第10話 ニックとセアラ ② ~ニック視点
「はぁ?お前、まだグズグズして何にもしてないの?どこまで紳士的というかくそ真面目なんだ?」
「うー」
「ほら、甥にまで言われてるぞ?」
そんなこと言ったってだなぁ?俺は権力で彼女を手にしても嬉しくないし、彼女との関係が壊れでもしたらと思うと臆病になってしまう。
「ニクソン殿下は本当に真面目なのねぇ。セイムス様から聞いてはいたけれど。行動がなんていうか初恋の乙女みたい」
騎士団長である自分が‘乙女’みたいと言われるのは心外だ。しかしそうなんだろうなぁ。義姉上がそう言うんだから。
「セアラちゃんは可愛いんだから、グズグズしてたら他の男に持ってかれるぞ?とりあえず、今は王城で暮らしてるから、手を出しにくいだろうけどな」
「そうよぉ、セイムス様の言う通りだわ。グズグズしてて、女慣れしてる男に持って行かれる可能性だってあるし。王城じゃなくて、実家の薬屋さんみたいな護衛もいないところで独り暮らしなんでしょ?変な男に襲われる可能性だってあるのよ!」
「あー!」
ジェイムス王子殿下にまで俺は叱責されるのか……。
「兄上は義姉上と政略結婚じゃないんですか?」
「そうだが?」
「いや、そのわりに二人ともラブラブというか……」
「あぁ、昔からお互いに好き合ってたからなぁ?ロゼット?」
「恥ずかしいじゃないの!セイムス様……」
義姉上真っ赤だなぁ。まぁ、好き合ってて、月に一度は顔を合わせて、幼かった美少女が美女になっていく様はいいんじゃない?俺には無縁な話だけど?
「お前にも政略結婚の話があったんだぞ?」
へ?
「隣国の姫なんだが、この姫に問題が発覚して婚約は破談!」
「そんな話が俺の知らないところで……」
「あったんだよ」
当事者に知らせるべきでは?父上!陛下?
「そうそう、お前と全然釣り合わない貴族令嬢な、お前の希望通り一族で離島で暮らしてもらうことにした。家族離れ離れにしなかったのが恩情だな。当然、使用人とかいないよ。まるっきり自給自足で生活しないと生きていけないところ。更生するんだろうか?」
「単に修道院に入るよりも更生するでしょうね。修道院なら、中で横柄に動きそうですし。他の方の迷惑となります」
「お前……そんな女に好かれてたのか?お前のどこがいいんだ?」
「王家って肩書でしょうね。そこは外せないでしょう」
「おー」
王子殿下も納得のようだ。ほっと一息。
「そうねぇ、女性目線だとニクソン殿下は背も高いし、騎士団長でしょう?お強いでしょう?ってことは包容力もあるんでしょうね。筋肉もついてるでしょうし」
「よし、私が確認しよう!」
「兄上、ワキワキと手を動かすのはやめて下さい」
目視でいいだろうに、義姉上から遠い所で脱がされて、目視された上に。腹筋を殴られた。
「おお、鍛えられた腹筋を殴ると殴った方の手が痛いというのは本当なんだなぁ」
そんなことを調べるため?脱がなくてもよかったのでは?
「報告!ニクソンの体はイイ感じに筋肉がついている。筋肉だらけというわけではなく、筋肉でしまった肉体という感じで、腹筋は殴ると痛い」
殴る必要あったのか?完全な兄上の興味だよなぁ。
「うー」
「なんだ?ジェイムス、自分もそんな体になりたいって?あと15年は先の話だな」
王子殿下、小さなうちに筋肉をつけると背が伸びないんですよ?
「ところで、ロゼット!ロゼットはニクソンみたいな体の男がいいのか?」
「いやだ、ヤキモチですか?私はセイムス様一筋ですよ。筋肉の話は女性の一般論ですね。ゼイ肉でブヨブヨで脂ギッシュな男性よりも筋肉でシュッとしている男性の方が好まれますわ」
極端だな……。
「ふむ。義姉上の理論でいきますと、セアラは騎士団の者なら誰でも…ということになりませんか?」
「無自覚なのねぇ。大切な家を守ってくれたり、自分に対して『特別』に接してくれた異性ということになりますよ?」
「レンアイというのは難しいのですね。俺にはまだ早いような気がします」
「お前~、いい歳こいて恋愛の一つもしていないというのはどうかと思う」
「う」
ジェイムス王子殿下まで……。
「だいたいなぁ、騎士団の男なんて皆お前よりも恋愛経験豊富だろう?」
そうなのか?剣術に一途なのは俺だけか?
「そうよねー。そんな男性の中で働くセアラちゃんはさぞかし可愛がられているでしょうね?可愛いし」
「ロゼットもそう思うか?狼の中に羊を放り込むみたいな気持ちだよ、私は。いつかセアラちゃんが騎士団の誰かにとられるんじゃないかと思って、気が気じゃない。それもこれもニクソンがしっかりしてないからだ!」
「う!」
ジェイムス王子殿下のツッコミが地味に好きです!




