第13話 ニックとセアラ ④
その日の晩餐は家族揃っていたし、豪華だった。……誰かのお誕生日なのかしら?
「この度、うちのニクソンと可愛い可愛いセアラちゃんが無事交際をすることに決まった。そのことを祝しての晩餐である」
飲んでいた紅茶を吹き出すかと思った。無事のみ込むことに成功したが。ニック様はむせていた。
「陛下、何もこんなに晩餐を豪華にしなくても…。誰かの誕生日なのかとすごく考えました。ジェイムス王子殿下の誕生日はまだ先ですし……」
「セアラちゃ~ん、私は『お義父様』と呼ばれたい」
「いや…あの…それは陛下ですし」
陛下がブーイングをしてまで抵抗しだした。
「それに、婚姻までするのかはわかりませんし」
ニック様が見るからに凹んでる……。いや、別れるつもりもないんだけど。婚姻ってウィナーズ王国騎士団長であられる第2王子(継承権は放棄しているハズ)と街の薬師(男爵位)ではあまりにも身分差が……。
「あ、セアラちゃんもしかして身分差気にしてる?なんならニクソンを廃嫡しちゃう?」
「それは乱暴では?」
「うーん、セアラちゃんが言うならなぁ。セアラちゃんを形だけ高位貴族の養子になってもらって。あ、紙切れの上でだけだよ。身分差を解消しようか?私がいきなりセアラちゃんに侯爵位とかあげるよりも自然だろう?」
「せめて、子爵位か伯爵位くらいにしてください」
「そうだなぁ、伯爵位のとても優秀で、王宮の騎士団に勤める王家にもめでたい薬師なら王位継承権を放棄した第2王子くらいと婚姻するのに問題はないかもなぁ」
はっ、ズルズルと気づいたらニック様と結婚することに⁈ 王家とか貴族って恐ろしいわ。引きずり込むように、自然な流れで主権を握る話術!
「セアラちゃんはニクソン様と結婚してくれるのね?やっぱり私はお義姉様になれるのよ♪」
「私はお義兄様か?」
あの……陛下と王妃殿下をお義父様とかお義母さまとか呼ぶのはまだ無理です。平民のノミの心臓を考えて下さい。畏れ多い。
「「ぶぅー」」
二人そろってぶうたれてますけど、この心臓では無理です!
最初は二人の交際を祝していたはずなのに、途中から私はニック様と結婚することになった。プロポーズされてないんだけどな。
「なんか家族が悪ノリしてスマン!」
「だから王家の人はそんなに簡単に頭を下げないで下さい」
「えーっとだなぁ。誰もいないよな?」
さっき、王妃様が突然現れたからか目視で周りを確認している。
「きちんと口に出して言わないとな。セアラさん、不肖ニクソン=ウィナーズと結婚してください!」
「よく言った。息子よ!」
「どこから現れるんですか。こうなるから、目視でキチンと確認したハズなのに……」
私は返事を言ってないんですけど……。
「セアラ、もう最後の手段だ。俺の部屋に来い!」
「セアラちゃん、このまま朝まで出てこなくてもいいからね~!」
ニック様が赤面されるんですけど?殿方に赤面されると、なんだか……。
「やり直し!セアラさん、不肖ニクソン=ウィナーズと結婚してください!」
「私でよろしければ、お願いします!」
本当にいいんだろうか?滅茶苦茶美丈夫で、強くて、背も高くて、気遣いも出来て……。非なんてあるのかな?
‘不肖’って本当に‘不肖’だろうか?全く不肖じゃないと思う。
などと考えながら思わず抱きついてしまったが、この部屋のベッドが視界の端に入ってしまった。体が緊張で硬直する。
「キチンと初夜までは清い交際を続けようと思う。あの父上の事だから、セアラを陞爵するための書類作りとか猛スピードでするだろうな」
美丈夫の笑顔が眩しくて心臓に悪いデス。でもこれからはずっと一緒なんだから慣れないと!
それにしても、ニック様は真面目だなぁ。世の中の男性はこんなシチュエーションになったら、迷わずに押し倒すだろうな。騎士団長たる鋼の精神だろうか?
「それじゃあ、おやすみなさい」
私は隣の部屋(借りている)まで送られた。
部屋を出る時は大変だった。陛下・王妃殿下・セイムス殿下・ロゼット様と皆が戸に張り付いて聞き耳を立てていた。
「はぁ、陛下も懲りないですね。書類作り頑張ってください」
私は赤面で皆様を指さしてしまった。普通ならこの時点で不敬罪です。
「え~?ニクソンが最後までできるのか見届ける(聞き取る)必要があると思ってさ!」
爽やかに言ってもダメです。この調子では二人の初夜すら戸に張り付きそうです。護衛の人は何をしているのでしょう?と思っても、陛下がすることだから、口出しできないよなあ。はぁ。
あのあと、私が薬屋を営んでいた土地は国が買ったらしいです。ニック様のポケットマネー?




