第23話 攫われたセアラ
私はアムソーバリー帝国の皇帝をもう20年近く勤めている。父が早く亡くなったのも理由だが、それだけで皇帝を長く勤められるほど帝国は甘くない。
最近はクスリを売る事で、外貨を獲得することが出来ている。おかげさまで、クスリを作っている平民も売っている平民も皆、儲かっている。中には自分で使ってしまう愚か者がいるが。クスリは依存性が高いからそんな愚か者は廃人となって、家族や親類にも見放されているが。
そんな中、ウィナーズ王国の第2王子が最近婚姻をし、王子妃を溺愛しているという話を耳にした。なんでも、元平民で、王子と結婚させるために国王が伯爵位をその娘に授けたという話だ。
伯爵と王子でも身分差はあると思うが?そんなにその娘は魅力的なのだろうか?と騎士団に潜伏させていた男にその娘を攫わせた。
何のことはない、普通の娘だった。
この娘のどこに魅力があるのだろう?ウィナーズ王国の王家の者がこぞってこの娘のファンらしい。
「初めまして、ウィナーズ王国第二王子妃。私はアムソーバリー帝国の皇帝だ」
「初めまして、セアラと申します。ココはアムソーバリー帝国で間違いないですか?」
「アムソーバリー帝国の皇城だ」
「すみませんが、恐らくやがてウィナーズ王国国王陛下及び王妃陛下。王太子ご夫妻がいらっしゃるかと思います。どうぞ交渉をしてください」
~セアラ視点
アムソーバリー帝国かぁ。無駄に華美ね。いかにも『儲けてます~』って感じ。あっ、ところで私は妊娠してるのかしら?味覚も嗅覚も変化ないからわからないわ。
「食事だ」
出された食事は、懐かしい下町を思い起こさせるようなものだった。貴族としては質素なのかもしれないけれど、平民期間が長い私にこの食事はごちそう!
「あ~これ、好物なのよ~」
アレ?なんか変な匂いと味。他のものは大丈夫だったりダメだったりマチマチ。これは妊娠してるんだろうか?
「やっぱり結構食べ残したな。これだからお貴族様ってのは嫌なんだよ」
好きで食べ残したわけじゃないし。味が変って、なんかクスリが盛ってあったりしたのかしら?嫌だ。お腹の子供に悪いクスリだってあるじゃない!
ん?ウィナーズ王国国王夫妻と王太子夫妻が到着?って聞こえたような?
「「「「セアラちゃ~ん!」」」」
大声出し過ぎです。ハズカシイ。
国王というか、お義父様の要求はただ一つ。『第2王子妃であるセアラの解放』。
当然と言うか、一筋縄ではいかず、
「我が国の者が攫ったという証拠はあるのか?」
あー、よくあるパターンだね。実際にここまで連れてきたのは長年騎士団でスパイやってた叩き上げの騎士さん。ウィナーズ王国の人と言えばそうだもんねぇ。
「長年、騎士団でスパイをやってたここの国の子が連れてきたと思うのですが、違いますか?」
お義父様!騎士団にスパイがいるって知ってたんですか?しかも放置?
「ハハハ。ですと、我が国の騎士が攫ったとは言えないのでは?」
「ですが、この国の出身者ですよね~?」
これが…よく言う‘狸とキツネの化かし合い’というやつだろうか?
「そういうことなので、セアラちゃん…第2王子妃は連れて帰りますよ?」
「仕方ありませんね。まぁ、今回はこちらに非がありますし」
「「ハハハ」」
見えないけど、これ絶対目が笑ってないやつだ……。
そんな感じで私は無事にウィナーズ王国に帰ることができた。
私を攫ってアムソーバリー帝国に連れて行った人も一緒に。彼は今後騎士団でビシバシとしごかれるらしいです。同僚からも睨まれ、もちろんニック様に目はつけられ、かなり救護室に来る確率は高くなるけど、恐らく監視付き…。実生活も監視付きなんだろうな。トイレやお風呂まで。リラックスできないじゃん。不憫…。
でもまぁ、私の妊娠疑惑を‘セアラちゃんを愛でる会’の皆様がご存じだったらこんなんで済まなかったかも……。




