殴れば上がる世界
次に流行ったのは喧嘩、殴られた方より、殴った方がスコアが上がるということで、そこら中の弱そうな人達はみんな突然殴られて、動画に撮られ出した。
殴った方は快楽指数が35~40まで上がることも出てきた。
僕たちもお互い殴りあったりしまくった。
どっちかが殴れば反対も殴る。
あいつの方が強く殴った!などの恨みは一切なかった。
何故なら、どちらにしても快楽指数が貰えるからだ。
それに動画から接種出来る快楽指数もよかった、動画を見るだけで得られる数値は、決して多くはないけれど、それでも程々に快楽を得られるので、みんな動画も活用しているようだった。
ある日悠真が死んだ……
その日は湊と一緒に車にぶつかりに行く遊びをしていたらしい、いつもやっている事だからと慣れが出てきたのだろう、思っていたよりも強く押してしまい、悠真はトラックに正面からぶつかり、タイヤの下で無惨にもぐちゃぐちゃになっていたそうだ。
現場では、悠真を出すためにトラックを動かしたとき。
ごりっごりいっ。
と骨の割れる音がしたそうだ、その場では吐く人もいたという。
僕達はとにかく泣いた、湊は悠真の両親から、
「帰れ!お前さえくだらないことをしなければ!」などと罵られていた。
ぴぴぴぴ
装置がなった
泣きながら僕たちはそれを見た。
快楽指数80
今までの数値がなんだったのかと思うほど、高い数値だった。
悠真が死んだのに!
なのに僕たちの快楽指数は上がっている。
両親の泣きじゃくる姿を見て、快楽指数は更に85まで上がった。
おそらく怒鳴っている両親の快楽指数も上がっているのだろう。
僕は思わず安堵した、他の友人たちが
ことごとく快楽を感じている顔をしていたからだ。
自分もきっと同じ顔をしているんだろう、そう感じるとまた数値が上がった。
その一方でこれは危険じゃないかと頭のどこかで警鐘を鳴らす自分がいたが、快楽の前では、そんな事はどうでも良くなった。
程なくたくさんのインフルエンサーが誕生した、
〇〇やってみた~
全ての爪を剥がすやつ。
相方に頭を抑えてもらって水の中で藻掻くやつ。
ナイフゲームで思いっきり指の間を刺すやつ。
白目の部分を引っ掻くやつ。
際限なく痛みを数値化する人達が溢れていた。
それらの動画は出すだけで、インフルエンサー本人と、動画を見た者たちの快楽指数を上げて行った。
けれど、不思議なことにそれらの動画や現象はテレビや新聞では一切報じられることはなかった。
ネット上ではマスゴミ、マスゴミ。
と言われだし、情報統制反対のデモまでおこる事態となったが、その事すら報道はされなかった。
それからは競走だった、インフルエンサーに協賛がつき出したのだ。
耐久力強化装置カバーや危険保険などもあれば、あらゆる大手企業からも声が上がった。
僕たちにも協賛がついた。
あっという間だった、ライブ配信で危険なことをするインフルエンサーを見て、視聴者が快楽を感じた時、数値をインフルエンサーに投げ銭できるのだ。
これにより、快楽を感じる人々が更に広がっていく。
ここまで来るとついに出てきてしまった、電車に飛び込むところを、スマホを固定して映したままライブ配信する女子高生。
かろうじて壊れずに済んだ、装置の出した数値は、十二だった。
配信の際のコメント欄は炎上していた。
「しょうもな」
「もっと他人を巻き込めよな」
「効率悪すぎて草」
世の中は全て装置の出す数値が基準となってしまっていた。
※美しい死に方解説動画
※週刊ベスト指数
こんな文字があちこちで見られるようになった。
更に葬式は快楽指数が高いと広まり、葬式は段々コンテンツと化していった。
他人の葬式を見ながら、画面の向こうで泣いて数値をあげるのだ。
突撃と言って、葬式の邪魔をするインフルエンサーも出始めた。
殺されたり、理不尽な死に方をするほど、数値は高くなる傾向にあった。
そして僕は尊、湊、楓真と共にインフルエンサーをしていた。
生配信で、マンションの五階から植木鉢を落としてみて、当たって死んだら快楽指数百二十。
小学生ぐらいの子供を突き飛ばして、車に轢かせたら快楽指数百五十。
有名人を刺したら快楽指数二百。
今や警察は装置を外した者を取り締まるだけで、人が死んでも、殺しても、一切動かない組織になっていた。
人気配信者が死んだ。
視聴者に煽られた挙句に、冬の雪山で滑落死したのだ。
自殺ではなかったのとライブ配信中だったので、視聴者たちの快楽指数は二百まで跳ね上がった。
本人はまだ見つかっていないが、おそらく視聴者たちの倍以上は数値が上がっていたと思われる。
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