5どうしてこんな事に?
エルランド国はかなり昔、戦争で人口がかなり減った。
その時から子供を増やすことに国費を費やして来た。そのおかげと言うかそのせいと言うか妊娠にはできやすい周期があることを発見したのだ。
月のものが終わり一週目から二週目が妊娠する最も有効な時期だという事を子供の時に学習する。だからみんな知っている。
ただ、月のものが不安定な人には不向きなのだがミモザは28日~30日周期と決まったようにあるので好都合だった。
きっとそんな事も調べたのだろうと思うほど…
最初からそのためだけの結婚だったのだ。
ただ夫に愛人がいて夫に相手にしてもらえないから父親が変わりにミモザと閨を共にすることになったのは結婚して半年が過ぎた頃だった。
なぜ?どうしてそんな事になった?
義理母のリリーがミモザに泣いて縋ったのだ。このままではキャメリオット公爵家の跡取りが出来ないと。
ヴィオラとの間に出来た子供には絶対に跡を継がせられないとリリーは言い切った。
ミモザの生んだ子だから跡取りに出来るのだと…
ミモザは美しい銀色の髪をしていて瞳は透き通るような碧色。これは王族カラーと呼ばれる色でリリーも同じ銀髪と碧色の瞳を持っていた。
リリーはその色にこだわっているのだった。
だからヴィオラの薄い金髪や枯れ葉色の瞳になんか興味はないのだった。
ミモザはある種のマインドコントロールのようにリリーの言葉に陶酔するようになる。
あなたしかいないの。
あなたにしか出来ないの。
すごく大切ですごく名誉な事なの。
ミモザはリリーの申し入れを受ける事にした。
だが、間違っていた。
これではまるで獣と同じではないか。子にはそっぽを向かれ親に身体を奪われただ後継者を孕むためだけに子種を受け入れる。
しかも義理父は公爵家の血を引き継いでいるわけでもない。
ミモザは後ろ向きに寝てあそこに潤滑油をたっぷり摺りこまれ義理父の勃ったものを突っ込まれるだけの行為。
お互い無言。
吐精間際、義理父の喘ぐ吐息だけが部屋に響くだけの行為。
ミモザは息を殺して感情を殺してまるで屍のようにじっとしているだけの行為。
そこには一切の感情などない。
何も感じるものもなかった。
ただの行為だけが存在していた。
その夜扉がノックされる。
「ラウラ?」
ミモザは尋ねた。もう寝る支度も終わっている。
「ミモザ?怪我はどうだ?まったくお前ときたらいきなり飛び出して…どれだけ心配したか。ほら、見舞いだ」
そう言って義理父が機嫌良さそうに部屋に入って来た。
片手には小さな花束を持って…
ミモザは唖然となる。
これまでこの行為をするときにそんな感情的な事を言われたことはなかった。
枯れた花、パンの切れはしのひとつももらった事はなかった。
(気持ち悪い。何を考えてるんだろう?これからやることは義理母から聞いて知っているはず。今夜は無理に決まっているじゃない!そういえば今日の執務室の態度もおかしかった。こいつは何をする気なんだろう?)
そう思ったらぞわりと背筋が凍る気がした。
前世も思い出したばかり。
そうでなくてもセルカークにされた仕打ちに心はだだ下がりな時に…
いやな予感がミモザの頭をよぎった。