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第50談 ビートたけしの超常現象㊙Xファイル オカルト国民総決起集会スペシャル!!

 2015年12月27日。この日、私はテレビ朝日系で放送された『ビートたけしの超常現象㊙Xファイル オカルト国民総決起集会スペシャル!!』という番組に、心霊ライターとして出演させて頂きました。


 番組内で、私は1本の心霊映像を紹介させて頂きました。


 それは、私の友人で歌手活動(現在は休止中)していたY君(仮名)から、提供された映像でした。


 2013年頃、彼は都内の某ライブハウスで行われる音楽イベントに出演したのですが、 その待ち時間の間に 楽屋でYouTubeにアップするための動画を撮影しておりました。


 その内容は、Y君が視聴者に対して他愛も無い雑談をするというものです。机の上にはコンビニのペットボトルやスナック菓子の袋、壁には少し剥がれかけたポスター。どこにでもある、ライブハウスの楽屋らしい風景でした。


 だが、その「普通さ」の中に違和感が紛れ込むのに、そう時間はかからなかったのです。


 数日後。YouTubeアップ前に動画を確認した 彼は、背筋が凍りつく思いをしました。


 何故ならば、 動画が再生されてから数分後に、画面右上の方に、〝人の顔〟のような物が映り始めたのです!


 動画を一時停止し確認すると、それは首 を横に傾けて苦悶の表情を浮かべた女性の顔でした。


 番組内では、大竹まことさんと、映像内の女性の顔について少々議論させて頂きましたが、放送時間の都合で真相を語る事が出来ませんでした。


 今回は、10年前にテレビ番組で話せなかった心霊動画の真相を皆様にお伝えしたいと思います。


 映像が撮影されたライブハウスは、地下に位置する小さな箱でした。私は、番組収録前にY君の紹介で、当時のスタッフを取材する事が出来たのです。


 ※以下、そのスタッフの名前は、タケルさん(仮名 当時30代後半)とします。


 件のライブハウスは、地下にありました。狭い階段を下ると、湿った空気が鼻腔にまとわりつく。壁には長年のタバコのヤニとカビの混じった臭いが染みつき、薄暗い廊下の蛍光灯は心許なく点滅を繰り返していました。


 営業終了後。タケルさんは、客も演者もいないライブハウスで缶ビールを片手に、私とY君にポツリポツリと語り始めてくれました。


 「2005年頃、この店でバイトで働いていた女の子がいてさ。確か、年齢は19歳か20歳だったと思う。当時の雇われ店長と付き合ってたんだけど……あの人、女遊びがひどかったんだ」


 彼は、ため息を混じらせながら語り始めました。 


 「ライブが終わった後に、別の女性を連れて打ち上げに顔を出すなんてザラだった。付き合ってるバイトの子の目の前でだよ?俺たちから見ても、あれはさすがに酷いと思った。あの子はいつも笑ってたけど、内心は相当キツかったはずだ」 


 その声には、いまなお拭えない後悔のような色が混じっていました。 


 「その子が妊娠した時も、俺は偶然2人のやりとりを見たんだ。閉店後、カウンター越しに彼女が『赤ちゃんがデキた』って言ったんだよ。そしたら店長は、タバコの煙をその子の顔に吹きかけながら『堕ろせよ!俺には関係ないから』って、突き放したんだ。普通さ、妊娠中の女の子の顔にタバコの煙を吐くかよ!?あの時の冷たい態度と言葉は、今でも頭に焼き付いてる」 


 そう言うと、タケルさんは手にしていた缶ビールを強く握りしめ、しばし黙り込んだのです。 


 私もまた、言葉を失いました。地下の薄暗い空気は、急に濃度を増したように感じられ、烏龍茶で潤したばかりの喉の奥が急速に乾いていくのを感じました。


 彼の証言は耳で聞いているはずなのに、映像のように鮮やかに情景が浮かんできたのです。 


 若い女性が、声を震わせ妊娠を告げたにもかかわらず、相手の男は彼女を気遣う言葉一つかけず冷たい煙を吐き出す。


 その場に居合わせたかのような錯覚に、私は背筋を冷たい汗が伝うのを感じました。 


 やがて、タケルさんは声を落とすように話を続けました。 


 「それから、数日後の夜の事だ。閉店作業が終わったあと、みんな先に帰って、店に残ってたのは彼女だけだったらしい。翌日、俺が出勤した時には、すでに先に入ってたスタッフが青ざめた顔で外に飛び出してきて『大変だ!ステージに……!!』って叫んで手を引っ張ってきたんだ」 


 その瞬間、彼の手が小刻みに震えたのを私は見逃しませんでした。 


 「慌てて、中に駆け込んだら、ステージの照明のフレームにロープがかかってて、彼女が首を吊ってた……。可愛かった顔は苦しそうに歪んでたんだ。みんな泣き喚いてさ……あんな悲しい大騒ぎは、二度とごめんだよ」 


 地下ライブハウスの空気がさらに湿り、重くのしかかるように感じられた。私はただ黙って聞くしかありませんでした。


 タケルさんの言葉は、耳から入るたびに冷たい刃のように、私の心臓へ突き刺さってきたのです。


 それからというもの、ライブハウスでは不可解な出来事が続くようになりました。


 誰もいないはずのステージから、アンプを通さないギター音が聴こえたり。カウンターのグラスが、まるで誰かが合図を送るようにカタリと鳴る。トイレの鏡には、首吊り自殺した例の女の子らしき影がちらつく……。


 これらの出来事は、最初は冗談半分で済まされていました。しかし、店長自身が体験するようになってから状況は変わったそうです。


 「夜になると、必ず〝誰か〟が背後に立ってる気がするんだ……夢の中で、あのバイトが何度も出てくるんだよ。俺を恨めしそうに見ながら……ちきしょー!ただの遊びだろ!?」


 そう口にしてからの店長は、日に日に荒れていったそうです。


 営業が終わると、カウンターに腰を下ろし、焼酎やウイスキーをボトルのまま口に運ぶ。グラスを使う余裕すらなく、酒を浴びるように飲み続ける姿が常態化しました。


 酔いが回ると「そこにいるんだろう?なあ、見てるんだろう?」と、誰もいないステージの暗がりに話しかけるようになりました。


 タケルさんを始めとするスタッフたちは顔を見合わせ、その姿には怖さよりも哀れさを覚えたといいます。


 それからの店長の外見ですが、髭は伸び放題、服はシワと酒の匂いにまみれ、まともに客と会話も出来ない。まるで、生気そのものを吸い取られていくようだったと、A男さんは語ってくれました。


 そしてある昼下がり――。


 いつもなら店に現れるはずの時間になっても店長が来ず、携帯も繋がりません。


 不審に思ったタケルさんが、自宅を訪ねたそうです。


 ドアは施錠されていたが、管理人を呼んで中に入ると、鼻を刺すようなアルコールと煙草の匂いが充満していました。


 部屋は荒れ果て、テーブルの上には飲みかけの酒瓶がいくつも転がっている。その傍らで、店長はうつ伏せに倒れていました。


 すでに息はなく、死因は急性アルコール中毒だったそうです。


 「店長の顔がさ……青白くて、口元に泡がついてて……。でも一番ゾッとしたのは、死んでるはずなのに、あの自殺したバイトの子を見てるみたいに目がカッと開いてたんだよ」


 そこまで話すとタケルさんは、黙り込んでしまいました。まるで、その目線の先に、いまも彼女が立っているかのように思えました。


 翌日、私はY君の映像を改めて検証しました。そこに映る女性の顔は、確かに首を傾げ、苦痛に歪んでいた。それはまるで、首吊りで命を絶った直後の姿勢を写し取ったようでした。


 店長に遊ばれて命を絶った女の子とは別人かもしれない。しかし、タケルさんが語ってくれた彼女の最期と符合するのは、あまりに不気味でした。


 ――あの映像に残されたのは、バイトの女の子と、この世に生を受ける事なく天国へ旅立つ事になった赤子の声なき叫びだったのではないか?と、私は考えるようになりました。


 私が、ビートたけしさんの番組に出演してから数年後(確か2018年頃)の事でした。


 Y君が、音楽仲間から奇妙な噂を聞いたというのです。


 あのライブハウスでは、その後もスタッフや演者が次々と怪奇現象に遭遇していたらしいです。


 ステージ袖の暗がりから、白い顔の女が覗いていた。誰もいないはずの楽屋で、女のすすり泣きが響いた。営業前に清掃をしてたスタッフが、ステージに立つ影を見たのに、そこには誰もいなかった。そんな証言が重なっていったそうです。


 やがて、そんな噂が重くのしかかるように、ライブハウスは静かに閉店してしまいました。


 現在では、別の店舗へと姿を変えましたが、あの地下に漂う空気の重さだけは、今でも消えていないのではないでしょうか?


 彼からその話を聞いた時、私は不思議な寒気を覚えました。まるで、あの映像に映った苦悶の顔をした女性が、今なおこの世に強烈な怨念を発し続けているかのように思えたのです。


 心霊映像は、しばしば偶然や錯覚に過ぎないと片付けられてしまいます。


 ですが、真実と信じて映像に映り込んでしまった人の人生を追えば、そこには忘れ去られてはならない物語が横たわっているかと思います。


 Y君が、地下ライブハウスで撮影した映像に映り込んでいた苦悶の女性の顔は、タケルさんの話に出てきた女性と同一人物とは断定できません。


 けれど、一つだけ言えるのは〝あの映像〟は錯覚ではなく、確かに誰かが発した〝声なき叫び〟だったのでしょう。


 ……ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。


 私がこの出来事を取材してから、すでに10年という歳月が流れました。


 だけど、今日こうして文章にするまで、誰にも真相を語る事が出来ませんでした。


 胸の奥に重く沈んでいたものを、ようやく読者の皆様に手渡す事が出来た気がします。

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