「死」
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「どんなに憎くても、人を殺してはならない」
なんてことを、誰かが言っていた。
「そんなの所詮。ただの綺麗ごとだろ」と思った。理性では分かっていたとしても、怒りや憎しみという真っ黒な感情に、人は抗えないんじゃないか、って。
でも、今になってやっと気付く。
奪ってはいけない命がある――ということに。
どんなことがあったとしても、凶器で人を傷つけてはならない、ということに。
ナイフが刺されば―血がでて、痛みも伴う。命に関わることだって、ある。
こんなに簡単なことを、今この瞬間も忘れてしまう。
傷ついた痛みを、苦しさを、辛さを―忘れてしまう。
「自分には関係ないんだ」と、「自分はただの傍観者で、所詮自分が動いたって、何の解決にもならなかったんだ」って。過ちに気付かないふりをして、何もかも忘れ去ってしまおうとする―
きっと――
一番悪いのは、私だ。
私が、お母さんにもっと早く意見をしていたら。
私が、自分の力でお母さんを止めていたら。
お姉ちゃんは―死ななくて良かったかもしれない。
自分で声を上げることが、怖かったから。私が誰よりも、何よりも、憶病だったから。
私が、弱いから。
反抗期で、お母さんやお父さんに冷たい態度をとる癖に、いざとなったら、自分で意見を発せられない。
強がって、強がって、本当に伝えたいことは、何一つ言葉に出来ない。
そんな、弱くて憶病な私がいたから、お姉ちゃんは――
だから私は、許せない――
自分のことが。




