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第17談 こっくりさんが呼び出したのは……!?

 今回お話するのは、知人の紹介で取材させて頂きました谷口妙子さん(仮名50代)の体験談です。


 ――時は、彼女が小学校高学年の頃の昭和時代まで遡ります。


 その日は、梅雨入り前の、少し蒸し暑い午後だったといいます。


 窓を開け放った教室に、遠くで鳴くカエルの声が混じっていました。


 妙子さんのクラスでは当時、「こっくりさん」が大流行だったそうです。


 好きな男子の名前や、担任の嫌いな食べ物――そんな軽い質問を紙と十円玉で、占うだけの遊び半分の儀式でした。


 昼休みや放課後の度に、妙子さんの教室のあちらこちらで「こっくりさん、こっくりさん……」という囁き声が聞こえてきたそうです。


 その日も、仲のいい3人グループの1人が、彼女に声をかけてきました。


 「ねえ妙ちゃん!放課後、私たちも〝こっくりさん〟やろうよ」


 それを聞いた妙子さんは、少しだけ口角を上げました。


 何故ならば、彼女は当時反抗期の真っ只中。周囲の子と同じ事をするのは面白くないと考えたそうです。


 (どうせやるなら、みんなが驚くようなことを!)と思い、友人にこう言いました。


 「別にいいけどさ、せっかくなら〝本物〟呼んでみない?」


 「どうやって呼ぶの?」と問われ、彼女は咄嗟にこう言いました。


 「旧校舎でやれば、本物が来るんじゃない?」


 旧校舎――。間もなく取り壊し予定で、児童は立ち入り禁止でした。


 木造建ての校舎に割れた窓ガラスの外観が、校庭の隅で異様な雰囲気を放っておりました。


 本当は、妙子さん自身も、あそこに入るのは嫌でした。


 でも、どうせ誰かが「怖いからやめよう」と言い出すと考えてました。


 それを聞いたら「何だ。みんな意外と臆病なのね〜」とマウントを取るつもりでした。


 ――ところが、彼女の予想に反してグループ内の全員が「面白そう!」とか「いいね!」などと賛成してしまったのです。


 こうなると、言い出しっぺである妙子さんも後に引く事は出来ません。


 彼女達のグループは、旧校舎でこっくりさんを決行する事になりました。


 2日後。


 夕陽が、放課後の校庭をオレンジ色に染め始めた頃、立ち入り禁止の札を無視して、妙子さんを含む4人の少女が門をくぐりました。


 旧校舎の扉は、意外にも鍵がかかっていませんでした。


 ギィ……と音を立てて開くと、乾いた空気の匂いが鼻を刺します。


 古いチョークの粉と、湿った木材の匂い――自分達の教室の匂いに似ているのに、どこかが違う気がしたそうです。


 人の気配のない廊下は、音が吸い込まれるように静かでした。


 こっくりさんの儀式場所に選んだのは、窓ガラスの半分が割れている2階の教室でした。


 黒板は色褪せて、机は数脚しか残っていません。


 その机の1つに紙と十円玉を置き、4人で指を添えます。


 最初は、他愛のない質問ばかりでした。


 「明日晴れますか?」――はい。


 「○○くんは私のことが好きですか?」――いいえ。


 その度に「えー!ウソー!?」と笑い声が上がります。


 日常の延長のような、他愛もない遊びの時間。


 しかし、窓の外の色が橙から群青へ変わるにつれ、教室の隅の影がゆっくり伸び、肌に纏わりつくような生温い風が一度だけ頬を撫でました。


「なんだ、全然普通じゃん。妙ちゃんも大したことないねー」


 何気ない友人の一言に、妙子さんはムッとしました。


 そして、彼女は少し強い声で言いました。


 「こっくりさん、こっくりさん、偽者じゃなくて〝本物〟のこっくりさんを呼んでください!!」


 ――次の瞬間。


 十円玉が、今までの何倍もの速さで動きました。


 紙を引っかく音がカリカリと響き、『マッテロ イマイク』という文字を指しました。


 誰も言葉を発しません。


 全員の指先が、金縛りになったかのように固まってしまいました。


 その時――


〝ジリリーン……〟 〝ジリリーン……〟


 突然、電話の呼び出し音が、廊下から響いてきました!


 それは黒電話の音です。


 当時ですら、古い家でしか聞かない甲高くて独特な金属的な音。


 しかし、この旧校舎の廊下には黒電話なんてありません。


 それどころか、電話線すら通っていません。だから、黒電話の呼び出し音が聞こえるという事自体が、異常なのです!


 〝ジリリーン〟……〝ジリリーン〟……


 黒電話の音は、ゆっくりと妙子さん達のいる教室へと近づいてきます。


 その合間に、微かに……人とも獣とも区別が付かぬ苦痛を帯びた呻き声のようなものが混じって聞こえたそうです。



 1人が泣きながら震えた声で、


 「やばいよ……」


 と呟いた瞬間、全員が同時に指を離して机をひっくり返す勢いで立ち上がりました。


 椅子を蹴り飛ばし、教室を飛び出して廊下を全力で走りだしました。


 彼女達の背後では、まだ〝ジリリーン〟……と件の音が追ってきていたのです。


  旧校舎を抜ける直前、妙子さんは一度だけ振り返りました。


  ……廊下の奥、薄暗がりの中に〝真っ白い人間の腕〟が、大蛇のように〝ズル……ズル……〟と這っている姿が一瞬だけ見えたそうです。


 それから、3日後。


 妙子さんを含む4人全員が、高熱を出しました。


 40度近い熱が1週間ほど続き、うわ言のように「電話が……」とか「こっくりさん、ごめんなさい」などと呟く子もいたといいます。


 原因は分からず、医者も首を傾げるばかりでした。


 皆、大事に至らず回復したのは、不幸中の幸いでした。


 その後、彼女たちが二度と〝こっくりさん〟を行う事はありませんでした。


 妙子さんは、最後にこう言いました。


 「当時、熱を出して意識が朦朧としてた時ですが、天井から白い手が何本も伸びてきて、私の手足や首を掴んできたんです。とても感触が生々しくて、今だに夢だったとは思えません……」


 あの日、妙子さんが〝こっくりさん〟で呼び出してしまったのは、旧校舎に取り憑く悪霊だったのでしょうか?それとも……??


 こっくりさんは、参加者が暗示にかかってしまい無意識の内に十円玉を動かしてしまう『自己催眠説』や、狐などの動物霊を呼び出してしまう『低級霊召喚説』など諸説ありますが、とても危険な降霊術である事には変わりません。


 もしも、皆様のお子さんや、親戚の子供が、興味本位で〝こっくりさん〟を試そうとしていたら……その時は、絶対に止めてあげてください!!

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