自分の黒歴史小説を読み返していたら、その小説の噛ませ犬キャラとして登場することになりました
遅刻を知らせるチャイムと同時に、俺、桐山要は教室に入った。
あたりは話し声で埋め尽くされており、チャイムすらも聞こえない始末である。
「よぉ、要。最近のシリーズは人気か?」
こいつの名前は山﨑琉心。俺の親友である。普段とはこうやって小説家になろうで投稿しているシリーズについての話をしている。
まあ、こいつもなろうをやっているの人間だからな。
「いや、全然人気でない。なんでかなぁ〜。やっぱり、『時』スキルってのが悪いのかなぁ。時って聞くといかにもチートってイメージだし。」
「なら、あの黒歴史小説を投稿すればいいやん。」
こいつのいう黒歴史小説とは、俺が中学生時代の時。俺が初めて書いた小説のことである。無論、あとから読み返してみてるとイタすぎたので、投稿はしていない。
「ヤダよ。イタイし。まずいあんなシリーズ投稿してもどうせランキングには載らないし。」
「そんなこと言うなって。どうせほぼネタ切れなんだろ?」
クソぉ。バレていたか。流石は俺の親友。こういう時の感の鋭さだけは一級品である。
まあ確かにそうだな。家に帰ったらちょっと読み返してみるか。
その日の夜。俺は真っ暗闇な部屋の中でスマホの電源を付け、某ウェブ小説投稿サイトを開く。そしてそのまま、流れるような作業でエゴサをする。勿論、ランキングには載らない。
はぁ。と、ため息を付いた瞬間だった。山﨑の言葉が、俺の脳裏をよぎる。
ユーザーホームページを開き、未投稿となっている欄の中にある、その小説を開く。
俺が中学の時、俺は初めて小説を書くことにした。それが、俺が黒歴史小説と呼んでいる小説である。その小説を、俺は読むことにした。
なかなかおもしろい。それが俺が書いた小説を読んだあとの感想だった。特に噛ませ犬キャラのカナメ。名前はあれだが、俺がオススメしたいのは、序盤は強キャラ。だけど加速していくインフレに飲まれていくキャラといういかにも噛ませ犬キャラ。というところである。言動や立ち回りも完全に噛ませ犬キャラなため、お気に入りキャラクターの一人である。
現実で、俺もこんなにはしゃげたらなぁ。そう思うが、ネットイキリ陰キャの俺からしたらそんな夢、叶うはずもない。
こんなキャラになれたらなぁ。
そう願いながら、俺はベッドで大の字になりながら、夢に落ちていくのだった。
夢だと思った。いや、どちらかといえば夢だと疑いたかった。
そう、俺は目が覚めた時には見知らぬ平野で横たわっていた。勿論見覚えなんてない。なのに、どこか既視感を感じた。
やがて、俺は自身の見た目を確認する。顔や髪型は分からないが、服装はわかった。
この緑色の上着。そしてその下に来ている黒のTシャツ。間違いない。俺ってもしかして、あの黒歴史小説の中に入っちゃった!?
驚きのあまり、夢だと確認するべく思いっきりほっぺをつねる。勿論、痛い。
やったぁぁぁぁぁ!俺、噛ませ犬キャラになったぞぉぉぉ!って待てよ。
そこで、俺は気づいてしまった。
「俺、中盤で死ぬくね?」
と。
好評であれば長編小説にしたいと思っております!個人的にも面白いシリーズだと思っているので、評価していただけると大変嬉しいです!