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桑の実  作者: やきぶたたまこめし
22/28

怒り


       ✾

 

「パシャンッ!」

 母の手から、ナイフが落ちた。

 その音が部屋中に響き渡り、私の耳まで突き刺さるように届く。

 母が、ナイフを落としたと同時に、力が抜けたように俯き、言った。


「私が…………翠を殺した――」


 死んだ魚のような目で、淡々と語りだした。

 母が私にしていたことをお姉ちゃんに否定され、頭に血が上ってしまった、と。

 (おど)かすだけのつもりが、(あやま)って殺してしまった、と。

 まるで、今まで(あば)れていた魚が、急に息が出来なくなって静かになったみたいに、母は(うつ)ろな目をしていた。

「ごめんなさい………本当に、取り返しのつかないことをしてしまった……」

 私は、母の(なま)(ぬる)い涙を見て、同情でも(さそ)っているのか?と、苛立(いらだ)ちが(おさ)えられなかった。

「……はあ?」

 私の苛立ちのこもった声を聞いた母が、涙で濡らした目でゆっくりと私のほうを振り向く。

「はあ?なに?取り返しのつかないこと、って!なに一丁前に涙なんて流しちゃってんの!?同情でも誘ってんの?あんたが!あんたなんかが!涙を流していいと思ってるの?お姉ちゃんは、きっと苦しくて仕方なかった、でもそれでも、平気な顔して、笑ってた。お姉ちゃんが流せなかった涙を、あんたが流していいと思ってるの!?」

 驚いたように目を見開かせる母を、私は力一杯睨(にら)み見た。

 頬が、夏の路上みたいに熱くなって、頭に一気に血が上る。

「…あんたがっ!あんたなんかが!!生きてたから!この世にいるから!…あんたがいなきゃっ!お姉ちゃんは……死ななかった…っ!」

 どうしようもないほどの怒りと憎しみに、何もかも壊してやりたい、という衝動(しょうどう)にかられた。

「………ごめんなさい…」

「あんたが死ねば良かったのに…。あんたがお姉ちゃんの代わりに死ねば良かったのに。なんであんたが生きて、お姉ちゃんは死ななきゃならないの!?まだ…、生きられたかもしれないのにっ!なんでお姉ちゃんの命を無理やり奪い取るの?なんで私からお姉ちゃんを奪うの?ねえ、お母さん!…なんで、お姉ちゃんの命を奪ったの!?」

 


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