表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その病、魔法じゃ治らない。異世界で鍼灸師をやることになった  作者: 夜凪レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/50

第13話 歪んだ善意

 騎士団本部を出てから、三日が経った。


 都市は、表向きは変わらない。

 魔法炉は回り、街道は賑わい、人々は忙しそうに行き交っている。


 ――だが、違和感は増していた。


「……あそこ」


 リーシャが、小さく顎で示した。


 商業区の裏手。

 簡易診療所の前に、人だかりができている。


「治療師が来たらしい」


「疲れが取れるって」

「一晩で楽になるって話だ」


 ミナトの足が、止まる。


 嫌な予感が、背中を這った。


 中に入ると、空気が違った。

 焔香に似た匂い。

 だが、雑で、強い。


 ベッドの上では、男が目を閉じている。

 顔色は、異様に良い。

 呼吸は深く、力強い。


「……成功だ」


 脇に立っていた若い治療師が、満足げに言った。


「流れを一気に通した。

 これで、しばらくは疲れない」


 ミナトは、何も言わずに近づいた。


 手首に触れる。


 ――速すぎる。


 流れが、過剰に走っている。

 本来の幅を越え、押し広げられている。


「……誰のやり方だ」


 ミナトの声が、低くなる。


「あなたのですよ」


 若い治療師は、悪びれずに言った。


「流脈調律。

 協会は正式承認していないが、禁止もしていない」


 リーシャが、息をのむ。


「……まさか」


「簡単だった」


 治療師は、続けた。


「詰まりを無理やり押し流せばいい。

 多少痛がるが、結果は出る」


 ミナトは、ゆっくりと首を振った。


「……それは、調律じゃない」


「同じだろう」


「違います」


 ミナトは、はっきりと言った。


「戻していない。

 壊して広げている」


 治療師は、鼻で笑った。


「結果がすべてだ。

 この人を見ろ」


 そのときだった。


 ベッドの男が、急に身をよじった。


「……っ!」


 呼吸が乱れる。

 顔色が、みるみる悪くなる。


「え……?」


 治療師が、慌てる。


「な、何だ……?」


 ミナトは、すぐに動いた。


「下がってください」


 手を伸ばし、針を取り出す――

 が、途中で止めた。


 ――違う。


 今、触れれば――

 反動が一気に来る。


「……無理だ」


 ミナトは、低く言った。


「この状態で触れば、崩れる」


「な、何を言って……治せ!」


 周囲がざわつく。


「先生、早く!」

「さっきまで元気だったのに!」


 ミナトは、歯を食いしばった。


「……水を。

 冷やした布を。

 呼吸を浅くしないで」


 それしか、できない。


 男は、数分後、意識を失った。


 ――死んではいない。

 だが、完全に崩れた。


 後日、結果が出た。


 男は、生きていた。

 だが――


「……戻らない」


 セリオスの声は、重かった。


「流れが、常に過剰反応を起こす。

 働くことも、戦うこともできん」


 ミナトは、静かに目を閉じた。


 若い治療師は、震えながら言った。


「……善意だったんだ」


「分かっています」


 ミナトは、責めなかった。


「だから、危険なんです」


 リーシャが、拳を握る。


「……こんなの、治療じゃない」


「ええ」


 ミナトは、低く答えた。


「便利な破壊です」


 この出来事は、街に広がった。


 流脈調律は、

 危険な技術だ、と。


 正しくもあり、

 正しくもない評価。


 そして――


 都市は、

 さらに追い込まれていく。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ