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桑の実  作者: やきぶたたまこめし
23/28

「死」


       ✾

 

 「どんなに憎くても、人を殺してはならない」

 

 なんてことを、誰かが言っていた。

 「そんなの所詮(しょせん)。ただの綺麗ごとだろ」と思った。理性では分かっていたとしても、怒りや憎しみという真っ黒な感情に、人は(あらが)えないんじゃないか、って。

 でも、今になってやっと気付く。

 奪ってはいけない命がある――ということに。

 どんなことがあったとしても、凶器で人を傷つけてはならない、ということに。

 ナイフが刺されば―血がでて、痛みも(ともな)う。命に関わることだって、ある。

 こんなに簡単なことを、今この瞬間(しゅんかん)も忘れてしまう。

 傷ついた痛みを、苦しさを、辛さを―忘れてしまう。

 「自分には関係ないんだ」と、「自分はただの傍観者(ぼうかんしゃ)で、所詮(しょせん)自分が動いたって、何の解決にもならなかったんだ」って。過ちに気付かないふりをして、何もかも忘れ去ってしまおうとする―

 

 

 きっと――

 一番悪いのは、私だ。

 私が、お母さんにもっと早く意見をしていたら。

 私が、自分の力でお母さんを止めていたら。

 お姉ちゃんは―死ななくて良かったかもしれない。

 自分で声を上げることが、怖かったから。私が誰よりも、何よりも、憶病(おくびょう)だったから。

 私が、弱いから。

 反抗期で、お母さんやお父さんに冷たい態度をとる癖に、いざとなったら、自分で意見を発せられない。

 強がって、強がって、本当に伝えたいことは、何一つ言葉に出来ない。

 そんな、弱くて憶病な私がいたから、お姉ちゃんは――

 

 だから私は、許せない――

 自分のことが。

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