25セルカーク喜ぶ
それから数日が過ぎた。
セルカークが郊外から帰って来た。
「こ、これは一体。おーい。ミモザさんどうなってるんだ?」
セルカークが声を上げて屋敷に入って来た。
セルカークが驚くのは無理がない。
彼が出かけている間に職人に入ってもらい庭をきれいにしてハーブや花を植えた。
ラベンダーやカモミール。ドクダミやヨモギ。ヒヨスにジキタリスのような毒草も痛み止めや心臓病にきく。そのほかにもパセリやアロエなどなど…
どれも薬草になり食べれるものもある。
まだ苗木なので今すぐに採取できるものは数が少ないが、いずれはかなりの病気に対応できる薬草がここで手に入るようになるだろう。
「お帰りなさい先生。驚きました?」
「ああ、驚くなんてもんじゃない。これだけの種類良くそろえたな」
「薬屋や薬草関係は無理でも植木職人が持っている苗木は何の問題もなく手に入ったんです。ここで育てればもう売ってもらわなくても困ることはないですからね。それにテルヒさんも手伝ってくれたんですよ」
「ああ、すごいよ。まったくミモザさんは天才だな。良く思いついたもんだ」
「まあ、昔、この庭で少しばかり花やハーブを育ててた記憶が役に立ちました」
「えっ?今なんて?昔ここでハーブを育ててたって言ったのか?それってどういうことだ?」
「いえ、違うんです。私ったら自分の自宅で母と一緒にハーブなんかを育ててたのが思いつくきっかけだったんですよ。もう、嫌ですよ。先生疲れてるんですね」
ミモザはセルカークのせいにして苦しい言い訳をする。
「ああ、そういう事か…俺の聞き違いか。そうだな。かなりハードスケジュールだったからな。ほら、こんなに薬草を…持てなかった分は荷物にして送ったから明日には届くはずだ。これだけあれば当分傷薬や熱さまし、咳止めには困らないだろう。とにかくすごいな」
セルカークは疲れも吹き飛びと言わんばかりに喜んだ。
ミモザはそんな彼を見て良かったとつくづく思った。
(もう、私ったらどうしてそんなに彼の為に…でも、迷惑をかけたのは事実なんだしこれくらいは恩返ししてもいいんじゃない。
まったく、こんなはずではなかったのに彼の為に何かをする事にこんな喜びを感じてしまうなんて。
数日見なかった彼を見た途端うれしくなって。
話をするだけでこんなに気持ちが昂るなんて、ほんとにどうかしているわ)
ミモザの頭の中に否定と肯定が交互によぎり自分でもおかしいと思う。
とにかく、これで恩は返した。
明日にでもここを出て行かなくちゃ。
今度こそ住まいと仕事を探そうとミモザは決めた。




