表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/100

第20談 笑う声、鎧の音

 私の高校時代からの友人で、裕子さん(仮名)という女性がいます。


 数年前、別の友人も交えて彼女と会食をしたのですが、その時に聞かせてくれた自身が体験したという怖い話を皆様にもお伝えしたいと思います……。


 今から、17~18年ほど前、彼女は転職を機に一人暮らしを始めることを決意したそうです。


 手頃な家賃で、駅からも近く、外観も小洒落た白いアパート。内見に訪れたときは、昼下がりの光が差し込む室内がとても明るく、まるで「運命的な出会い」のように感じたそうです。


 入居してからの一週間は、新しい職場に慣れるだけで精一杯でした。帰宅すると服も脱がず布団に倒れ込むような毎日で、特に異変を感じる余裕もなかったそうです。


 ただ、その頃から、夜中にふと目を覚ましたときに玄関の方で〝風が通る〟ような感覚を覚える事があったといいます。もちろん窓も扉も閉めていたのですが……。


 十日ほど経った休日。洗濯や掃除を終えた裕子さんは、まだ外が明るいうちに昼寝をしました。


 ふと目を覚ました瞬間、体が動かないことに気づいたそうです。


 ――金縛りです。


 耳の奥で自分の鼓動がドクドクとうるさく響き、背中を冷や汗が伝っていきました。


 目だけは動きました。天井、カーテン、家具……見慣れた部屋のはずなのに、どこか影が深く沈んでいるように感じたといいます。


 その時、〝バタン!〟


 玄関の扉が乱暴に開く音が、はっきりと響きました。


 直後に、足音。小さな子供が駆けるような軽い足取りが、廊下をこちらへ近づいてきます。


 アパートの扉は施錠していたはずです。誰かが入ってくるはずはないのに。


 「誰……?」と喉で呟こうとしても声が出ず、ただ冷たい震えが全身を走りました。


 やがて足音は寝室の前で止まり、気配が枕元に立ったそうです。


 裕子さんは恐ろしくなり、目をぎゅっと閉じました。すると、耳元で小さな笑い声がしたのです。


 「ウフフ……」


 耐えきれずに目を開いた瞬間。


 そこに立っていたのは、おかっぱ頭に和服を着た五歳か六歳くらいの女の子でした。表情は暗がりに溶けてよく分からず、ただ虚ろに彼女を見下ろしていました。


 その直後、視界がぐにゃりと歪み、裕子さんは意識を失いました。


 次に目を覚ました時には体は自由に動き、少女の姿もなく、玄関の鍵もきちんと閉まっていたそうです。


 数日後の夜。


 眠っていた裕子さんは、今度は「ガシャーン、ガシャーン」と金属の擦れるような音で目を覚ましました。瞼の裏に淡い光を感じ、恐る恐る目を開けました。


 そこには、青白い光に包まれた武者姿の影が立っていたのです。しかし、その首はありませんでした!


 錆びついた鎧が擦れる音を響かせながら、首のない武者は寝室を横切り、壁に溶け込むように消えていきました。


 息をすることすら怖くて、彼女は布団の中で必死に呼吸を殺しました。もし息を吐けば、振り返られてしまう気がしたそうです。


 一睡もできないまま朝を迎えた彼女は、そのまま実家に逃げ帰りました。


 後日、ネットで探した霊能者に部屋を見てもらうと、そこは「霊道」――霊が通り抜ける道筋の真上にあったと告げられました。


 霊と波長が合ったために、通り過ぎる存在と遭遇してしまったのだそうです。


 おかっぱの少女と首のない武者。なぜ二つの存在が同じ部屋を通り抜けたのか。彼らがどんな最期を迎えたのか?確かめる術はもうありません。


 私はこの話を聞いた夜、自分の部屋の玄関がやけに気になって仕方がありませんでした。


 確かに鍵は閉めたはずなのに、もし〝誰か〟が入ってくるとしたら……。


 アナタも夜中に、理由の分からない音を聞いて目を覚ましたことはありませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ