表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その病、魔法じゃ治らない。異世界で鍼灸師をやることになった  作者: 夜凪レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/50

第22話 失われるもの

 噂が広がるのは、早かった。


「休む日を作る村がある」

「魔法を使わない時間帯を設けた街道宿がある」

「効率が、落ちたらしいぞ」


 どれも、事実だった。


 そして――歓迎されない事実でもあった。


「売り上げが三割落ちた」


 商人ギルドの男は、苛立ちを隠さなかった。


「確かに、体は楽になった。

 だが、数字は嘘をつかん」


 場所は、小都市〈ロウ=ケイン〉。

 ミナトが直接関わったわけではない。

 だが、彼の思想を聞いた者たちが、独自に動いた街だ。


「間違ったことはしていない」


 ミナトは、静かに言った。


「ですが――」


 男は、机を叩く。


「楽になるだけじゃ、街は回らない」


 リーシャが、口を挟む。


「じゃあ、壊れるまで回すのか」


 男は、言い返せなかった。


 別の場所では、もっと露骨だった。


「不便だ」

「遅い」

「昔に戻ったみたいだ」


 魔法灯を減らした街区では、夜が暗い。

 荷運びは時間がかかる。

 利益は、確かに下がった。


 だが――


「……頭痛が、出なくなった」


 老女が、ぽつりと言う。


「夜、眠れる」


 誰もが、同じ恩恵を受けるわけではない。

 失うものが大きい者ほど、反発する。


「責任を取れるのか」


 地方領主が、冷たく言った。


「この不便で、他国に遅れを取ったらどうする」


 ミナトは、答えた。


「取れません」


 即答だった。


「だから、決めるのはあなた方です」


 領主は、顔をしかめる。


「無責任だな」


「はい」


 ミナトは、認めた。


「でも――

 壊れた責任は、もっと取れません」


 沈黙。


 領主は、結論を出さなかった。

 街は、半分だけ“休む”ことを選んだ。


 中途半端な選択。


 結果は――中途半端だった。


 楽にはなった。

 だが、回復は遅い。

 不満も、減らない。


 その夜、リーシャが言った。


「全部は、うまくいかないな」


「はい」


 ミナトは、頷いた。


「それでいい」


「いいのか?」


「世界は、実験場じゃない」


 完璧な解答を押しつけること自体が、暴力だ。


 翌朝、街を出るとき、若い商人が声をかけてきた。


「……俺は、続ける」


 迷いのある目だった。


「利益は減った。

 でも、倒れなくなった」


 ミナトは、頷いた。


「それで十分です」


 去り際、背後から罵声も聞こえた。


「理想論者め」

「便利さを返せ」


 ミナトは、振り返らなかった。


 治療師は、

 全員に好かれる必要はない。


 壊れない選択肢を、

 残せばいい。


 それだけで、

 仕事は終わる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ