表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたたび天才(ジーニアス)  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

第22話『レンが仕掛けてきた』

決勝戦のホイッスルが鳴った瞬間、ユウトはすぐに違和感を覚えた。


 動き出した瞬間から、龍華高校の守備が“こちらの得意”を完璧に封じにきていた。


 ──サイドのスペースがない。中盤に縦のパスが通らない。セカンドボールが拾えない。


 チームとして積み上げてきた武器が、まるで事前に知られていたかのように機能不全に陥っていた。


 ベンチのレンが、腕を組んで冷静に指示を出す。


「早川ユウトのパスは“間”で来る。だから、その前の呼吸を潰せ。……間を作らせないことが、鍵だ」


 龍華の選手たちはその言葉通り、清嶺のプレーをことごとく“先に”潰してきた。ユウトがボールを受ける前に、プレスがかかる。味方が走り出す前に、パスコースが封じられる。


「……全部、読まれてる……?」と、後ろのMFが呟いた。


 その声に、ユウトは唇を噛んだ。


(あの人の頭には、俺たちの設計図が入ってる……)


 味方の“動き出すタイミング”、自分が“出したくなる局面”。すべて先回りされている。


 ──それでも、彼は焦らなかった。


 前半終了。ベンチに戻ったユウトは、静かに目を閉じていた。


(“理由”があるプレーは、すべて読まれる。なら……“理由のない”プレーに、意味を宿せばいい)


 後半、ユウトのプレースタイルが、明らかに変わり始める。


 パスのテンポが不規則になる。タッチ数が急に増えたかと思えば、ワンタッチで流す。トラップの方向も“らしくない”ズレ方をする。


 レンの表情が僅かに動いた。


「……“ズレ”を作り始めたか」


 まるで、パズルのピースが1つ、意図的に違う場所へ置かれたような感覚。ユウトの動きに、龍華のDFラインが戸惑いを見せはじめる。


 ユウトは思う。


(あの人の頭の中のピースから、俺が外れていけばいい。予測できない存在になれば、読みは無力になる)


 そして、試合終盤。


 ユウトはドリブルで相手2枚を引きつけたかと思えば、なぜか足を止めた。


 一瞬の“間”。


 観客席の誰もが固唾を飲んだ。


 そして次の瞬間、ユウトはノールックで、まったく見ていなかったサイドの裏へスルーパスを放った。


 走り込んでいたのは、FWのタケル。


「っしゃああああっ!」とタケルが右足を振り抜く。


 ネットが揺れた。会場が割れるように沸く。


 逆転。


 ベンチで、レンが小さく目を伏せた。


「……完全に、外された」


 清嶺イレブンがユウトに駆け寄り、歓喜の渦が生まれる。


 だがユウトだけは、じっとレンのベンチを見ていた。


 心の中で、こう呟いた。


(あなたのおかげでまたサッカーが楽しいと思えました。ありがとうございます)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ