第31話 リカちゃんのお父さん
ニック様、怒っているんでしょうか?嫌だなぁ、マリーは妊娠したことを告げていないんだから。リカちゃんのお父さんからすれば、突然最愛の彼女が消えた…。って事じゃないのかなぁ?と私は思うんだけどな。
「ニック様。リカちゃんのお父さんの目星がついたんですか?」
「ああ、王宮騎士団に瞳が黒色なのは一人だけだ」
誰だろう?救護室にそんな人来たかなぁ?来た記憶がないから、なかなかの強者よね。あと、チャラ男じゃないわ。
「王宮騎士団副団長の男だ。名前はキース=セルビアヌスだ」
「その人の家というか爵位は?」
「侯爵」
はぁ、侯爵が平民と結ばれるのはちょっとなぁ。いや、私は平民ながらも王子と結婚しましたけど!
「身分差とか考えてマリーは身を引いた感じかなぁ?」
「かもなぁ。しかしだ。王宮騎士団は身分など関係なく実力主義だ。あの男は実力で副団長をしているんだ。一度マリーと会わせるか?」
「偶然とか装わずにですか?」
「ああ、俺がこの城に呼び出す」
マリーにも何も伝えずにキース副団長を城の応接間に呼び出した。
「初めまして?団長の妻をしてますセアラです。お会いしたことあったかな?」
「初めましてであっていますよ。団長夫人」
団長夫人。『夫人』という言葉が頭の中でエコーがかかっている。
「お前に会ってほしい人がいるんだ」
ニック様、あまりにも直接的。かつ、突然です。
「私は生涯結婚する気はないと家族にも伝えています!」
なんと!キース副団長はそんなつもりだったの?
「不躾ながら、理由をきいてもいいかしら?」
「では、夫人に……。昔、惹かれた一人の女性がいました。しかしそこには拭い去れない身分差が!?こればかりはどうしようもないのです。そうこうしているうちに彼女は私の元から消えてしまったのです。今も彼女はどこで何をしているのやら。そんな彼女を想い続けているので、生涯結婚は出来ません!」
ふーん、キース副団長は随分情熱的なのね。
その彼女、この城でうちの子達の乳母をしてるわよ。
「はぁ⁈身分差?俺なんか、王子だけどよぉ平民だったセアラと結婚しちまったぜ?」
「団長は陛下が色々と手を回したからできたんですよ。うちはただの侯爵家。それでも平民の彼女を幸せにすることはできないんです」
「後ろ向きで暗いやつだなぁ。知ってたけど」
私はリカちゃんを抱っこするマリーを連れてきた。
「マリー、この方ご存じ?」
「あ、え…っと」
「マリー!!」
キース団長がマリーに抱きついた。
「マリー?この子は?…というかこの眼の色、私の子なんだね。妊娠したから私の元を去ったのかい?私は君となら爵位を捨ててでも一緒になりたかったというのに!」
「勝手に貴方の子を産んでしまい申し訳ありませんでした。でも…どうしても産みたかった」
「君のお父さんは私達の交際に特に反対だったからね」
あの爺さん……。
「でさぁ、キース副団長はこの後どうするの?」
「もちろんマリーと何としてでも一緒になるつもりです!」
キース様だって本気になれば、平民になる事も厭わないでしょうね。
「ん?そうなると、キース、お前は城で暮らすという事になるのか?」
「マリーは今は住み込みでしょうね。私は単身で城の外で暮らしますよ」
「いいですよ~。マリーと一緒にいたいでしょうし。家族水いらずで過ごしてください。城には有り余るほどの部屋がありますし」
「いいんですか?セアラ様、ありがとうございます!」
ニック様にもお礼を言ってあげてください。
「俺は城でもキースの顔を見るのかと思うとちょっと嫌な感じがするけどなっ」
「団長、それはお互い様です。互いに顔を見ると仕事の事を思い出してしまうんですよね」




