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その病、魔法じゃ治らない。異世界で鍼灸師をやることになった  作者: 夜凪レン


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第15話 街を休ませる

 夜になっても、都市は眠らなかった。


 魔法灯の半分が消え、街道の一部は暗闇に沈んでいる。

 結界の出力は落とされ、騎士たちが通常より多く配置された。


「不便だな……」

「でも、体は楽だ」


 人々の声は、割れていた。


 不満と安堵。

 混乱と、静けさ。


 診療所では、異変がはっきりと現れていた。


「呼吸、安定しています」

「脈も、戻ってきてる」


 魔導師たちの声に、焦りはない。

 数刻前まで、追い詰められていた空気が嘘のようだった。


 ミナトは、壁際に立ち、ただ見ていた。


 ――効いている。


 劇的ではない。

 だが、確実だ。


 リーシャが、隣で呟く。


「……英雄扱いされないな」


「それでいい」


 ミナトは、即答した。


「英雄は、また壊す」


 そこへ、ヴァルドがやって来た。


「街の外れで、魔獣が出た」


 ミナトは顔を上げる。


「結界が弱まった影響か」


「ああ。だが――」


 ヴァルドは、短く笑った。


「対処できている。

 騎士は、まだ動ける」


 リーシャが、静かに言った。


「壊してまで、守らなくていいってことか」


「……そうだな」


 ヴァルドは、遠くを見る。


「今までは、“止まれなかった”」


 都市中央区では、簡易集会が開かれていた。


 貴族。

 商人。

 協会。

 騎士団。


 誰もが、完全には納得していない。


「いつまで、この状態を続けるのだ」

「街の信用が落ちる」

「物流が――」


 不満が、次々と出る。


 ミナトは、壇上に立たなかった。

 代わりに、セリオスが前に出る。


「……都市は、患者です」


 静かな声だった。


「治療には、休養が必要です」


 ざわめき。


「完治はしません」


 その言葉で、空気が変わる。


「だが――」


 セリオスは、はっきりと言った。


「崩壊は止まります」


 沈黙。


 それが、現実だった。


 都市は、完全には治らない。

 だが、今までのやり方では――確実に壊れていた。


 集会の後、ミナトは一人、街を歩いた。


 暗い路地。

 消えた魔法灯。

 それでも、人の気配はあった。


 休んでいる街。


 子どもが、座り込んで言った。


「……今日は、眠れそう」


 その一言で、十分だった。


 翌朝。


 魔法炉の出力は、完全停止ではなく、周期制御へ移行した。


 昼は稼働。

 夜は休止。


 街は、不便になった。

 だが――


「頭痛が、なくなった」

「息が深い」


 人々の声は、少しずつ変わっていった。


 セリオスが、ミナトに書類を渡す。


「公式記録だ。

 “都市規模流脈過労”」


「……病名がつきましたね」


「名前がつくと、向き合える」


 ミナトは、書類を受け取り、静かに言った。


「流脈調律師は、便利ではありません」


「分かっている」


 セリオスは、少しだけ笑った。


「だからこそ、必要だ」


 リーシャが、伸びをする。


「次は?」


 ミナトは、空を見上げた。


 都市は、まだ完全ではない。

 だが――息をしている。


「……同じ症状が、他にもあるはずです」


 リーシャは、頷いた。


「世界、か」


「ええ」


 ミナトは、静かに答えた。


「世界の方が、過労です」


 都市〈アーク=レイン〉は、

 治療の途中で、彼らを送り出した。


 英雄ではなく、

 救世主でもなく――


 壊さなかった者として。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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