表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/37

第2話 騎士団での薬師

 翌日、この間なんだか言いがかりを言ってきた貴族令嬢がまたやってきた。

「この程度の薬屋のどこがいいのかしら?そこの薬師?本当に薬なんか作れるの?嗚呼、惑わされるなんて嘆かわしや、ニック様。この私がこの薬師を成敗致します」

 マジで?私は殺されるの?

「誰が惑わされてるって?」

「ニック様!こんな平民の薬師なんかに興味を持たないで私のような貴族令嬢に!」

「残念だけど、セアラは君よりもずっと賢く、薬の調合も彼女がしている。彼女の手を見れば一目瞭然!さらに、恐らく彼女の指先からは毒々しい香りがするのでは?」

 スゴイ言われようだなぁ。まぁそうなんだけどさ。薬を調合しまくってたから指先が臭っくなった。そりゃあご令嬢のきれいな指先よりも臭いわよ!

「殿下はそんな卑しい薬師なんかの臭い指先に私が劣ると?この私が!」

「うん」

 ハッキリ言いすぎだと思うけど。‘ご令嬢<私’という図式なんだろうか?うーん。殿下は薬師として私をかってくれてるだけよね、うんそうよ。と自己完結をしたものの。なんだか胸の辺りがつかえるような……。

「迷惑だから、来ないでね!じゃあねぇ」

 言ってる言葉は軽いけど、令嬢には残酷だなぁ。彼女はこれから婚約者探さないとだろうし。

 私は貯金もあるし、婚約者はそのうちなんとかなるさ~♪的に考えてます。



 その週の金曜日、薬屋の方を定休日として、私は騎士団の方へ行くことにした。

 へ?聞いたような気がするけど、迎えの馬車?

「団長より、セアラ嬢に傷一つつけずに騎士団の方へ迎えるようにと仰せつかり、迎えに上がった次第です。どうぞ、この馬車にお乗りください。セアラ様になにかがあっては私どもの首が物理的に飛びます」

 あー、言ってた約束かぁ。確かに騎士団への行き帰りの間に誘拐とかありそうだもんなぁ。そして、私になんかあるって念書を書いたのか…。お疲れ様です。

「店番はこの男がしておきますから、気兼ねなく騎士団のほうへ来てください」

 一人で店を護衛するのか…大変だなぁ。せめて二人にしてあげれば……。あと、昼ご飯はどうするのかな?まさか昼抜き?今度から店の護衛をしてくださる方のお昼ご飯にちょっとしたものでも作っておこう。



 騎士団に着いた。

 その間、何もなくて良かった。私に何かあったら騎士様の命が危ないから。



 騎士団ではニクソン殿下が両手を広げてキラキラと出迎えてくれた。

「ようこそ。王国騎士団へ。道中君に何事もなくよかったよ」

 全くです。本当に。

 私が仕事をするという部屋に案内されてかなり驚いた。

 私が用意しておいてほしかったものはほぼ網羅されており、素晴らしい労働環境。

「あの…この部屋を使っていいんですか?」

「もちろん。そのために用意した君だけの部屋だ。何か不足があるかな?」

「いいええ?」

 これ以上はないというほどの物が揃っていた。

「それじゃあ、私は鍛錬などをしているから。セアラ嬢が迷子にならないように、建物内に看板を設置した。鍛錬は闘技場でしている。何かあったら、呼んでくれ」

 


 そして私は一人で仕事をすることになった。

 ……何が必要なんだろう?剣術とかで打ち身とかかなぁ?


 私の予想外の患者さんが運び込まれた。

「こいつ、水分も碌に取らないで炎天下で運動するから多分脱水症状……」

 そんなの…口移しで無理矢理水を飲ますんだけど。私がやるの?

「えーっと、口移しで無理矢理水を飲まさなきゃならないかなぁ?」

「それなら、ここにある。これ。便利ですよ。口移しが必要な時用の魔道具。確実に飲ませられますから!」

 それなら、と、私は生理食塩水を作った。しょっぱい?と味薄いかなぁ?の間くらいでレッツゴー!

「さぁ、グッと飲んでください。私は1リットルくらい用意しましたからね!」

 多分、すごくトイレに行きたくなる。

 グッと飲んでいただきながら、脇の下とか冷やしていました。

「ブッ、しょっぱい!そして、トイレに猛烈に行きたい」

「いってらっしゃ~い♪」

 まさかの患者さんでびっくり。元気になったみたいで良かった。とはいえ、完全回復じゃないので、少し休んで行ってください。と言った。


 そっかぁ、熱中症とか脱水症状の患者さんも出るのかぁ。騎士様って大変なんだなぁ。そうだよね、暑いのに鎧とか着てるんだもんね。


 あれ?今までこんな患者さんはどうしてたんだろう?うちの薬屋には脱水症状の人に効く薬は置いてないし、殿下が購入されたものはだいたい『打ち身・打撲・捻挫』に効果があるものだったはず。

 闘技場に打ち身の薬を持って行ってみようかな?



「殿下!先ほど脱水症状の方が私の所にいらっしゃいました。口移しで無理矢理水を飲まさなきゃならないのかと思いましたよ!連れて来てくれた方が便利な魔道具を教えてくださったので助かりました」

 なぜでしょうか?私の方に視線が集まります。

「女だ。女がいる…」等の単語をよく耳にします。

「騎士の皆様、初めまして。本日より週に2回騎士団で薬師をすることとなりました。セアラと申します。何かありましたら、救護室の方へいらしてください。私は普段救護室で薬を調合しています。今日は、『打ち身・打撲・捻挫』に効果のある薬を持参して鍛錬の様子を見に来てみました。お邪魔になりそうなので、騎士団長のニック様に薬を渡して、私は退散いたします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
嫌味なご令嬢の登場シーンからだね。ニック様は、結構辛口にはっきりとものを言う御仁なんだね。「迷惑だからこないで!」ってご令嬢に言っちゃうし笑笑。それにしても、破格な待遇だよね。留守時の家の警護、騎士団…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ