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龍神さまの池のお話

作者: 網笠せい

 むかしむかし、あるところにごく普通の街がありました。街の中心は華やかでしたが、街外れには静かな時間が流れており、人々はゆったりとのどかに暮らしておりました。困ったこともあるにはありましたが、助け合って暮らしていたのです。

 池には龍神さまがおり、家族三人がそれをお祀りして暮らしています。

 あるとき、都会から池にやってきた人が言いました。


「この池の底にはすばらしい資源が眠っています。宝の山です。これを使って街を発展させましょう」


 三人の家族はその申し出にうなずくことはありませんでしたが、都会からやってきた人々は勝手に許可をもらったと思い込み、おおはしゃぎで池を掘り返していきました。

 池の底の泥がまきあがって水がどろどろに汚れても、土砂が崩れても、池の水を少なくしてそこに暮らしていた生き物たちがつらい思いをしても、都会の人々はお構いなしに工事を進めます。


「すばらしい資源だ! これは使えるぞ!」


 そうして都会だけが発展していきます。街外れは資源を奪われるままでした。

 龍神さまは大層お怒りになりましたが、龍神さまをお祀りしている家のお母さんが「人間に危害をくわえてはいけません。どうか怒りをおしずめください」とくりかえし止めるので、がまんしました。がまんしすぎて、龍の長いおひげをかきむしるほどです。

 お母さんは都会からやってきた人々と話し合いをしようと、何度も「なぜこんなことをするのですか。やめてください」と伝えましたが、欲に目のくらんだ彼らは止まりませんでした。

 しまいには「龍神さまの池」をおもしろいと言い出した人々が、龍神さま音頭だの、龍神さま饅頭だのとよくわからないブームまで作ったものですから、龍神さまはすっかり池から出たくなくなってしまったようです。たまに出かけても数時間で帰ってきて、ごろごろとおひげに雷をためます。


「最近太ったけど、飛べるかなあ」

「リングフィットならありますけど、やりますか」

「龍でもできる?」

「それはわかりません。試してみたら」


 ある日のことです。

 龍神さまをお祀りしている家族の娘が、工事が原因でケガをしました。お母さんの堪忍袋の緒が、とうとう切れました。龍神さまも逆鱗という言葉の通りに激怒しました。お母さんは龍神さまの怒りを、もう止めることはしませんでした。


 都会からきた人々に大きな災害が降りかかります。

 機械は壊れて工事は中止になりましたし、少なくなっていた池の水は大雨であっという間に増しました。そうして都会の、池の資源を使った建物や道路では事故や災害が多発しました。

 都会の人々は信心深くありませんので、当初龍神さまの怒りが原因だとは思っていませんでした。しかしあまりにもたくさんの厄災が起こるので、しだいに怖くなってきました。


「事情も話さずに勝手に工事を進めたんだって!」

「契約もしていなかったんでしょう?」

「あれだけ資源を使ったのに一円も払ってないなんて、泥棒みたいなものだ!」

「触ってはいけないものを、よりによって壊そうとしたって聞きましたよ」

「たたりや呪いって本当にあるんだな」


 工事を進めた人々やブームを企画した人々は、すっかり肩身がせまくなってしまいました。龍神さまとお母さんにいろいろなものを持っていって謝りますと伝えましたが、とりつくしまもありません。子供を傷つけられたのだから当然ですね。


 お母さんは警察と弁護士に相談しました。

 時間は少しかかりましたが、警察から「捜査をしました」という電話がありました。そうして、とうとう都会からきた人々の不法行為を訴えたということです。

 こうして街外れの池は、やっと静かになりました。都会から騒がしい人々がやってくる前の、おだやかな暮らしができるようになりましたとさ。

 めでたしめでたし。

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― 新着の感想 ―
ざまぁは大昔からの伝統ですね
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