」


いいながら首筋を吸われる。


「え…?」


さっき着けたばかりだというのにカボチャの着ぐるみが床に落とされた。


ああ、だめ、頭がぼーっとしちゃう……。


そのあと私は吸血鬼に美味しく頂かれてしまった。




~~~~~



「はあ、結局今朝まで部屋から出してもらえなかった…。」


「まあまあ。その分ユリウス様のご機嫌がすこぶるいいですから!」


リラさんの声が弾んでいる。私がユリウスとモニョモニョした日は城中に平和な空気が流れている…なんか恥ずかしいんですが。


照れくさくて魔界のオワシスの研究室に逃げるように駆け込んだ。


「あ、王妃。クッキーという人間食を頂きましたよ。ありがとうございます。」


「どうでした?美味しかったですか?」


「……そうですね。体に良さそうな味でしたよ。」


び、微妙な表現です。サモンさんらしいけれど。


「ホーキンを使ったのは何故ですか?」


「ホーキン?なんですか?それ?」


「クッキーの材料です。オレンジ色の野菜です。」


「ああ。カボチャに似た魔界の野菜のこと?人間界では昨日はハロウィンと言ってカボチャを使ってお祝いするの。そっくりだったから使ったんだけど?」


「……。ああ、それでですか。いえ、ホーキンには下す作用がありまして。お腹の弱い方にはよろしくないかと。」


「え…。配っちゃいましたよ!?」


「リラに任せていたのなら安心ですよ。心得ていますから。まあ、レイシアス様以外でしたら問題ないでしょう。」


「……。」


レイシアス様はバリバリ食べておられましたよ…。


その日の執務室に銀髪クンの姿は無かったという。



以後10月31日は「お腹すっきりの日」としてホーキン(魔界のカボチャに似た野菜)料理をする日として巷に広まったとかいないとか。


そんなある日の出来事でした。


ちゃんちゃん。

ちなみに高麗人参のようなお味だとか。

料理長はハラハラ。この人が一番の被害者かもしれません。

リラさんが作ったハロウィンの衣装は外側はゆきの希望で中身はユリウスのリクエストです。多分…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ