第3話 平民である薬師
「邪魔なもんかー」
「セアラちゃんが見ててくれるなら百人力だ!」
「俺は怪我をセアラちゃんに診てもらいたい」
「不純な目でセアラちゃんを見るな!」
「…ニック様。私はこのままいるべきでしょうか?退散するべきでしょうか?」
「うーん。団員がセアラちゃんを望んでいるからねぇ。このまま見学するのがいいんじゃないかな?君もどんなものかわかって薬が作りやすいんじゃないか?」
確かに。どの程度の傷なのかもわかるし。お邪魔しちゃっていいのかな?
「では、見学という事で。『打ち身・打撲・捻挫』と思しき方は薬を塗るので来てください。
なぜ?かなりの団員が私の所に…。そんなに怪我が多いの?薬をいっぱい作らなきゃなぁ。
「セアラちゃんに薬を塗ってもらったら早く治るような気がする」
「気のせいですよ。薬の効果は皆一緒ですよ~」
「いやいや、病は気からって言うし」
外傷はどうなんだろう?
「セアラちゃん、婚約者とかいないの?」
「一応、平民として暮らしてるから、そんなのいませんよ」
さすがに騎士様達が私を見る目が変わるかな?
「そっかぁ。苦労してるんだね。俺も平民の叩き上げ騎士でさぁ。体育会系だから騎士団もなかなか大変なんだよね」
騎士団の家柄カーストみたいな?嫌だなぁ、そういうの。
「団長はそういうのなくして、完全実力主義にしてくれてさぁ。俺は助かってるよ。実家に仕送りだってしてるんだぜ?」
平民出身騎士様も大変なんだなぁ。しかし、ニック様が実力主義って事は実力で団長ってこと?!かなり強いって事じゃん。
「なになに?セアラちゃん、婚約者いないの?」
「私は堂々の平民ですけどね」
「「へぇー」」
「セアラちゃん可愛いのにー」
「可愛さで爵位は買えないぞ!」
貴族はいろいろ面倒そうだから平民でいいのです。
「セアラちゃんはそのままで可愛いんだよ。なんでもいいんだよ。貴族の令嬢なんか俺は嫌だ」
そんな貴方は貴族様?ここでは爵位とか関係ないようですね。
「では皆さん、鍛錬を続けて下さい!」
「このままセアラちゃんと世間話してたら、団長にしごかれる…」
「やめてくれ。俺はそれで地獄を見た…」
そんなに厳しい人に見えないのになぁ。見た目で判断しちゃダメなのか。
鍛錬を見る限り、本当に殿下は強いなぁ。
そして、ケガ人続出。なるほど、薬屋に通っていたわけだ。…ワザと怪我してないよね?
薬を作るのも結構大変なんだけどなぁ。…指先が臭くなるくらい。
「セアラちゃん、薬塗ってよ~」という騎士様が大量発生した。当然薬が足りなくなる。この分だと不足しそうだから、賜った部屋で薬を作らねば!
「薬が不足しそうだから、薬を作りに戻りますね。皆さん、鍛錬頑張ってください」
そう言って、私は薬を作りに部屋に戻った。
「セアラちゃんがいないんならなぁ~」
と、聞いた話だと私がいないとケガ人があまり出ないようで…今後あまり鍛錬の見学には行かないようにしよう。