第1章 そのエリアに住まうもの
そのエリアに近づくことなかれ。
君の大切なものまで奪われてしまう。
そのエリアに近づくことなかれ。
君の心も歪んでしまう。
そのエリアに近づくことなかれ。
君は自分を保つことができるか?
そのエリアは、狂人共の住まうところ。
愛の歪んだなれの果て――。
その街は異質を含んでいた。
住人はみんな常に笑顔。愛想もよく、すれ違えば穏やかな会話が流れている。私も越してきて数カ月。近所の方とは仲良くやれている方だと思う。先日も隣接しているアトリエのティーパーティーに呼ばれたほどだ。そのときに出たチョコレートスコーンが絶品で・・・と、話がそれた。
隣人も住人も、どこかおかしいのだ。
にっこりと細めた目の奥。隠した何かがちらついて見えて。
「どう思う?」
窓枠をなぞりながら聞けば、鈴のような音が響く。
リーン、リーン。
「ははっ、だよねぇ。」
私の声に反応した彼は、部屋の隅においたケージの中からその音を発した。
「うんうん、受け答えも上手にできてるし、これはお披露目も近いなあ。」
ケージにずんずんと近づくと、そのままガラッと開けて中にいた彼を撫でる。彼は少し警戒したあと、嬉しそうに身を寄せた。私はその温度に安堵し、そしてひと息ついた。
「お前がちゃあんと、売り物になったらさ。」
「死のうと思うんだ。」