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16リックの話


  リックは私たちを聞き取りをする小さな部屋に連れて行った。

 「お前な。いくら身内だからってこんな事困るんだ」

 リックは少し怒っている。腕組みをして足先をコツコツ鳴らしている。

 「ああ、俺だってそれくらいわかる。でも、ほんとに緊急なんだ」

 「わかった。それで」

 リックの眉はぐっと上がる。


 ミモザとセルカークは座らされて話を聞かれた。

 ミモザは一昨日の事を簡単に説明して証明書を見せた。

 義理母はどんな手段を使ってもそれを事をやめる気はない事も話す。

 夫は昨日診療所にやって来て二度と屋敷に入れないしミモザとは関わらないと性的に興奮しないとも言った。これも証明書がある。

 「要するにあなたの夫はあなたには興奮しないという事ですね?これは性行為不能法で離縁が可能です。それと義理父の暴行は耐えれる限界を超えてますので耐えがたき法に該当します。ですがお母様に強要された事はあなたが拒否すればいい事ですよね?それとも何かしらの脅しを受けたとかあれば別ですが?」

 リックはさらりと言う。あくまで法的な適用が出来るかの話だ。


 この国には貴族にのみ耐えがたき法と言うものがあった。

 これは貴族という地位を利用して行われた罪に適用されるもので、賄賂や不正行為や暴行などの被害を受けたものが訴えることが出来る。

 他にも面白いネーミングの法がある。

 お茶法(関税法)

 羞恥法(純潔の女性を人前で肌を晒した人に対してむち打ちの刑)

 泥酔法(酔って裸を晒した人に罰金)

 チョコレート法(公共施設、待合所とか図書館などでチョコレートを食べると罰金)

 他にもあまりにも不作法な貴族に対しては恥さらし法(不作法した事を書いたものを本人の衣服に張り付け王宮の外門の前に立たせると言うもの)

 これをされると二度と不作法はしないだろうというかしばらく表を歩けないだろう。まさに恥さらしだ。



 (それにしても…離縁の理由がそれってどうなの?)

 「ちょっと待って下さい。離縁の理由は性的に興奮しないからでいいんですか?では、夫の愛人や義理母の強要は離縁の理由にはならないと?」

 (なにそれ?じゃあ、もっと早く離縁出来たんじゃ?)

 「まあ、そういう事です。愛人や跡取りを欲しがるのは貴族には良くある話ですので罪にはなりません。まあ行き過ぎているとは思いますが」

 そこはリックも同情はしているらしい。

 「では、それで手続きをします。あの…それで慰謝料とかはどうなるんでしょうか?」

 「夫に不備があるんです。もちろん慰謝料は取れるでしょう。ですが即決解決をお望みならばお互い慰謝料なしでと言う方もおられます。それにキャメリオット令息夫人の場合は義理父の暴行で慰謝料がもらえるはずです。があまり表立ってそれを出すのもと言われれば…まあ、そこはご自身でお考えいただくしかありません」

 「そうですか…」

 そう言われるとミモザも考えこんだ。恥をさらして時間をかけるかこのまま黙って離縁だけするか…


 でも、ライオスには慰謝料払うくらいなら離縁しないと言われそうだ。

 まあ別居と言う事でもいいがあの義理母の事。いつ何をされるかもわからないと思うとやっぱり離縁してきっちり縁を切りたい。

 こうなったら義理父の一件も表沙汰にするしかない。

 もちろん私が避難される筋合いはないが、人はそんな風に考える人ばかりではない事も知っている。

 そうなるとミモザが貴族として生きて行く事はほとんど無理かもしれない。いや、絶対に無理だ。

 再婚の話もないだろう。実家に帰るのも無理。

 あっ、父に報告もしなければならない。きっと私は子爵家とは縁を切られてしまうだろう。まあ、それでもいいがこれから先どうやって生きて行こう。


 

 その時だった。

 「心配するな。行くところがなければ家にいてもいい。診療所は人手が足りてないし住まいは決まるまで家にいればいいんだ」

 セルカークが優しくそう言った。

 (そうね。あなたを利用させてもらわない手はなかったわ。じゃ、言葉に甘えてそうさせてもらおう)

 「先生…ありがとうございます。おかげで決心がつきました。離縁の手続きをします。そして義理父も訴えます」

 「では、手続きをします。離縁の件は一度ご主人の話も聞く必要がありますのでこちらで話をしていただきます。耐えがたき方についてはまた後日審判があります。そこで審判が下ればすぐに慰謝料の話し合いになりますが…相手は宰相様です。それに判定は国王陛下ですので…そこは良くお考えいただいた方が…」

 リックはいいんですか?みたいな感じでミモザに聞いた。


 「おいリック。いくら相手が宰相だからって手加減する気じゃないだろうな?」

 「そんなつもりはない。だが相手は宰相だ。法務院にコネもある。一筋縄では行かないと思う。でも、罪を犯したのは宰相だ」

 「ああ、そうだ」

 ふたりは顔を見合わせた。

 


 「では、まずは離縁の手続きの話し合いをしますので、ライオス・キャメリオット公爵令息に聯絡を取ります。数日後になります。またご連絡しますので来ていただきますか?」

 「はい、数日とはどれくらい?」

 「そうですね。相手の都合もありますのではっきりとは言えませんが…」

 「面倒だな。あいつは王宮にいるはずだろう?今すぐ呼んでくればいいじゃないか。それにミモザ夫人は宰相が恐くて家にも帰れない状況なんだ。お前は彼女の様子を知らないから平気でそんな事が言えるんだろう!その辺を考慮してくれよ。何なら俺が連れて来るけど」

 セルカークは立ちあがって部屋を出て行こうとした。

 「セルカーク。関係ない奴が出しゃばると話がややこしくなるってわからないのか?もういい!ライオスが来ているか聞いて来る」

 リックは苛立ったように髪の毛をくしゃりと撫ぜつけると部屋を出て行った。







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